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幽霊の正体見たり異世界か  作者: 固い六
第二章
39/44

第三十五話 ドキッ!ヒミツの花園女子寮へ侵入!?〜お姉さん達に囲まれてもぉ〜タイヘン!〜

今回珍しくボリューミーです。

それと最近作内で幽霊要素が出てこないことにいい加減マズイと思ってます。

今、俺の目の前に立ちはだかるは巨大な壁...否、建物である。


「それじゃあアーちゃんはアル君とここで待ってて、私は部屋から変装道具持ってくるから」


まぁなんだ、つまり女子寮である。


「マジで来ちまった...」


「いいじゃないの、男子が1人女子寮に紛れ込むなんて男としては嬉しい限りじゃない」


「それが拉致じゃなければな...はぁ...」


4歳の身じゃあ女の子にいくら囲まれたっておもちゃにされるだけだと思うとため息が漏れる。


「何よ、ため息なんてついて、ちょっと傷つくわね」


「いや、別にお前らが嫌だとかそういうんじゃないけど...」


「なら何よ」


「なんでこうなっちまったんだろうなぁ...って...」


はぁぁ、とさっきよりも大きいため息が漏れる。


ほどなくして荷物を持ったパルティアが戻ってきた。


「はいこれ!私が昔着てたやつ」


パルティアが持ってきた服は明るい色でフリフリした装飾が付いているワンピース。ご丁寧に俺の髪の色と合わせたカツラまで持ってきた。


「もうひと思いにしてくれ...」


俺の意志が折れた。


「はいはーい、じゃあじっとしててねぇ」


俺はパルティアによってポンポンと衣服を脱がされ、持ってきたワンピースを着せられる。

もうそこに俺の意思や恥じらいの感情は無かった。


「うん!やっぱり私の目に狂いは無かった!」


「こ、これは...イイわね...」


「うへぇ、足にまとわりつく...スースーするだなんて迷信だった...」


鏡が無いので自分がどうなっているか分からないが、2人の反応を見る限り可笑しくはなさそうだ。いや、女装してる時点でおかしい。

体感年齢21歳の大人がこんな辱めを...ん?まさか(21)が示す暗示とはこのことだったのかー!!

(閑話2を参照)


「これなら絶対バレないよ!さぁ行こう!私たちの部屋へ!」


パルティアが俺の手を引っぱって行く。痛い痛い...。







寮の入口をくぐると広いエントランスホールがあった。そんなとき俺らの前に一人の影が現れた。


「ワイスローダさん、コロンさん、今何時だと思っているのですか?」


「げっ、寮長...」


その影の正体はこの女子寮の寮長であった。深い紺色の髪はキチンと整えられており、フレームの細いメガネがフィットしている。一言で纏めると委員長タイプの女性だった。


「げっとは何ですか、げっとは」


「すいません...」


「大体貴方達はいつもいつも...」


「あー!すいません!実はこの子が迷子になっちゃってて」


そう言ってパルティアは俺を前に押し出す。


「...この子は?」


「この子は私の親戚の子です。学園内を案内している最中に迷子になってしまいまして、探していたらこのような時間になってしまいました」


アガーテは淡々とした口調で嘘を言った。


「そんな事があったんですか。...ですが規則は規則です、門限を破った罰は受けてもらいます」


寮長は嘘だろうと本当だろうと関係無いようにそう突きつけた。どうやら見た目通りのキツイ性格のようだ、別に悪い意味ではない。集団の中ではこういった人間が一人は必要なのだから。


だが今の俺としてはここで足止めを食らうと非常にまずい、女装だとバレかねないのだ、寮長には悪いけどここは通らせてもらう。


「ねえねえ、アガーテお姉ちゃん、アタシ中に入れないの?」


俺はいつもより3割増しで声を高くして女児の演技をした。


「!?」


どうやら突然俺が演技したことに驚きアガーテは声も出ないようだ、まぁいいや、このまま寮長にも話しかけよう。


「メガネのお姉さん、なんでアタシ入っちゃダメなの?迷子になっちゃう悪い子だから?」


瞳を潤ませ今にも泣きそうな顔で上目遣い気味に寮長の顔を見上げる。


「うっ...いや、別にそういうわけじゃ...」


おぉ、効いてる効いてる。上手くいっているようだ女児演技、なんかホントに悲しくなってきた...


