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キスから始まる物理系女神様の世界更生伝説  作者: 朝月ゆき
【第二章】
34/41

〜冷雨(9)〜三つ巴の戦い

色々謎を解明させてくれないキャラ達ですが、これはもう、直談判しなくては!

 「……よく、この屋敷を見つける事ができましたね」


 「ふっ、【最高神】を侮るなってことだ。例え、何重もの結界が張ってあろうと、一発で終わりだ」


 「堕天神の間違いでは?」


 【神の間】に現れた闇神が樹峯の言葉に口角を上げた次の瞬間、闇神の背後に巨大な環状の陣が出現した。黒銀の閃光がそこから放たれ、樹峯を貫きーー否、彼の前に一瞬にして移動した盾神がそれを防いだ。

 穏やかとも言える樹峯の整った口許が弧を描く。


 「堕天神…どうやら、そう称された事に対する怒りではありませんね。あなたは一体、何をそんなに感情的になっているのですか?」


 樹峯の余裕な態度に対して、闇神の灰色の目は隠し切れない激情がうずまいている。

 彼の様子の異変に樹峯は笑みを深め、【最高神の玉座】に座らされた美耶を見遣った。


 「もしかして、彼女を私に奪われたからですか?」


 含み笑いに、闇神と彼と共に現れた時神が動いた。


 「あーあ。こりゃ、そうとう怒ってるな」


 「どうやらその様ですね。頼牙、後はたのみましたよ。私はやる事がありますから」


 「りょーかい……っと!!」


 苦笑しながら、どこからか取り出した大剣を構え、雷神は雷を全身に纏った。そして、防御専門の盾神と共闘するぞ、と言わんばかりに一度目を合わせ、地を蹴った。


 「幻影、あなたは炎神を捕らえてくださいね。ああ、重傷は負わせても構いませよ。殺さなければいいのですから」


 「ええ、承知していますよ」


 炎神と対峙している幻影が微笑を浮かべる。

 彼と数十メートル程離れたところで無邪気な笑みを刻んでいる炎神は、むかつくなぁ、とその表情に似合わない事を呟いた。


 「どいつもこいつも僕の邪魔ばっかりして……お姉ちゃんを抱き締めたいのに……ああ、殺すよ?」


 刹那、炎神が敏速な動きで一瞬にして幻影との間合いを詰めた。炎神の掌に邪悪な炎が現れたと理解できた時には、その手に細長い炎の剣が生まれていた。

 炎神の目が細められた。


 「僕の前に現れる奴はーー全員、灰と化せ」


 瞬間、炎神と幻影を中心とした爆発が起こった。雷神の登場により巨大な穴が開けられた天井が今度は粉々になり、【神の間】を形成する四方の壁に大きな亀裂が入った。

 爆発が起こった所からは黒煙が立ち上り、そこに黒と赤の炎を纏った男のシルエットが浮かび上がった。


 「うわぁ、派手にやってしまったなぁ。まあ、どうでもいいけど。お姉ちゃんの方に爆風がいかないように咄嗟に結界張ったけど……」


 炎神は類斗のものとは違う金の目を美耶がいたはず(・・・・)の方を見た。

 しかし。


 「あれ?……いない?」


 そう呟いた時だった。


 「……っ!!」


 目に止まらぬ早さで抜刀した幻影が、炎神の華奢な体を凄まじい勢いで壁に叩き付けた。不意を突かれた炎神の口内から血が微かに滲み出る。

 炎が衝撃によって消えたせいか、炎神の周りには黒煙が漂っている。

 炎神が口許の血を親指で荒っぽく拭い、苛立ちと残忍さを孕んだ目が鋭く細められた。


 「……決定。殺す」


 炎神は頭上に炎の塊を創り出した。それは、この場にいる全員を包む影を生み出すほど大きい。そして、次第にそれは一本の研ぎ澄まされた武器となった。


 巨大な、炎の槍。


 その危険な武器に著しい反応をしたのは盾神だった。


 「雷神…さすがの俺もあれは防げないですよ。何しろ、相手は【最高神】の一人。あれを消すことが出来るのは同じ【最高神】の闇神くらい。森神様も【最高神】だけど、どこかに行かれたから例外ですね」


 自身を囲む五つの球体を大きな盾に変化させ、雷神を守護していた盾神は隣の雷神を見上げながら、そう宣言する。

 雷神は炎神の武器を目を細めて見る闇神と時神を一瞥し、盾神に呟いた。


 「戦いに特化しているとはいえ、俺は【高位】の神にしか過ぎない。あれを食らったら、役立たずに終わっちまうな。……けど、俺には今生の最大の目的があるから、ここで死ねないな」


 「雷神……どうしても、例の目的(・・・・)を遂げなくてはいけないのですか?」


 一度、どこか悲しげな目をした盾神に、大剣を構え直した雷神が苦笑した。くしゃり、と盾神の頭を角ばった大きな手が撫でる。


 「ああ、これだけは誰にも譲れねぇ。……俺の命を犠牲にしてでも、果たさなくちゃいけねぇんだ」


 あの方のために。


 優しく穏やかな声でそう呟きを落とすと、彼は大声を発した。


 「おい!闇神、今だけは敵味方は無しだ!炎神を潰すぞ!!」


 本当は、闇神に力を求めるのは、雷神の主である樹峯が闇神と敵対している以上、もってのほかだ。それに、戦闘に関しては特にプライドが高い雷神である。敵に力を借りることは、土下座するより屈辱だった。


