表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/12

第六話 遷移

第二章 新賜(あらたま)

 理生(りお)は、冬来(ふゆき)と戦っていたことも忘れ、呆然と立ちつくした。

(───そんな)

 理生が投げつけた割符(わりふ)は、目論見(もくろみ)どおり、雨星(うせい)の足元で割れた。

 が、それと同時に駆け寄った紅雪(こうせつ)が、巻き込まれてしまったのである。

 理生は、二人の消えたその場所を見つめた。だが、誰もいない。当然だ。自分が割符を投げつけたのだから。すぐ近くにいる人間は、巻き込まれる。基本中の基本ではないか。

 唐突に、獣のようなうなり声が聞こえたかと思うと、横ざまの衝撃が理生を襲った。

 たまらず吹き飛び、床に倒れ込んだ彼の上に、冬来がのしかかってくる。

 彼は理生の胸ぐらをつかむと、叫んだ。

「どこだ!」

 怒号(どごう)だった。彼は、力任せに理生を揺さぶった。

「あれはどこにつながる割符だ!言え!」

「……」

 理生は抵抗することも忘れ、冬来を見返した。

(こいつは本当に、冬来か?)

 以前にも感じた疑問を、反芻(はんすう)する。

 理生がよく知る彼は、感情という感情が抜け落ちたような、どことなくうつろな男だった。若手の指導にあたり、致命的な失態を目の当たりにしても、声を荒げて怒ることすらしない。かといって、笑うこともない。彼が焦るところなど想像もつかず、ましてや……。

「言え!理生!」

 理生の胸ぐらをつかみ、今にも殺しかねない勢いで怒りをあらわにしているこの男は、明らかにみっともなく狼狽(ろうばい)していた。雨星が消えたことで、我を忘れ、獣のように獰猛(どうもう)になっていた。

「誰が───」

 理生が口を開いたところで、「捕らえろ!」という声が殿舎(でんしゃ)の中に響き渡った。

 それもそのはず、王宮の内部で、刀を抜き、大立ち回りをしてみせたのだ。そりゃそうなるよな、と理生は思った。新賜(あらたま)へとつながる割符は、先ほど投げつけてしまった。国に戻る手段は、もう何もない。冬来の持っていた割符も、とっくにどこかで処分してしまっているだろう。

(ここで詰みか)

 紅雪。

 なぜか、彼女のことを思った。彼女は勇敢で、聡明な少女だ。だからこそ、きっと殺されてしまうだろう。なぜならあの女王は、そういった人間をこそ、もっとも嫌う女だからだ。

「クソ」

 珍しく、冬来が口汚く毒づいた。

 武装した兵たちが、騒がしく殿舎の中に駆け込んでくる。このまま二人とも捕らえられ、首をはねられて終わりか、と理生は思った。

 だが、冬来はそうは思っていなかったようだ。

 彼は、理生にのしかかった姿勢のまま、山箭刀(さんやとう)を振りかぶった。手の中で刃をくるりと返し、柄頭(つかがしら)を下に持ち替えたかと思うと、それを、固い床に向かって、叩きつけたのである。

「何を」

 その瞬間、景色が一変した。

 背中に感じられていた冷たい床の感触が消失し、代わりに、強烈な落下の感覚が理生を襲った。荘厳な殿舎の格天井(ごうてんじょう)や、彩色画が、ざらりと溶けて消えていく。周囲を満たす闇は、極彩色に瞬いていた。何度使っても、この感覚には慣れない───それは、割符で、どこかにつながる時の感覚だった。

 ふいに風を感じ、比較的まともな高さから地面に向かって落下した。

 だが理生は、冬来にのしかかられた姿勢で移動したため、受け身が取れず、したたかに頭を打ち付けたのだった。

「ってえ」

 後頭部を押さえ、うめく。

「クソが」

 二度目の口汚い罵声(ばせい)を発したのは、冬来だった。

 ───こんなことに使う羽目になるなんて。

 彼のそのつぶやきを、理生は聞き逃さなかった。

 おそらく、この場所へ()()()()ために使った割符のことを言っているのだろう。柄頭などという場所に仕込んでいたのだから、奥の手として、雨星を逃がすために持っていたものに違いない。ざまあみろ、と理生は思った。

「言え!」

 山箭刀の切っ先が、喉元に突きつけられる。

「ふざけるな。誰が教えるか!」

 理生は言い放ち、冬来の顔面に向かってつばを吐きかけた。

 わざとらしく、ケタケタと笑ってみせる。

「残念だったな。行き先を知ったところで、もう遅い。雨星はすぐに殺されるだろう。ざまあみろ。これが報いだ」

「貴様」

 理生は大きく足を振り上げると、のしかかる冬来の首を挟み込んだ。

 そのまま締め上げようとするが、そううまくはいかず、冬来は身を捻ってするりとそれを抜けた。同時にのしかかりから解放された理生は、すばやく起き上がり、短刀を向けた。

「なぜ(けい)を殺した!」

 踏み出した足が、やけに沈み込む。足元は、どうやら砂地のようだ。あたりは暗いが、背後からうっすらと明かりが差し、正面から波の音がすることから、海岸だろうと推測できた。

