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幽霊の正体見たり異世界か  作者: 固い六
第二章
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第三十六話 いーいゆっだっな♪

幽霊要素なんてなかったんや...

「3人でお風呂に行こう」


突然パルティアがそう言った。


「はぁ?」


「そうね、身体は綺麗にしないといけないわね」


アガーテがそれに同調した。


「はぁあ!?何言ってんのお前ら!?」


流石にここは突っ込まずにはいられなかった。


「俺は絶対絶対行かないからな」


「えぇ~?汚いよ?」


「汚くてもいい!」


「それは私達が嫌だよぉ」


俺は断固として行かないと決めた。男なら誰もが羨むシチュエーションだろうと思う、生前の俺だったら同じ意見だ。だが、俺は長年(4年)の経験とカンで分かる、これは絶対トラブルの匂いがする。そんな時。


コンコン


「はーい!」


「点呼の時間です、ドアを開けてください」


ノックの音とともに先ほど会ったセリーヌ寮長の声がした。


「はいはーい、ちょっと待ってね~」


パルティアがガチャリとドアを開け、セリーヌが部屋に入ってくる。


「あら、貴方たちまだお風呂に入ってなかったんですか?」


「いやぁ、ちょっと話し込んでたら遅くなっちゃって...」


パルティアがそう答えるとセリーヌはチラリと横目で俺を見てから言った。


「積もる話もあるでしょうけど不潔な身体で寮内をうろつかれると困ります。今すぐ入ってきて下さい」


「はーい、じゃあそういうわけだから行こ?」


パルティアは俺の手を掴んでそう言った。おい、顔がにやけににやけまくってるぞ。


「え、で、でも。アタシここのせいとじゃないよ?」


俺は最後の望みをかけてセリーヌにそう言った。だがその望みはすぐさま崩されることとなる。


「いえ、別に部外者だから入ってはダメという規則はありません。以前男子寮ではこの学園を取材に来た記者の方々が入浴されて行ったので問題は無いかと思います」


「そ、そんな...」


どう足掻いても絶望、そんなキャッチフレーズが思い浮かんだ。


「じゃあ行きましょ」


「そうだよ、ここのお風呂すっごく気持ちイイんだから」


左右をアガーテとパルティアにガッチリとホールドされ、そのまま運ばれるように俺は連れ去られる、そんな時...


