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キスから始まる物理系女神様の世界更生伝説  作者: 朝月ゆき
【第二章】
26/41

〜冷雨(1)〜謎の屋敷と秘せられた扉

遅れてすみません。

2章スタートです!


私の活動報告である夜桜の咲く夜日記(26)に、【キスから始まる物理系女神様の世界更生伝説】(旧題:雨降らせ、平成少女)の小話を掲載しております。

よければ、お尋ね下さい!!


次の更新は今週の木曜日になりそうです。

【腹黒乙女と12の時代勇者様】の最新話は明日更新です。





「ねえ、本当にこっちであってるの?」


「……静かにしてろ。奴らに気づかれるぞ」


剣神と共に、見知らぬ屋敷から脱出しようと出口を探している途中、美耶はあまりにも出口らしい所を見つけられない不安に襲われた。

もしかしてこの神、じつは方向音痴なのではないのか。

そんな疑惑が、顔に出てしまっていたらしい。

まだ幼さのある整った顔が、冷たさをまとって美耶を振り返った。


「言っておくが、俺は道に迷っている訳ではない。間違ってでも俺が方向音痴だと思うなよ。お前はおとなしく俺に従っていればいい。下手に口出しするなよ」


なんて、プライドの高い神なのだ。

そう思わずにはいられなかった。

こんなに綺麗で可愛い顔をしているのに、中は生意気で、美耶より歳下に見えるというのにも関わらず口はひどく達者だ。


「ーーじゃあ、なんで出口探すのにこんなに時間がかかってるの?」


見渡す限り和をイメージさせる屋敷。

日本の和室を色濃く思い起こさせる障子のようなものがあちらこちらに見受けられ、赤一色で彩られた壁には金や白の装飾が施されている。

和を連想させると言ったが、鮮やかな壁を見るたびに、どこか中華風だとも思える。


(……この屋敷、なんかアンバランスなんだよね)


先ほどまでいた部屋は、西洋風の華美な内装をしていたが、いざ部屋を出てみると、そんな部屋とは逆を行く和や中華が広がっていた。

失礼だと分かっていても、ついこの屋敷のデザインを考えた人のセンスを疑ってしまう。


「……この屋敷は、神たちが住む所だ。それも、《十裏神》に背いた神達の。奴らは《十裏神》に見つからないよう、隠形の神にこの屋敷全体に結界を張らせている。それが、どういう意味かわかるか?」


「は…?」


屋敷の中を見渡していると、剣神が美耶の問いかけに曖昧な返事をし、今度は微かな苛立ちを含んだ低い声音で問い返してきた。


「《十裏神》が欲しがっている……いや、取り返したがっているものがここにいる。それを奪われないよう、この屋敷の奴らは、結界を張り巡らせた。この屋敷内から、その欲しがられているものが逃げ出さないようにするためにもな」