「なぜ仲間を殺した。言え!」

 冬来は答えず、無言で突っ込んでくる。

 速い。かろうじて刃を避けるが、重い回し蹴りが襲いかかった。

「……っ!」

 側頭部に直撃しそうだったそれを、手甲(てっこう)で防御する。骨のきしむ音がした。

 理生は逆の手で、完全に冬来の死角になる位置から、鉄針(てっしん)を投げつけた。普通の人間であれば、確実に当たる距離であり、隙であったはずだ。だが、冬来は普通の人間ではなかった。

(な───)

 見えているはずもない鉄針を、いとも簡単に弾いたのである。

 理生は驚愕(きょうがく)し、そのわずかばかりの隙が、この戦いの決定打となった。

 足を払われ、あっけなく砂浜へと倒れる理生。うつぶせに押さえつけられ、両の手を締め上げられた。

「あれは、新賜につながる割符だな?」

 答えなければ一本ずつ折る、とでも言うように、冬来の手が理生の指にかかる。

 クソが、と理生は毒づいた。

「てめえは死ぬべきだ。おれたちはみんな人殺しだが、あんたは仲間を殺した。それだけは許されないことだ。死んで償え!」

 そう威勢よく言うものの、しかし身動きが取れない理生は、同じ口で、殺すなら殺せよ、と挑発した。強がりではなく、半分ほどは本当にそう思っていたからだった。すべてはうまくいった。おれの役目は、これで終わり。あとは、女王が約束を果たしてくれさえすれば。

(ただ)

 紅雪。彼女だけが。

「そうか」

 冬来は低くうなずき、なら死ね、と続けた。

「おい、ふざけんな!」

 理生は、腕一本くらいの犠牲を覚悟して、反動をつけて身を捻った。転がるようにして、振り下ろされた刃をかわす。理生のうなじに突き立つはずだった山箭刀は、砂浜に深く突き刺さった。理生はぞっとした。

「てめえ、生真面目かよ。そう言われて、本当に殺すやつがいるか!」

「……」

 冬来は無言で立ち上がり、山箭刀を抜いた。

 理生は舌打ちした。あの殿舎の中で、山箭刀を手放してしまったのは痛手だった。こちらには短刀と、残り少ない鉄針しかない。大きく呼吸を繰り返しながら、理生は冬来を見据えた。自分より一回りは年上の山箭。もっとも腕の立つ男。一見して、変わった様子はないが……。

(雑だ。何もかも)

 攻撃も、防御も。一手一手に焦りが見える。

 動揺で切っ先が鈍り、体術にもキレがない。早く決着をつけようと焦るあまり、とどめを刺すことに失敗している。それも、何度も。いつもの冬来であれば、考えられないことだった。

 理生は短刀を逆手にして構え、地を蹴った。一気に肉薄(にくはく)する。

「戻ったって無駄だ!」

 (あお)りながら、息をつく間もなく斬りかかる。

 右から左へ。上から下へ。かわされ、いなされ、反撃される。だが、理生は攻撃の手を止めなかった。どうせ雨星は殺される、無駄足だ、などと大げさに嘲笑(あざわら)いながら、短刀を振る。冬来が苛立っていくのが、手に取るようにわかった。

「今から戻ってどうする?そんなに雨星の死体と対面したいのか?あの女王の性格は、あんたのほうがよく知ってるだろ。まあ、あんたが死にに行くって言うんなら大歓迎だし、喜んで見送ってやるけどな。だが、助けようと思ってんなら無駄だぜ。もう、どうしたって間に合わない。きっと今頃───」

「黙れ!」

 山箭刀の大振り。

 冬来の体が、がくりと(かし)いだ。砂浜に足を取られたのだ。

「……っ!」

 今だ。

 無防備にさらけ出された首筋に、短刀を突き立てようとする。だが。

「───」

 がつりと足をつかまれた。冬来の手だった。二人はもろともに体勢を崩し、もつれ合うようにして砂浜に倒れ込む。お互いに刃を持った腕をつかみ合い、上へ下へと入れ替わりながら、ごろごろと転げ回った。

「なぜだ!」

 理生は叫んだ。

 刃を挟んで。

 冬来の、見たこともないような必死の形相に、顔をぐっと寄せて。

「なぜそこまでする!あんな子供に、一体どんな価値がある!あんたがそこまでする理由は何だ!仲間を殺してまで!女王を裏切ってまで!すべてを捨ててまで、なぜ、あんたは雨星を助けようとするんだ!」

「愛しているからだ!」

 冬来は叫んだ。

 勢いに任せて、そう、叫んでしまってから───はっとしたように口をつぐむ。

 理生はぽかんとした。

 開いた口が塞がらなかった。

(今、何……)

 冬来は今、何と言った?