「ちょっと待ちなさい」


突如セリーヌが声をあげた、嫌な汗が背中を伝う俺ら3人、まさかバレたのだろうか、そんな予感がする。


「あなた...」


ゆっくりと近付いてくるセリーヌはメガネを光らせて俺の顔を覗き込む、まずい...バレ...。


「名前は?」


「へあ?」


予想外の言葉に思わず変な声が漏れた。


「ですから名前です、名前。先程ホールではお名前を聞きそびれたので」


「え?あ、あぁ名前...」


ちょっと素に戻ってしまったが相手は気付いてないようだ。しかし名前か、女装しているからアルバートは無理だから違う名前を考えなくては...。


「この子の名前はアリエルよ」


俺がいい名前が無いかと考えているとアガーテが先に言ってしまった。


「アリエル...可愛らしい名前ですね」


セリーヌはニコリと俺に微笑むと近かった顔を離した。


「それじゃあ、アリエルさん。この寮のお風呂を是非堪能していってください」


セリーヌはそう言うと部屋を後にした。


「ふぅ、バレるところだったわね」


「危なかったねぇ~」


「し、心臓に悪い...」


ふぅ...と息を吐く我ら3人。


「さて、じゃあ寮長もああ言っているわけだしお風呂行こっか」


右腕ガシッ


「そうね、変な汗かいちゃったから早く洗い流したいわ」


左腕ガシッ


「え?お、おい」


両腕を外れないように組まれた俺はまるでどっかの宇宙人のように風呂場へと連れ去られるのであった。






かぽーん


そんな音が聞こえそうなこの場所、大浴場である。


「はぁ...誰もいなくて助かった...」


「これを予想した上でお風呂に行こうって誘ったんだよ?」


「ウソこけ、偶然だろうが」


えへへ悪びれもなく笑うパルティアに俺は溜め息をつく。


「でも誰か来てもカツラつけてたらきっと大丈夫よ」


「なんかの拍子に取れたらどうすんだ...」


「そこは...頑張ってね」


非常に投げやりだった。


だが今はそんなことより風呂だ、諦めて風呂に注目するとしよう。一言でまとめるなら素晴らしいの一言に尽きる、俺の持ってきた雑誌に載っていたように広い浴場は俺の胸の奥に潜む日本人の血を滾らせてくれた。しかし気になるものがいくつかある。なぜ壁面に巨大な山の絵が描かれているんだろうか...。


