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【書籍化】落ちこぼれだった兄が実は最強〜史上最強の勇者は転生し、学園で無自覚に無双する〜  作者: 茨木野
第11章

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141.王女VSダンタリオン③



 大悪魔ダンタリオンは、同じく悪魔化したヒストリアと相対している。


 王女の体は蜘蛛の糸でがんじがらめになっており、身動き1つできない。


「ヒストリア、あなたをこのままユリウス様のもとへ届けます。あの人なら解呪の方法を知っているやも知れませんゆえ」


「グガァアアアアアアアアア!」


 黒い鎧に包まれたヒストリアは、野生動物のように暴れ回る。


「無駄です。その蜘蛛の糸は、わたくしが許可しない限り絶対に拘束が解けません」


『あら、そうなの。じゃま、こういうのはどうかしら……?』


 フェレス校長の声が響くと、ヒストリアの背後から生える触手の1本が、するすると動く。


「う、うう……」

「! え、エリーゼさん!?」


 触手の先にとらわれていたのは、王立の女子メンバー・エルフのエリーゼだった。


『戦いが始まったときに、こういう展開を予見して人質を取っておいたのよ』


「なんて卑怯な……!」


『卑怯卑劣が悪魔の専売特許よ。あんたが清らかすぎるんだわ。……さて、わたしの言いたいことはわかるわね?』


 ヒストリアが触手を動かし、エリーゼの体を力強く締め付ける。


「ああっ……!」

「エリーゼさん!」


 みしみし、とエリーゼの細い体がきしむ。


『おとなしくヒストリアを解放しなさい。でないとあなたの大事な大事なお友達が、大変なことになっちゃうわよぉ~?』


 ギリッ、とダンタリオンは歯がみする。


「…………」


 躊躇は一瞬、すぐに蜘蛛の糸による拘束を解く。


「これで良いでしょう? わたくしのお友達を解放してくださいまし……」


 ヒストリアは触手の拘束を解いて、エリーゼは地面に崩れ落ちる。


「ゲホッ……! ゴホッ……! だ、ダンタリオンさん……」


『正直な子でほーんと助かるわぁ~……。バカがつくほど、ね』


 ぎちぎち、と触手の先端が毒ナイフへと変貌する。


「! まさか……!」

『ヒストリア……そのエルフを殺せ』


 毒ナイフの触手が鞭のようにしなると、エリーゼの体へと襲いかかる。


 ザシュッ……!