 愛しているから?

(そんなんでいいのか?)

 ぽつりと思ったのは、そういうことだった。

 そんな理由でいいのか。そんなことでできてしまうのか。すべてをかなぐり捨てることを───愛しているから、という、たったそれだけのことで。

 冬来が大きく舌打ちし、上にいた理生の腹を蹴り上げた。

 完全な不意打ちだったために、受け身も取れず、理生は砂浜に転がる。うずくまり、激しく咳き込む彼に、だが、冬来はとどめを刺そうとはしなかった。深い───とても深いため息をつくと、刀を鞘に収め、理生に背を向けて歩き出す。

「ちょ……」

 思わず、待て、と呼びかけてしまってから、そんな必要はなかったと気づく。

 あまりのことに拍子抜けしてしまって、その背中に鉄針を投げるとか、斬りかかるとか、そういった考えがすっぽ抜けてしまったのだ。

「まさか、本当に戻るつもりか」

 問いかけるが、冬来は立ち止まらない。

 理生は全身の痛みにうめきながら、起き上がり、周囲を見回した。

(ここは……)

 見上げれば、満天の星。

 肌を撫でる風は湿っていて、潮の香りがした。寄せては返す、波の音。橙色に浮かび上がる、街明かり。港町だ。どこか見覚えのある風景だった。

 しばらくして、ようやく思い出した。

 ここは、理生と母親が、新賜に向かう船に乗った港町だ。

(てことは)

 ここはブリシェだ。理生の故郷。

「船はもう出ないぞ」

 理生がそう声をかけると、冬来はようやく足を止めた。

「中王国が監視してる。それに、たとえ船が出たところで、もう間に合わない。かといって、陸路で向かうにしても───」

「だったら、おまえはそれでいいのか」

 静かな声音だったが、無人の海岸にはよく響いた。

 冬来の黒い目が、じっと理生を見つめている。責めるように。問いかけるように。そこにはもう、殺意はなかった。

「あの宿の娘は、おまえを必死になって止めようとしていた。死んで欲しくない、と叫んでいただろう。何の力もない、武器も扱えないような、ただの町娘が、あんな場所までおまえを追いかけ、おまえに生きろと言っていた。なのに、おまえは───諦めるのか」

(諦める?)

 それでいい。それでいいんだ。仕方のないことなんだ。

 そう思わなければ、生きてこられなかった。

 ブリシェに帰りたい、と泣きながら死んでいった母親の顔が、今でもまぶたの裏にこびりついている。

(すべて仕方のないこと)

 ───本当に?

 寄せては返す波の音が、夜の海が、胸をざわつかせる。

 あれだけ殺してやりたかった相手を前にしているのに、手も足も出ない。

 彼女の、大きな瞳ばかりを思い出す。

 火明かりにきらきらと輝いて、なんて美しいのだろうと、理生は思った。

(紅雪)

 もし───もしも、まだ、生きているのなら。

(助けられる可能性が、少しでもあるのなら)

 馬鹿げている。そんな、わずかな可能性に賭けて、これまでのすべてを諦めるのか。女王を敵に回せば、約束はなかったことになる。これまでの努力がすべて無駄になる。愚かだとしか思えない。たった一人を助けるために、何もかもを、かなぐり捨てるなんて

(おれは……)

 しばしの間、黙って答えを待っていた冬来だったが、やがて一つため息をつくと、きびすを返して歩き出した。

 理生は、その背中を見つめた。

 そして、待て、と声をかけたのだった。

「───戻る方法なら、ある」

 冬来はぴたりと立ち止まり、信じがたいといった表情で振り返った。

「……何だと?」

「割符がある。新賜につながる割符だ」

「どういうことだ」

 冬来はずかずかと歩み寄り、力なくうなだれる、理生の胸ぐらをつかんだ。

「それはどこにある。おまえが持っているのか」

「ここにはない。だが、ブリシェ国内にある」

「わかるように言え!」

 理生は覚悟を決め、顔を上げた。

 そして言った。

「新賜はブリシェと───正確には、ブリシェの解放軍と、密約をかわしている。それを取りつけたのは、おれだ。この国での拠点に、割符を隠してある」

 その言葉に、冬来の眉間の皺が深くなる。彼は苦々しげに吐き捨てた。

「……女王は、戦争を起こすつもりか」

「そうだ」

 理生はうなずいた。

「他の山箭には知らされていないが、おれは女王の命令で、何度かブリシェに渡っていた。今もなお、中王国の支配に抵抗し続けている者たち───解放軍と渡りをつけるためにだ。機を見て、新賜側は割符を用い、中王国の王宮内部から崩壊を引き起こす。その混乱に乗じて、南からブリシェが攻めるという密約だった。……今回、雨星の暗殺に成功したあかつきには、戦端(せんたん)を開く手はずになっていた」