「あの山は学園長が直々に描いてくださったものなのよ、いつ見ても素晴らしいわね」


アガーテはそう言う、確かに素晴らしい、だがそれ以上になぜここに“富士山"が。


「(それにあの黄色い桶...ケロンヨ...ちょっと違う)」


一面黄色く彩られ、中央に緑の文字で『ケロンヨ』と書かれた桶はやはりあれを模しているんだろうか。


「あ、その桶ね学園長が作った特殊な塗料で塗っているから水をよく弾くし丈夫なんだよ」


俺が桶を手に取り眺めているとパルティアがそう説明した。


「(こりゃあやっぱり学園長が転生者説が有力か?)」


俺は昼頃に校舎でエレベーターを見た時からいくつかの説を予想していた、その中の一説である学園長転生者説が今とても有力なものとなった。


軽く身体を流し、湯船に浸かる俺ら3人。


「いーいゆっだっな♪」


「はははん」


「何やってるんだお前たちは...」


聞き覚えのある歌に俺は思わず突っ込んだ。


「えー?学園長がお風呂に入ったらまずこれを歌えって言ってたんだよぉ」


あ、これはもう確定っすわ。


「そういえば、学園長ってどんな人?」


まずは情報収集からだ、転生者かどうかを決め付けるにはまだ早い。


「どんな人...うーん...変な人?」


「へん?」


「そう、変なの。毎年毎年受験生の中の成績上位者を数人個人で面接するんだけど、そこで変な質問をするらしいの」


「例えば?」


「私は聞いただけだからよく知らないけど...色の付いていない絵を見せてきて、この絵の生き物は何色に見える?とか聞いてくるんだって」


「へぇ...他には?」


「いつもと違う格好で面接するらしいの、いつもは髪を下ろして緑のローブを羽織っているんだけど、その日は見たこともないような変な格好をするんだって」


「ど、どんな格好かわかるか?」


「うーん、知り合いの子が言うには上半身が半袖の黄色いシャツで下半身が太ももまでくらいしかない紺色の半ズボンで、まん丸いメガネを掛けていたって」


完全にの〇太くじゃないですかヤダー。


「違う子の話では黒いマスクに際どい女性ものの黒いボンテージ服でオデコに『D』って形が書いてあったり」


完全にドロ〇ジョ様じゃないですかヤダー。


「私の知り合いだと変な配色の被り物を被って若草色のぴっちりスーツにおっきく『V』って書かれていた服だったって言ってたわ」


完全に綱〇吉じゃないですかヤダー。ていうかなぜ頑なに小原〇梨子にこだわる。


俺にはもう学園長がどういう人なのか全く想像がつかなくなってしまった。むしろ聞かなきゃよかった。


「ホントに変な人よね」


「ねー」


アガーテの言葉にパルティアが相槌を打つとガラリと風呂場の入口が開く音がした。


「あ、寮長」


パルティアがそう言った。バシャリとお湯が流れる音がして、ペタペタと近付いてくる足音の方向を向くとタオルで前だけ軽く隠しただけのセリーヌの姿があった。


「今の私はただのセリーヌよ、仕事外なんだからいつも通りにして」


「あ、今はセリちゃんモードなの?」


「えぇ、今日の仕事はもう終わったから」


「セリーヌ、こんな時間に珍しいわね」


「えぇ、今日は生徒会の会議が長引いてしまってね、お風呂に入る時間がなかなか取れなかったのよ」


セリーヌはそう言いながらゆっくりと湯船に浸かった。


「いーいゆっだっな」


「「はははん」」


「(毎回それやるのかよ!)」


委員長タイプのセリーヌが棒読みで歌を口ずさみ、それに応えるように2人が合いの手を入れる様を見て心の中でツッコミを入れた。


「貴方達も今日は随分と長湯なのね」


「あぁうん、アル...アリエルちゃんに学園長がどんな人か聞かれてね」


「変な人よねって教えてあげたのよ」


パルティア、アル君って言いかけただろ。


「確かに変なお人な時もあるけれど、あの御方は素晴らしい人よ」


今度はセリーヌが学園長について聞かせてくれるらしい。ちなみにこの状況、なんともまぁ壮観な光景だ。一糸纏わぬ美少女3人に囲まれる女装少年1人、これは薄い本が熱くなるだなんて考えているが、俺はまだ4歳児、性欲のせの字も身についていないポンコツである。俺が出来ることと言えば今の状況を鮮明に脳裏に焼き付けることぐらいだった。


「この《ティーベルン王国》に彼がもたらした恩恵は少なくないはずよ、他国に比べて歴史が深い割に学力の乏しかったこの国の学力を向上させて下さったのだから」


「確かにねー、今や近隣諸国で一二を争うほどの学力と言われているしね」


「へぇ〜そうなんだー」


俺はきっちり女児演技をこなしつつセリーヌの解説に耳を傾ける。


「がくえんちょーさんはほかにどんなことしたの?」


「そうね彼が作り上げた物は多々あるけれど、中でも特出したものは鍵ね」


「カギ?」


「えぇ、鍵穴の奥に特殊な魔法陣が組み込まれていて、特定の鍵でしか開かないようになったの。それ以前は普通の鍵でちょっと魔術が使えたら簡単に解錠出来てしまう欠陥品だったのよ」


「へぇ〜!すっごーい!」


どうやらただの変人ではないようだ。


「ほかにはー?」


「他には...そうね、《魔具》の充実化とかも凄いわね」


「まぐって?」


「魔具って言うのは魔力や魔術や魔法陣を使うことによって様々な現象を引き起こす道具の事よ、さっき言った鍵もある意味魔具に分類されるわ」


「そうなんだ!」


「校舎のエレベーターは見た?あれも学園長がお作りになった魔具よ」


あぁ、あれか。やっぱり学園長は転生者だな。もう揺るぎようのない事実だろう。俺はそう決めつけた。


それからしばらくセリーヌによる学園長の武勇伝を聞き続けた。そして何個用意されているんだか分からないほどの話の一区切りをなんとか見つけ出したアガーテがセリーヌの言葉を止めた。


「そ、そろそろ上がらない?のぼせちゃうわよ」


「そうだね!うん、早く上がろう。私茹だっちゃうよ」


ナイスだアガーテ、パルティア!俺は心の中で2人に賛辞した。


「そう...かしら、そうね、貴方達は私が入る前から居たものね」


「そ、そうだよぉ〜アリエルちゃんももう顔真っ赤っかだよ」


パルティアにそう言われ顔を触ると色こそ分からないものの非常に熱くなっていることがわかる。


「まぁ大変、それなら早く上がった方がいいわね」


「じゃ、じゃあおことばにあまえて...」


俺はそう言って湯船を出て...


すてーん


...ずっこけた。


「あ、アリエルちゃん!?大丈夫!?」


「う、うーん...だいじょうぶだよ」


ゆっくり俺が立ち上がるとやはりと言うべきか、お約束通りと言うべきか。俺のタオルがハラリと落ちた。


「あ」


「あ、あの、アリエルさん?それは...」


セリーヌが俺の裸体の...特に下腹部を指さして驚いている。


「アリエルさん...あなたは...男の子、なのですか?」


(アカン)


次回投稿は6/3です


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