「だ、ダンタリオンさぁああああああああん!」


 ……エリーゼをかばうように、ダンタリオンが割って入ったのだ。


 毒ナイフをもろに、背中に受ける。


「ごふっ……!」


 ダンタリオンは吐血すると、その場に崩れ落ちる。


「そ、そんな……どうしてっ!?」

「……エリーゼ、さんは……大事な、大事な、おともだち、だから」


 毒が回っているのか、みるみるダンタリオンの顔色が悪くなっていく。


 土気色になると、ポロポロと細胞が崩れだした。


「待ってて! 今治癒魔法を!」

『あははっ! 無駄よ無駄無駄。相手は悪魔よ? 聖なる光の治癒魔法が効くわけないでしょ?』


 その通りだった、必死になってエリーゼが治癒を施しても、再生することはない。


『さ、ヒストリアちゃん。ふたりまとめて、食い殺しなさい♡』


「グルァアアアアアアアアアアア!」


 ヒストリアは顎の骨を外し、巨大な竜の顎のごとく食いつこうとする。


 ダンタリオンは最後の力を振り絞って、ヒストリアを正面から抱き留める。


 ガブッ……! とダンタリオンの上半身に、王女が食いつく。


「ぐぁ……!」


 苦痛で顔を歪めながらも、彼女は王女の体を、優しく包み込んだ。


「だめ、ですよ……ヒストリア。人殺しなんて、しちゃ……だめです」


 よしよし、とダンタリオンは王女の頭をなでる。


 彼女の友達を卑劣な手段で危険な目に遭わせ、殺そうとまでしたというのに。


 その瞳に敵意も怒りもなく、そこにあったのは……優しい微笑みだった。


「人を殺してしまったら、ほんとうに、悪魔になってしまいます。だめですよ……あなたは、人間、なんだから……」


 ヒストリアの動きが一瞬止まる。


『何をしてるの、そいつだけでも食い殺しなさい』


「ぐ、が、ガァアアアアアアアア!」


 ヒストリアはダンタリオンの体をかみ砕く。


 頭部と、胸から上だけになる。

 それ以外は王女に食われてしまった。


「ダンタリオンさん……!」

『残さず食べなさい。そこのエルフ女共々』


 ヒストリアはダンタリオンを全て食べようとする。


 エリーゼは彼女をかばうように抱いて、背中を向ける。


「…………」


 その姿を見て、王女は動きを止めた。


「…………」


 ダンッ……! と地を蹴ってその場から離脱する。


「たすかった……の?」


 あとには瀕死のダンタリオンと、無傷のエリーゼだけが残された。


「良かった……エリーゼさんが、無事で……」


 胸の中でダンタリオンが微笑む。

 毒に体を犯されて、すでにボロボロと細胞が崩れだしていた。


「ダンタリオンさん! まってて……いまユリウスくんを呼ぶから!」


 しかし、彼女は首を振って言う。


「いいのです。このまま……逝かせて、ください」


 その表情には諦念が浮かんでいた。

 エリーゼは目に涙をためて言う。


「そんな! どうして!?」

「悪魔の力を完全に食われたわたくしは、どうあがいても……消滅する運命にあるのです」


 美しかったダンタリオンの肌が、しわしわになっていく。


 彼女の体から生命力が抜け落ちていくのを、エリーゼは感じた。


 必死になって治癒を施すが、肉体の消滅は止まらない。


「それに……こんな醜い姿……あの人に、見せたくないのです。最後まで、ユリウス様のなかで……わたくしは、綺麗なままで死にたいのです……」


「諦めちゃ駄目だよ! ユリウスくんと約束したんでしょ!? また一緒にデートするんだって!」


 しわがれたダンタリオンの肩を掴んでゆするが、それでも彼女は【駄目】だと悟った。


 なぜならば、悪魔の少女の顔が、満ち足りたものだったから。


「ユリウス様に……会ったら、伝えてくださいまし。わたくしは……あなた様を、お慕い申しておりました……と」


「自分で言わなきゃだめだよ! ユリウスくんのことが好きなんでしょ!? もっともっとたくさんしたいことがあるんでしょ!?」


 ダンタリオンはゆっくりと目を閉じる。

 すでに肉体からは完全に生命力が抜け落ちている。


「良い……のです。わたくしは……もう十分。ただ……そう、ですね。心残りが、あるとしたら……」


 小さく、彼女がつぶやいた。


「もしも……わたくしが……生まれ変わったら……次は、お嫁さんに、してほしいなって……」


 と、そのときだった。


「わかった」


 ふわり、とダンタリオンを誰かが優しく抱き上げる。


「ユリウスくん!」「ユリウス……さま……」


 彼は静かに、胸の中で小さくなるダンタリオンを見下ろす。


「ああ……見ないで、ください……まし。こんな……醜い……すがた……」


「バカヤロウ。前も言ったろ。見た目なんて関係ない。おまえはどんな姿でも綺麗だよ」


 ぎゅっ、とユリウスはダンタリオンを抱きしめる。


「ああ……わたくし、うれしくて……死んじゃいそう……です」


「それは困る。もっとずっとそばにいてもらいたいからな」


 ユリウスはダンタリオンを地面に寝かせる。


「なにを……なさるの?」


「おまえとの約束を、今ここで果たす」


 そう言って、ユリウスは大魔法を発動させる。


 愛しい彼女を、死の運命から救うために。

 

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― 新着の感想 ―
まさかのダンダリオン正ヒロイン
[気になる点] 141.王女VSヒストリア③ 題名が違うような……?『141.王女VSダンタリオン③』ではありませんか…? [一言] いつも楽しみに読んでます。 これから寒くなってきますので、体調に…
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