 冬来は額に手を当て、愚かな真似を、とうめいた。

「母親と同じ道を歩むとは」

 ───(うらら)(あや)の母親は、名を、真子(まこ)という。

 割符は、王室典範(おうしつてんぱん)により、戦争に用いることは固く禁じられている。

しかし彼女はかつて、割符を用いて中王国に攻め込もうと画策した。そして、それに反対する勢力によって玉座を追われた。割符を管理する符官(ふかん)を後ろ盾に、特に強力に動いたのは、実の娘である麗だった。

 真子を追いやり、当時まだ十五だった麗が、新しい女王となったのだ。

「急ぐ理由が増えた。───今すぐ拠点に案内しろ」

 冬来が言う。

 理生はうなずいた。

(王が変わる)

 そのことには、きっと意味がある。

 理生はこの目で、中王国の王が落ちるところを見た。王が変わる。王が変われば、国が変わる。新しい時代がやって来る。その先に、支配や占領とは違う未来があるかもしれない。そう信じたい。

(けど、そのためには)

 綾を打倒する必要がある。

 紅雪、と、理生はその名をささやいた。

(絶対に、きみを助ける)


               **


 それは、今までに経験したことのない感覚だった。

 唐突に訪れた、絶望的な浮遊感に、紅雪は思わず悲鳴を上げた。だがその悲鳴すらも、無限の闇に吸い込まれていくのだった。あらゆる景色の、色という色が混ざり合い、極彩色の複雑な文様をなしていく。

(落ちる)

 胃の腑が浮き上がるような感覚に、ぎゅっと目をつぶった紅雪だったが、実際に高所から落下することはなかった。

 背中には、冷たい地面の感触が。

 恐る恐る目を開けると、星空が見えた。吐いた息は白くけぶった。

(ここはどこ……?)

 ゆっくり身を起こして見てみれば、地面はうっすらと白い雪に覆われていた。

 どうにも明かりの(とぼ)しい場所だった。段々と慣れてきた目で見回せば、紅雪の背丈ほどに巡らされた回廊(かいろう)が、四方を取り囲んでいた。ここは庭のようだ。低木がきれいに整えられて茂っており、甘い香を放っていた。早咲きの沈丁花(じんちょうげ)らしい。

「なんで……?」

 つい先ほどまで、中王国の王宮の、一際大きな殿舎の中にいたはずだ。

(あたしは、雨星に手を伸ばして)

 そしてつかんだ。二人の手が重なったと、そう思った瞬間───。

 パキン。

 そう、音だ。

 音が聞こえた気がする。何か、固いものが割れるような。

「誰だ!」

 ふいに声が響き、紅雪はびくりと肩を震わせた。

 振り返ると、男と思しき人影が、真っ暗な中をずかずかとこちらに歩いてくるのが見えた。男は、腰に手を回していた。その動作には、見覚えがあった。刀に手をかけているのだ。紅雪はぞっとした。

「ここは奥ノ院(おくのいん)の庭だぞ。軽々しく足を踏み入れていい場所では……」

 男は紅雪に近づくと、刀の切っ先を喉元に向けた。

 自然と上げられた彼女の顔を見て、なぜか男は息を呑み、すぐさまぎゅっと眉根を寄せたのだった。

「あなたは……」

 驚きを以てつぶやかれたその声に、かぶせるようにして、

「───なにごと?」

 女の声がした。

 幼い少女のような物言いだったが、声音は大人の女のものだ。

 回廊の上に、女が立っていた。

 灯りを手にした黒装束の男たちを従え、こちらを見下ろしている。

「侵入者のようです」

 紅雪の脇に立つ男が答えた。

「ここに、か?」

 女が口にしたのはたったそれだけだったが、その中には、そんなわけがなかろう、そうだとしたらおまえたちは何をしていたのだ、と叱責(しっせき)する響きがあった。肌を刺すような強い難詰(なんきつ)の声だ。

「は。申し訳も……」

「そなたは誰だ?」

 どうでもいいとばかりに謝罪を遮り、女が問う。

 紅雪に、である。そうだと気づくまでに、少し時間がかかった。

「おまえは誰か、と聞いておる」

 すると、ひどく苛立たしげに、女は問いを重ねた。

 美しい女だった。

 濃い紫の地に、金色の大輪の花が咲き乱れる、目を見張るような艶やかな長衣を身にまとっていたが、それに負けじと面差(おもざ)しも華やかだ。くっきりとした目鼻立ちをしている。その、こぼれ落ちんばかりに大きな目は、無邪気に笑んでいれば可愛らしくもあろうに、今は地を這う虫でも眺めるかのような様子で、紅雪を見下ろしているのだった。