「うぅ...ぐすっ」


俺は1つ嗚咽を漏らし、より演技だと悟られないようにする。


「う、わ、わかりました!今回のことはその子に免じて見なかったことにしてあげます!」


寮長は俺から顔を背けそう言った。任務完了ミッションコンプリート


「ホントに!?メガネのお姉さんありがとお!!」


最後に俺は寮長の足にギュッと抱きつき愛らしさを表現する。その時チラッと見えたパルティアとアガーテの顔が羨ましがっていたのを俺は見逃さなかった。


「えぅ...わ、わかったから、早く行きなさい!」


「ありがとお!お姉さん!」


足から離れた俺はパルティアとアガーテの手を引き寮長に手を振った。あ、名前聞いてねぇや。


「そうだ!お姉さんのお名前は?」


「わ、私?私の名前は《セリーヌ・ゼーグロット》よ」


「セリーヌ...じゃあセリお姉ちゃんって呼ぶね!」


「か、勝手にしなさい!」


「セリお姉ちゃんじゃあね〜!」


「じゃ、じゃあ...ね」


寮長改めてセリーヌは顔を真っ赤にしながら手を振り返してくれた。そのまま2人の手を引っ張り、曲がり角を曲がったところで俺は素に戻った。


「はぁ、疲れた...」


素に戻ったはずだがいつもより声が低くなってしまった、いずれ治るだろう。そう考えているとパルティアから声が掛かった。


「あ、あの、アル君?」


「なんだ?」


「さっきのあれ、何?」


「何っつっても...演技?」


そうとしか言いようがないしな。


「ほえぇ...凄かったよね、アーちゃん?」


「えぇ...完全に4歳の女の子だったわ...」


「そ、そんなにか?」


演技を褒められると元演劇部としては照れちゃうな。


「これは二年後が楽しみね」


「そうだね、その為にも廃部だけは阻止しなきゃだね!」


「おい、なんの話をしているんだ?」


「あぁ、私たちの入っている部活の話、アル君って劇とかに興味ある?」


興味あるも何も前世では演劇部だったわけだしな。


「あぁ、好きだよ」


「やった!これは今のうちにツバつけとかなきゃだよアーちゃん!」


「そうね!これだけの人材は他を探してもそういないわ!」


なにやら二人だけで盛り上がっている。


「お、おい。俺を置いて話を...」


「「演劇部に入部してください!!」」


すすめるな...と言おうと思っていたら二人からまさかの部活勧誘された。


「俺はまだ入学すらしていないんだぞ?」


「わかっているわ、だから今からお誘いをしてるのよ」


お誘いしてるのよ、と言われましても...。断る理由も特に無いがひとまず今は...


「あぁ〜!とりあえずここでは何かと面倒臭くなる!ひとまず話はお前らの部屋に着いてからだ!」


霊力を感知するとこの付近だけでいくつも人の反応があるのだ。あまり騒がしくすると誰か出てくるかもしれない、そうなると俺の女装がバレる可能性も跳ね上がるため早々にここを立ち去りたかった。


「そうね、なら早く行きましょ、こっちよ」


アガーテに先導され寮内をしばらく歩き回る。


「なぁ、まだなのか?」


「もうちょっとよ」


どうやら寮にも学園長印の空間魔術が施されているようだ、広すぎる。


「着いたわ、この部屋よ」


アガーテがそう言ってドアを開けると、とても女の子趣味なお部屋が広がっていた。


「ちょっと散らかってるけどぉ...あはは」


「私たちから誘ったけど部屋を見られるのって思ったより恥ずかしいわね...」


二人の部屋はまさしく女の子と言うべきか、ピンクのカーテンやらテディベアやらたくさんのお洋服やら...前世で風邪をこじらせ学校を休んだ女子クラスメイトの家に、近いからと言う理由でプリントを届けさせられたときに感じた感覚と通ずるものがあった。