だから、入り口や出口が簡単に見つからないよう、細工されている。


淡々とそう告げるなり、剣神は彼の話に首を傾げていた美耶の腕を掴んだ。


「お前は、これからどうするつもりだ?」


「え?」


唐突な問いかけに、戸惑ってしまう。

だが、剣神の目はいつの間にか鋭さを増していて、心なしか殺気が滲み出ていた。

美耶の腕を掴む手と逆の手には、一瞬で鞘から抜き取られていた長剣があった。


「どうって、もちろん、樹峯や闇神たちを探すつもりだけど……」


「そうか」


端的にそう呟くと、剣神は機敏な動きで後ろを振り返った。

途端、激しい剣戟音が耳を劈いた。


「あはは。やっぱりすごいね、剣神。気配しっかり消したはずなんだけど、すぐにバレちゃったよ」


美耶は知らず、目を見開いていた。

視界に飛び込んできたのは、炎を纏った剣を片手に満面の笑みで剣神と剣を噛み合わせている類斗だった。


いつの間に美耶たちに近づいたというのか。


「でたな、糞神。俺を欺くなんて千年早いんだよ」


「糞神だなんて失敬だなぁ。僕は偉大な炎神だよ」


「お前に偉大も糞もない」


「はは、冷たいなぁ」


互いの目は笑っていなかった。

壁や床を駆け、凄まじい勢いで剣を打ち合う二神。

どちらも、目で追うことが叶わない早さで剣を振るい、美耶をその場に縫い付け、一歩も動かさせない恐怖と激しさを放っていた。


「ーーおいっ、命神!あんたはさっさとあっちに行け!!こいつは俺が食い止める」


「えっ!?」


「そんなことさせないって。僕は元々お姉ちゃんに用があるの。お前なんかぶっちゃけどうでもいいんだよね。だからさぁ」


さっさと死んでくれる?


無邪気に笑う類斗の黄金色に変わってしまった目には、狂気があった。

美耶は身震いした。


ああ、本当に、あの天使な弟はどこに行ってしまったのだろう。

天真爛漫でかわいくて優しいーーそんな自慢の弟はどこに。

何故、こんな展開になっているのか全く分からない。


「なにをほうけている。早く行け!」


「ーーっ」


茫然としていた美耶だったが、類斗と激しく剣を打ち合う剣神に怒鳴られ、その声に押される形で走り出していた。


「あっ、お姉ちゃん待ってよ!」


剣を操る二人から離れだした美耶に、類斗の焦り声が聞こえた。

この世界で再会し、中身も外見も急な変貌ぶりを遂げた類斗だったが、これまで培ってきた弟に対する溺愛とまで言える愛情が美耶にはある。


そんな弟に、待ってと請われたのだ。

立ち止まれずにはいられなかった。

思わず、弟の方を振り返ってしまった。


だが。


「早く行けって言ってるだろう!」


鬼神もかくや、こちらを鋭い目で見遣った剣神が美耶に再度怒鳴った。

苛立ちを孕んだその声に、美耶は逆らえなかった。

躊躇いつつも、美耶は着ているネグジェリをたくし上げ、駆けた。


(早く行けって、どこに行けばいいのよ!?)


ここは見知らぬ所。何も知っているわけがない。

だが、後ろを振り向けば、剣神と類斗が激しい剣戟を繰り出している。

あんな状況に美耶が立ち入ってはいけない。

勢いで誤って斬られるに違いない。


それに。


(こんなに広い所を思いっきり走れるなんて!)


ここまで大きな屋敷は目にしたことない。と言うより、日本にこの様な所があるわけがない。

陸上魂が燃え立つのが分かってしまった。

美耶は短距離専門だ。

百メートル走が何本できる距離であるだろうか。

こんな広い所を思いっきり走ったら、疲れるだろうが、楽しいに違いない。


つい、そんなことを考えてしまう。

背後は殺伐としていて、とても悠然としていられる訳がないと言うのに。


(ここ最近、戦いばっか見てきたからかな)


樹峯、闇神、時神、幻影ーーそして、類斗と剣神。

現役女子高生にはあまりにも酷すぎる事ばかりを、この世界は美耶に提供してくれた。


(みんな、どこにいるんだろう)


全力で疾走しながら、この世界の今までで出会って、離れ離れになってしまった者達を思い浮かべる。


(ああもう、本当にわけわかんないから!)