(このひとは……)

 何と答えるのが正解か。

 紅雪は考えを巡らせた。

 最後に聞いた、パキンという音。あれはおそらく、割符が割れる音だ。理生が雨星に何かを投げつけたのは見えたが、それが割符だったのだろう。紅雪は、割れる瞬間に雨星のすぐそばにいたため、()()へつながる力に巻き込まれた。

 紅雪は顔を上げ、まっすぐに女を見据えた。

 何も言わない。それが、彼女の出した答えだった。

「……」

 女はその目つきに、まなじりを軽く引きつらせた。そして、隣の男に対して、ごくごく軽い口調で命令する。

「殺せ」

「───」

 紅雪は絶句した。

「陛下、お待ちを!」

 だが意外にも、声を上げたのは命令を受けた男のほうだった。

 陛下と呼ばれた女───新賜の女王、綾は、神経質そうに眉をひそめる。

「口答えするの。維人(いひと)

「決してそのようなつもりは」

「なら、なに」

 低く、うなるように言う。

「この者は、雨星の知人です。見覚えがあります」

 その言葉に、綾は軽く目を見張る。

「何?」

「割符のご確認を。理生かもしれません」

 綾は無言で、山箭(さんや)に目配せした。それを受け、一人がすぐさま回廊の向こうへと駆けていく。やがて戻ってきたその者から耳打ちを受けると、綾は、「たしかに」と口を開いた。

「理生の割符が使われたようだ。だが、なぜここにその娘しかおらぬ?」

「それは……」

 維人、と呼ばれた山箭は、ちらりと紅雪を見た。

「どのような状況であったかは、見当つきかねますが、雨星も近くにつながった可能性が高いでしょう。僭越(せんえつ)ながら、付近を捜索すべきと申し上げます。この者は、ただ巻き込まれただけかと」

 綾は片眉を跳ね上げた。ならば殺しても構わぬではないか、とばかりに。

 維人は、やや気圧されたようにあごを引いたが、続けた。

「……もし、雨星が冬来とともにいた場合、厄介です。先ほどは知人、と申し上げましたが、この者は雨星の親しい友人です。人質としての価値は、十分にあるでしょう。殺さず、捕らえておくのが賢明かと存じます」

 ふうん、と綾はつぶやき、酷薄(こくはく)に笑んだ。

「ならば、そうせよ」

「はっ」

「雨星を捕らえよ。そののち、かの者の目の前でそこな娘の首をはねてやろうぞ。わらわを見るその目つきが気に食わぬゆえ!」

 彼女はそう言い捨てると、高笑いをしながら回廊の向こうへと消えていった。

 綾がいなくなったというだけで、ぴんと張り詰めていた冷たい空気が、わずかに緩んだように感じられる。見た目はたしかに美しい大人の女だったが、ころころと変化する表情や、口調が、気まぐれな幼い少女を思わせた。そして、その少女の無垢さそのままに、簡単に人を殺そうとするのだ。足の裏で、虫を踏み潰すみたいに。

(雨星……)

 どうか逃げ延びて、と願うしかない。

「なぜ」

 刀を鞘に収め、維人はため息交じりに言った。

「なぜあなたが、ここに?」

 そこでようやく、紅雪は維人のことを思い出した。

 肩ほどで切り揃えられた、黒髪。まだ幼さの残るその顔には、覚えがある。理生とともに宿に泊まっていた、山箭の一人だ。だから彼は紅雪のことを知っていたのだ。

「一体、どのような経緯でこんなことに?あなたはたしかに雨星の友人だが、それだけで、何の関係もないはずでしょう。こんな場所に来るような目に遭うとは、とても……」

「お願い。助けて」

 紅雪が小声で言うと、維人は、面食らったように身を引いた。

「あたしのことを覚えてくれているのなら、話が早いわ。あなたの言うとおり、あたしはただ巻き込まれただけの、何の関係もない庶民。人質の価値なんて、きっと、これっぽっちもないはず。女王にそう説明して。ううん、それができないなら、ここから逃がしてくれるだけでいい」

 維人は眉を寄せ、困ったように目をそらした。

「あなたのことは、誰にも言わない。約束するわ。あたしはただ、雨星と一緒に扇市(せんし)に帰りたいだけなの。平和に暮らしたいだけなのよ。雨星は女王を傷つけたりしない。そんなこと、絶対にしないわ。そういう人間なの。だから見逃して。お願い」