「すっげぇ女の子してる部屋だなぁ...」


「今のアル君にはピッタリだと思うよ」


「やめてくれ...もう中には入れたわけだしコレ着替えていいか?」


「ダメだよぉ、女の子の前で脱ぐなんてぇ〜」


「さっき俺を外でひん剥いたのはどこのどいつだよ」


パルティアにそう言うと吹けてない口笛をしながらそっぽを向いた。なんて古典的な...。


「そんなことよりさっきの話の続きよ、私たちの演劇部に入ってくれないかしら」


「さっきから思ってたがなんでそんなに必死なんだ?」


「それは...」


「今の演劇部が廃部の危機だからよ」


パルティアが言いづらそうにしていた事をアガーテはすんなりと言った。


「廃部の危機ってどうしてだ?」


「まず人数が足りないのよ、今の部員の数は私たちを含めて5人しか居ないの」


確かに少ない、たった5人で役者と裏方を回すのはキツイところがあるだろう。しかも前世と違って証明なんて言うものはないわけだから常に舞台を照らし続ける役割も必要だろう。圧倒的に人数が足りない。


「今まではどうしていたんだ?」


「今までは部員全員を役者に回して裏方を助っ人に任せたり、裏方と役者を同時にこなしたりしていたよ」


「けど助っ人に任せるとチームワークの関係で色々トラブルが発生するし、同時にこなすと後半に体力が残ってないのよ」


「だろうな、けど俺が入部したところでほとんど人数に変わりはないんじゃないか?」


「そこは...二年間で頑張るよ」


「不安だなぁ、それで?問題は人数だけじゃないんだろ?」


「えぇ、あとは演技力が低いことよ...」


「演劇部なのに演技力が低いのは大問題じゃないか?」


「えぇ、けどしょうがないのよ、今の部員はみんな平民の出だからお金の都合上ちゃんとした劇を見たことがないのよ」


なるほど、確かにそれはしょうがないことだ。だがそれは自身の表現力にも問題があるんじゃないか?そう考えた俺はアガーテに1つ試してみた。


「とりあえず今の二人の演技力を見せてくれないか?」


「今?ここで?」


「あぁ、演目は何でもいい」


「うーん、ちょっと恥ずかしいけどやろっか、アーちゃん」


「えぇ、演目は『ユーリの園』でいいわね?」


「うん、それで行こう」


ユーリの園というものがどういうものか分からないがとりあえず聞いてみることにする。






演目〜ユーリの園〜


役者

ユーリ姫役:パルティア・ワイスローダ

騎士シルヴァ役:アガーテ・コロン


パルティア「騎士シルヴァよ何をそんなに悩んでいるのです」


アガーテ「ユーリ姫、我が強さは国をお守りするためにあるのです、ですが私は本当にこの国を守れるほどの力があるのでしょうか...」


パルティア「では騎士シルヴァよ、貴方の強さ、国ではなくこの私のために奮って下さいませ」


アガーテ「姫、私はただの騎士に過ぎません」


パルティア「なら、私は今ここで自害します」


すっとナイフを取り出す。


アガーテ「姫!何を!?」


パルティア「私1人をも守れぬ騎士にこの国を守ることなど出来ません」


アガーテ「姫!」


パルティア「さようなら...」


ナイフを首に突き立てる。


アガーテ「姫!!」


アガーテがパルティアの手を掴み抱きしめる。


パルティア「ほら、この私を守れたではありませんか」


アガーテ「姫...」


そこで二人は口付けをして熱い抱擁を交わす。


〜終演〜






「どうだった?」


演技をし終えたパルティアがそう聞いてきた。


「こりゃあ問題だな」


文字にすると分かりづらいが実際に聞くと様々な問題点がある。俺はユーリの園の台本を片手に二人の問題点を告げる。


「まずパルティア、お前は言葉が続くに連れて声が小さくなるのをどうにかしろ」


「うぐっ」


「次にアガーテ、演技は良いがいかんせん表情が硬い。ここの『姫!何を!?』のところを無表情でやってはダメだろ」


「はい...」


「それと二人に言えることだがもっと体を動かせ、動くべきところで動くだけじゃなくて、セリフの最中にもアピールをしろ、演劇ってのは広いところでもやるんだから遠くから見ている人には何やっているか分からんだろ」