これまでに果たして、美耶を悩ませるだけの謎を改名させる事ができたであろうか。

せっかく、時神の神殿が破壊される前、時神が美耶にこの世界について話し始めようとしてくれたのに、樹峯と幻影の襲撃のせいで何も情報を得る事ができなかった。

それに加えて、この世界では炎神と自称する弟類斗の出現。

混乱ここに極まり、だ。


美耶はとにかく走った。

どこに向かっているのかもわからないまま。体力が枯渇するまで。


やがて、視界に大きな扉が現れた。

金と銀の細工がされた、しかし不思議と華美だとは思わない、落ち着いた扉。


美耶が進んできた廊下は曲がり角がかなりあった。

無意識に方向転換をして辿り着いたのがここだった。

ここがゴール出口であるかはわからない。

だが、こんな大きな扉だ。何かがあるに違いない。

出口であってほしい。


祈りを込めて大きなドアノブに手をかけようとした時だった。


「悪い人ですね、こんな所まで来てしまって」


耳元にどこか甘さを含ませた囁きを吹き込まれた。

それと同時に、美耶の体が温かな熱に包まれた。


「樹峯……?」


よく耳に馴染んだ声。

間違いはなかった。


「ええ、そうですよ。美耶様」


驚きを宿した顔で後ろを向くと、穏やかな微笑を湛えたその人がいた。


「駄目ですよ、こんな所にいらっしゃっては。大人しく、あの部屋にいて下されば良かったのに」


そんな活発な所も愛すべきところですね。


と、静かに笑い、彼女の頬を愛おしげになぞる樹峯だったが、柔らかに形取られたその目は確かに笑っていなかった。


「ここは、どこ?」


この扉の奥の事が聞きたいわけではない。

美耶の気持ちを悟ったらしい樹峯は、すぐさま答えてくれた。


「この屋敷は私を始めとした神達の集う所ですよ。ああ、ですが神と言っても《十裏神》を敵と見なした者達だけですが」


「神の集う…なんでそんな所に私が?」


そう尋ねながら、腰元にまわった樹峯の腕を外そうとするが、決して離されない。

顔を赤らめ、必死に焦りを取り払おうとする彼女を面白そうに見つめるのだから、本当に質が悪い。


「あの後、私があなたをここにお連れしたのです。あなたは気を失われていたから、簡単に奪い返せましたよ」


あの後とは、闇神と対峙した時の後に違いないだろう。


「闇神と時神は?」


そう尋ねた時、美耶の首元に樹峯がなぞるかのように指を這わせた。


「ーー!?っ、う…」


彼の指によってもたらされるくすぐったさに、思わず、喘ぎ声を発してしまった。

その声を聞いた樹峯の顔に艶やかさが滲み出る。


「ふふ、いい声ですね。しかし、本当にこの模様はあなたによく似合います」


「え…?」


そう言われ、これで見て下さい、と小さな鏡を手渡された。

それを覗き込むと。


「!!」


首の右の方に、小さな刺青のようなものがあった。

樹峯の新緑色の目と同じ色の葉っぱの模様。見たことのない形状のものだが、それは、ギザギザしていている、網状脈の葉だ。そして、その葉はに巻きつくかのように、紐のようなものまである。


「これは私の《契印》です。この葉は、この世界のどこかにひとつだけ咲いているという伝説の花の葉。その花は確か、異国でアリグラネと名付けらたのですよ」


美耶にとって、そんな花のことより、彼の《契印》という言葉が気になった。


「《契印》って、なに?」


「ふふ、私について来てください。全て、お話しますよ。さあ。」


そう言うなり、樹峯は美耶を抱き上げた。

ついてきてください、と言われたが、これなら美耶の意思はおかまいなしではないか。

強制連行だ。


「少し急ぎましょう。奴らが来ますので」


奴ら?、と問い掛ける暇もなく樹峯と美耶の姿が薄れ始めた。

転移する気だ。


ふと、横目で例の大きな扉を見た。


(なんだろう、すごく気になる……)


扉の奥から、何かを感じる。

何故か、あの扉の奥に行かないといけない気がした。


(変なの……)


怪訝に思ったものの、転移が始まったので意識はそちらに引き寄せられた。





転移する一瞬前の事。

美耶の脳裏を剣神の言葉が過ぎった。




ーー《十裏神》が欲しがっている……いや、取り返したがっているものがここにいる。


次回。

ついに、謎がいろいろ明かされます!

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