 だが維人は軽く息をつき、言い放った。

「それはできません」

 冷たい風が吹き、彼の衣の袖をふわりと舞い上げた。

 よく見れば維人には、右腕がなかった。彼は紅雪のことを、同情を込めた目で見はしたが、首を縦に振ることはなかった。

「残念ながら、あなたには人質の価値がある。あなたは雨星の親しい友人だ。雨星があなたの言うような、清廉(せいれん)な人間だったとして、そんな人物が、巻き込まれただけの大切な友人を、助けもせずに放っておくでしょうか?」

「それは……」

「雨星は必ず、ここに来る。冬来とともに。ぼくは正直、あなたのことも、雨星のこともどうだっていい。ただ───あの男を、この手で殺してやりたい。だから、あなたを逃がすわけにはいかないんです」

 行きましょう、と言って、維人は紅雪を立たせた。

 背中を押され、ふらつきながら歩き出す。

(どうすればいいの……)

 雨星が今どこにいるにしろ、そのまま逃げ延びて欲しい。その気持ちは本当だ。だが雨星が逃げても、捕まっても、どちらにしろ紅雪は殺される。───助けに来て。そう思うのも、本当なのだった。


               **


 紅雪はうずくまり、明かり取りの小窓を見上げていた。

 その対面に、ぼんやりと光る灯火に照らされ、浮かび上がるのは、床から天井までを塞ぐ頑丈な格子。どんなに揺らしても壊れないことは、すでにわかっていた。

(どうすればいいの……)

 もうすっかり夜更けだが、眠れそうにない。

 かすかにお腹が鳴る。こんな時でさえ、きちんと腹は減るのだから、人間とは不思議なものである。

 ふと、物音がした。小さな足音が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

 紅雪は思わず身構えたが、やって来たのが山箭ではなく、一人の老女であることに気づき、ほっと力を抜いた。老女は、(ぜん)を手にしていた。どうやら、食事を持ってきてくれたらしい。

 老女はしずしずと牢の前まで歩いてくると、膳を格子の下から差し出してきた。

 小さな椀に盛られた白飯と、漬物だ。紅雪はそれを受け取り、老女に頭を下げた。

「ご親切に、ありがとうございます」

 礼を言われるとは思っていなかったのか、老女は、目を丸くした。

 そして、なぜか一瞬泣きそうな顔をしたかと思うと、音もなく格子の前まで身を寄せてくる。髪は真っ白だが、意外にも、肌に皺は見られなかった。

「……あなたは、なぜここに?」

 老女が問うてくる。そこには、確認のような響きがあった。

「なぜって……」

 紅雪は困惑した。なぜかと聞かれれば、女王がそう、山箭に命じたからだと答える他にない。だが、彼女の聞きたいことはそういうことではないのでは、と思い、紅雪は言った。

「……あたしが、人質になるからだと言われました。雨星の、友達だから」

「ああ」

 ああやはり、と声を上げ、老女が唐突にくずおれたものだから、紅雪はぎょっとした。発作でも起こしたのではないかと思ったのだ。

「大丈夫ですか」

「ええ、大丈夫。大丈夫です。あなたは、お優しい方ですね。このような状況で、見ず知らずの女の身を案じるなど……」

「そんなことは」

「どうにかして、あなたをここから出して差し上げましょう」

 その言葉に、紅雪は目をしばたたかせた。

(どう───どういうこと?)

「このようなはした()の言うことなど、にわかには信じられませんでしょうが、どうか、わたくしの話を少しばかり聞いてはくださいませんか」

 紅雪が戸惑いながらもうなずくと、老女は話し出した。

「今は違う名を名乗っておりますが、わたくしのかつての名は、夕顔(ゆうがお)。───わたくしは、先代の女王、麗に仕える侍女にございました」

「え」

 大声を上げそうになり、紅雪は慌てて口元を押さえた。

「……こんなところにいて、大丈夫なんですか?」

 もちろん、と夕顔は答える。

「大丈夫ではございません」

 そして微笑んだ。静かだが、強い意志のこもった笑みだった。

「見つかれば殺されるでしょう。ゆえに、炊事場(すいじば)のはした女にまで身を落とし、隠れ潜んでいたのでございます」

「なぜそこまでして……」

 夕顔はその笑みのまま、どうしてでしょうねえ、とつぶやいた。

「わたくしにも、わからないのでございますよ。ただ、麗さまは、わたくしにとって娘も同然でございましたゆえ。そのお子である、あ……雨星さまは、わたくしにとっては孫も同然なのでございます。ならばわたくしにできることは、そのご友人であるあなたを、ここから逃がして差し上げることくらいでしょう?」