「「はい...」」


「じゃあアガーテ、俺が姫役をやるから付き合え」


「姫役なの?騎士ではなく?」


「4歳じゃあ大人の男役をするには無理があるからな、それならいっそのこと女役だ」


「わかったわ」






演目〜ユーリの園〜


役者

ユーリ姫役:アルバート・ウィルホーキンス

騎士シルヴァ役:アガーテ・コロン


アルバート「騎士シルヴァよ何をそんなに悩んでいるのです?」


右手を握った形を自分の胸元に持ってきて、左手を開き斜め後ろに持っていく。


アガーテ「ユーリ姫、我が強さは国をお守りするためにあるのです、ですが私は本当にこの国を守れるほどの力があるのでしょうか...」


アルバート「でしたら騎士シルヴァよ、貴方の強さ、国ではなくこの私のために奮って下さいませ」


若干色気を混ぜてそう言う。


アガーテ「姫、私はただの騎士に過ぎません」


その言葉を聞くと顔を俯かせ暗い声で言った。


アルバート「なら...私は今ここで自害します」


ぬるりと懐からナイフを取り出す。


アガーテ「姫!何を!?」


アルバート「私1人をも守れぬ騎士にこの国を守ることなど出来ません」


決意したような目をアガーテに向ける。


アガーテ「姫!」


アルバート「さようなら...」


たらりと涙を流し、震える手でナイフを首に突き立てる。


アガーテ「姫!!」


アガーテがパルティアの手を掴み抱きしめる。


アルバート「ほら、この私を守れたではありませんか」


鼻声混じりの震える声で、柔らかい笑みを向ける。


アガーテ「姫...」


そこで二人は口付けをして熱い抱擁を交わす。


〜終演〜






「どうだった?」


さっきのパルティアと同じことを聞く。


「感動だよぉ〜」


パルティアはボロっボロ泣いていた。


「何泣いてるんだ、さっきお前がやったのと同じだったじゃねぇか」


「全然違うよぉ〜」


もうパルティアはまともに話せる状態ではないと見限り、アガーテに話しかける。


「あ、アガーテはどうだった?」


「凄すぎて他に言葉が見つからないけど、目の前に本当にユーリ姫がいると錯覚したわ」


「そう!そうなんだよ!」


アガーテの言葉に反応したようにパルティアが同調した。


「アル君がユーリ姫になっちゃったって思ったよ」


「流石にそれは言い過ぎだろ...」


「「そんなことないよ(わ)!!」」


「お、おう...」


そんな食い気味に来なくてもいいじゃない。


「特にナイフを首に立てた時の涙、あれどうやって出したの!?」


「私は最後に微笑みかけられたときなんて思わずドキッとしたわ」


「えぇ!?何それ、アーちゃんずるい!」


「あの一瞬は私の一生の思い出になったわ」


ずるいずるいと駄々をこねるパルティアと、ドヤ顔をかますアガーテ。


「それで、俺の演技は何か参考になったか?」


「上手すぎて参考にならないわよ...」


「そうだよねー、そんなにすぐに真似できないよね」


「別に真似する必要は無い、俺の演技から何か感じ取れればいいだけだ」


「そうは言っても...ねぇ?」


どうもピンと来ていないようだ。


「あ、でもどうしてあんな丁度いいタイミングで泣けたの?」


「これか?」


俺はそう言ってたらりと涙を出す。


「そう!それ!どうやってんの!?」


「私も気になったわ」


「別に、ただ単に泣けるエピソードを思い出しただけだよ」


「そんな簡単に...できないわよ!」


「そうか?」


「アル君だったらどういうことを思い出してんの?」


「俺か?俺は...泣ける小説のワンシーンとか、嫌いなものとか...かな?」


ホントは前世の死んだお袋のことだけど流石に言えないため自粛。


「泣ける小説のワンシーンってどういうの?」


「そうだな...例えば...」


そこで俺は前世でよく泣いたドラマだとか映画だとかのストーリーを覚えている範囲で伝えた。


「うぅ、ぐすっ、よかった...よかったね、の○太...ド○え○ん直ったね...ぐすっ」


「清○ぁ、しんじゃだめよぉ...えぐっ」


パルティアはドラ○もん、アガーテは火○る○墓が泣きのウィークポイントなようだ。一応この世界でも分かるように一部改変しているが、口頭でも十分涙腺を破壊する力を持っているようだ。流石は映画ドラ○も○と火垂○の○。


次回更新はまた一週間後、5/27になります。

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