 でも、譲れない信念と目的の為に。


 「いいかっ、俺が道を開く!だからその間にーーっ!?」


 宙に佇む闇神にそう呼び掛けた雷神だったが、闇神の灰色の目が彼を捉えた瞬間、雷神は知らず、退いてしまっていた。

 表情の変化が激しくない盾神も、微かに冷や汗を流していた。


 「……俺がお前と共闘?笑わせるな」


 滲み出る、闇神の殺気。尋常でない威圧感が彼の目にあり、同時に、その目には明確な激憤と憎悪の念があった。


 「俺から美耶を奪った弱神の下僕に合わせるなど、俺を侮辱するにも程があるだろう?そんなに殺されたいのか?」


 間違いない。

 最強の神として、恐れられていたこの神は、確実に森神を殺そうとしている。否、簡単に殺さず、死にたいと思わせるほどの苦痛を与え続けたがっている。なぜなら、彼の目は狂気を宿している。


 「……また、奴は目の前であいつを攫って行った。目隠ししているつもりらしいが、俺が気づかないとでも?侮るな。……よほど、俺に殺されたいらしい」


 「っ!?」


 盾神が目を見開き、先刻まで美耶がいた【最高神の玉座】を仰ぎ見た。ーーそこには、密かに盾神が目くらましの結界を張っていた。


 戦乱に紛れて、樹峯が美耶をその場から連れ去れるように。


 「見破られていた…」


 想像以上の闇神の力に盾神は愕然とするしかなかった。


 「時神、今からこの場の支配者はお前だ……俺は、あいつを追う」


 「いいよ、任せて」


 時神が了承すると、闇神の姿は一瞬にして掻き消えた。

 時神が、盾神と雷神の前に舞い降りる。そして、その端正でどこかあどけない顔にほくそ笑みを浮かべた。


 「残念だったね。君達は【闇神】を侮りすぎた。それに、彼の唯一の逆鱗たる存在になった命神を奪われている今、彼を止められるのは誰もいないよ」


 そう言い、時神は常備している杖の先端を床に叩き付けた。


 それは、荒々しい音を放った。


 「……そうそう、僕も相当怒ってるんだよね」




***




 「時神までも怒り狂って、誰があれを止めるんだよ」


 冷酷無慈悲な闇神と言われている神、そして、冷静沈着である時神までもをあそこまで感情を高昇らせるそもそもの原因となった命神は凄いな、と【神の間】の二階から密かに、三つ巴の戦いを見ていた剣神は、愉悦を浮かべた。


 「……にしても、【闇神】は初めて見たな。あれは敵にしたらいけない神だ」


 闇神は太古から存在していたらしいが、剣神は彼を知らなかった。何故ならば、かつて、剣神はこの花謳に居なかったから。それならば、花謳にいた全ての神を知らないという事になるが、それは違う。


 「封印されていた理由が分かるな…これは」


 とある神が五百年程前に封印されたという話を耳にしたことがあった。剣神がこの世に誕生した時にはすでに、何の神か分からない者が封印されているという話が存在していた。


 つまり、【闇神】の存在を剣神は知らなかった。


 「闇神は封印される前にもあまり知られていなかったらしいが」


 かつて、彼の存在があった事を知るのはほんの一部。何故か、【闇神】の存在は秘せられていたのだ。


 彼を知るのは、五百年の戦いの最終決戦時に居合わせていた者だけ。


 「まあ、俺と同じ時に神になった盾神も闇神の事は知らないはずだが、口振りからして知っているようだな」


 おそらく、盾神が主としている森神に闇神の事を話されたのだろう。


 「……主なんて必要ないものなのにな。行動を制限されて、自由を得れない」


 従神に成り下がるなど、愚かにも程がある。


 剣神は嘲笑を浮かべ、盾神を見下ろした。



 馬鹿な元親友だ。




***




 「ーー樹峯っ、どこに連れて行こうとしてるのっ!?」


 樹峯に右手だけで抱き上げられている美耶は焦燥に襲われていた。

 爆発が起きたと思ったら、次には樹峯に別の所に連れ去られていた。爆発を起こした弟やそれに巻き込まれたかもしれない闇神や時神が心配なのに、何故、自分はこんな所に。


 「大人しくしていて下さい」


 「はあっ!?」


 一方的に連れ去られて、行き先さえ教えてくれないとは、どういう事なのだ。

 そう訴えるが、失礼な事にスルー。

 その態度にさらなる苛立ちと不安が増した美耶だったが、樹峯に強制誘導されて早歩きしている所は、見た事がある所だと気づく。


 (ここ、剣神から逃げろって言われた時に走った所だ!)


 そう悟った瞬間、脳裏に、ある物が浮かび上がった。


 (ーー確か、この先には)


 「……着きました」


 樹峯の声が耳朶を打つと同時に、美耶は息を呑んだ。


 そこにあったのは、金と銀に彩られた大きな扉だった。



最新の活動報告を見てください>_<

(今後の更新についてです)

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