 夕顔は微笑んでいたが、紅雪には、彼女が泣いているようにしか見えなかった。

 娘のように大事に思っていたひとを殺されて、もういないそのひとのために、それでもしてあげられることを、ずっと探し続けながら生きているのだ。

 その彼女の思いが胸をついたのか、紅雪の目から、涙がこぼれ落ちた。

 そんな自分に驚き、彼女は慌てて袖で涙を拭う。

 恐ろしゅうございましたね、と、夕顔が気遣うように言った。

「よくぞお一人で、気をたしかに持ってらっしゃいました。あなたはお優しく、とても強い方です」

「そうじゃ……」

 ない、と言おうとして、そうかもしれない、と紅雪は思った。

 たしかに恐ろしかった。心細かった。悲しかった。雨星に会いたかった。ずっと、こうして泣きたかったのだ。なぜなら。

(あのひとに、声が届かなかったから)

 きっと、自分の声なら届くはずと、どこかで思っていた。

 きっと聞いてくれるはずだと。かわしたまなざしで、言葉にならない、通じ合うものがたしかにあったと思えたから。理生も同じように感じてくれているはずだと。

(でも───聞いてくれなかった。届かなかった。あたしはなんて馬鹿だったんだろう。彼も同じように思ってくれているはずだと、思い込んで、突っ走って……家族と離れて、旅に出て、本当はすごく怖かったけど、ずっと強がってた。そうでもしなきゃ、前に進めなかったから)

 彼に人を殺して欲しくなかった。死んで欲しくなかった。

 そんなものより───自分を選んで欲しかった。

(あたしは、理生のことが好きだったんだわ)

 顔を覆って泣き出してしまった紅雪の肩を、夕顔はそっとさすってくれた。

 紅雪が落ち着くのを辛抱強く待ち、彼女は、「行きましょう」と言う。

「行くって、でも」

 牢には鍵がかかっている。それに、外には見張りもいるはずだ。

 しかし夕顔は、袖に隠していた小さな鍵でいとも簡単に牢を開け、紅雪を外へと出してくれたのだった。

「ありがとう……」

「安心するのは早うございます」

 夕顔は言い、小脇に抱えていた包みを紅雪に渡した。

「こちらにお召し替えを。お急ぎください。もうすぐ、見張りが戻ってくる頃です」

 紅雪はうなずき、彼女と同じはした女の装いに、急ぎ着替えた。

 ひとまず出ましょう、と言って、夕顔は牢のある建物の外へと、紅雪を連れ出した。

「ここは北殿(ほくでん)と呼ばれる場所です。城の外へ出るには、本来であれば道なりに下っていき、大門(だいもん)を通らねばなりません。ですが……」

 紅雪は大きく息を吸った。

 凍えるほどの寒さだったが、空が、風が心地よく、清々しいほどだった。

「こちらへ」

 手燭(てしょく)に火を灯し、夕顔が先導する。

 正面へ進むと、少し開けた場所につながっているようだった。

 夕顔はそちらへは進まず、ぐるりと建物の裏側へと回っていく。

 石造りの塀や門で整然と区切られた、中王国の王宮とは違い、新賜の城はすべてが鬱蒼(うっそう)とした森に覆われていた。山城(やまじろ)なのだ。もっとも大きな黒い屋根瓦の御殿(ごてん)が、頂上にあたる位置に見えた。おそらく、紅雪が割符によってつながったのは、あのあたりだったのだろう。ちょうど今は、中腹あたりだ。

 雑草だらけの、あまり使われている様子のない石段を、足元を照らしながらゆっくりと下っていった。おそらく崖か、山の斜面に面しているようで、小さな灯り一つでは、底は見えなかった。

 ふもとには光が見える。

 渓谷に沿って、大きな町が広がっていた。

「まだ信じられない。雨星がこの国の、王子さまだなんて」

 紅雪がぽつりとつぶやくと、夕顔は彼女を振り返り、尋ねた。

「雨星さまは、中王国で、不自由な思いはされていませんでしたか」

「不自由、ですか?」

 ううん、と紅雪は首をひねる。

「どうかな、毎日、楽しそうにしてたと思います。あたしたち、一緒に針子(はりこ)の仕事をしてたんですけど、まあとにかく、雨星は刺繍が上手で……それだけじゃなくて、とにかく針を持つのが好きだったみたいなんですけど……」

「さようでございますか」

 夕顔は嬉しそうに笑った。

「たしかに、あの方は刺繍がお上手でいらっしゃいましたねえ。わたくしも、麗さまも、あの方の腕前には、とにかく驚いたことを覚えております」

(……ん?)

 紅雪は首を傾げた。

(雨星が刺繍を始めたのは、扇市に来てからって聞いていたけど、違ったのかしら)

 やがて暗い石段が終わり、小道があらわれた。ほぼ獣道だ。

 その先を指差し、夕顔が言う。

「ここを抜ければ、物見台の横に出られます。城外へと続く大門は、ふもとにございますゆえ、そこへとつながる御ノ内(おんのうち)を通らねばなりません」

「おんのうち?」

「今はぐるりと避けて下ってまいりましたが、本来であれば中腹にある門と、ふもとの大門とをつなぐ道にございます。ここから下は、脇道がございませんで……しかしながら、幸いにも奥ノ院などとは違い、ふもとあたりを守るのは山箭ではありませぬゆえ、何とかなりましょう」

 枝葉を手で避け、(やぶ)をかき分け、獣道を抜ける。

 その先には、山の斜面に沿ってうねる、きちんと整備された道があった。そしてそれを見下ろすように、巨大な岩が。よく見ればそれは、石積みの砦のような建物だった。おそらくこれが、夕顔の言っていた物見台なのだろう。

 いくつもの篝火(かがりび)が焚かれていたが、見えるところに人影はない。

「急ぎましょう」

 夕顔が短く言い、再び先導を始めた───その時だった。

「かように急がずともよい」

 声がした。

 夜気によく響き渡る、澄んだ声音だった。

 二人は同時に立ち止まり、はっと上を見上げた。物見台の上を。

「もっとも、黄泉路(よみじ)を急ぐのであらば、止めはせぬがな」

 冷たい風に翻る、豪華絢爛(ごうかけんらん)な衣。

 金糸で描かれた獅子の文様が、篝火の光で、燃えるように輝いていた。

(そんな。どうして)

 紅雪は愕然とし、夕顔はうめいた。

 物見台の上、山箭たちを引き連れ立っていたのは、新賜の女王、綾そのひとであった。

 結い上げた髪に挿された、いくつもの翡翠のかんざしが、彼女が小首を傾げるのにつれ、互いにぶつかって涼しい音色を奏でる。楽しげに見開かれた大きな目は炯々(けいけい)と光り、濡れたような赤い唇は満面に笑んでいた。

「なにゆえここに、という顔をしておるな。───とうとうもうろくしたか、夕顔よ。おまえの主の先見(さきみ)の力は、まことちっぽけなものであったが、わらわは違う。だがそこに、死んだはずのおまえの姿が見えた時には、さすがに驚いたぞ」

 綾は声を立てて笑い、二人を冷たく見下ろした。

「───よもや、生き恥をさらしておったとは」

「黙れ……!黙れ黙れ!」

 夕顔は激しいうなり声を上げた。

「麗さまは、おまえなどとは違う。ご自分の命よりも、まずお子の命を守ろうとなされたのだ!わたくしはその命令に従ったまで!恥ずべきことなど何もない!」

「なるほど?」

 綾は、持っていた扇を口元に当てた。

「あの日、雨星と父親を逃がしたのは、おまえであったか」

「おまえだけは許せぬ……!」

 夕顔はぶるぶると震えながら、ふところに隠し持っていた短刀を抜いた。

 そのまま物見台を駆け上がろうとするが、いつの間にか近くにいた山箭に取り押さえられ、あえなく地に伏せる。そうなってもなお、彼女は叫んだ。

「今のこの国を見よ!重税にあえぎ、苦しむ民の姿を!国を形作るのは、王ではない!山だらけの土地を耕し、水を引き、作物を育て生きる、あらゆる民だ!麗さまが、身命を賭してよりよく変えていったこの国を、おまえは無茶苦茶にした!身を以てその罪を贖うがいい!」

「よくもまあ、負け犬のごとく吠えるババアよ」

 黙らせて、と綾は山箭に命じた。

 猿ぐつわを噛まされ、地面に強く押さえつけられる夕顔。

 その彼女へと、思わず駆け寄ろうとした紅雪に刀を向けたのは、維人だった。彼は苦々しげに、小さく首を振る。

「おい、小娘」

 綾の目が、紅雪を射抜いた。

「おまえは、健気だの。おのれが危ないという時に、友や、見ず知らずの女を気遣えるのだから。───わらわは、おまえのような健気な者が、大嫌いだ。おのれの美しい心から生まれたものであれば、正しいと信じて疑わぬ、おまえたちのことが大嫌いなのだ。麗のような、健気で、美しい心を持った者が、母上を玉座から引きずり下ろし、死へと追いやった」

 ゆえに、と続けて、綾は扇の陰でウフフと笑った。

「おまえのような者を殺すと、本当に胸がすっとするのよ!」

 紅雪は言葉もなく、祈るように目を閉じた。

 まぶたの裏側に浮かぶのは、家族の顔だ。父母と、弟妹たち、祖父母。そして雨星。また会って、刺繍をしながら、他愛のない話をしたかった。一緒に祭りを回りたかった。

(理生)

 もしもう一度会えたなら、今度はきっと伝えるのに。

 あなたが好きだと。

「連れて行け」

 綾は山箭に命じた。

「奥ノ院の、庭へ。───そやつらの首をはねる」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