第二十九話 四歳児の尋問
夜、俺は寝付けずにいた。
昼間にゲロ吐いてぶっ倒れている間ぐっすりだったからかもしれない(気絶と睡眠は違う物ってどっかで聞いたことあるけど)。ひとまず寝れるまで目をつぶって精度を上げた状態の霊力ソナーを思い出してみた。正直ソナーと言うよりはレーダー?GPS?センサー?どれに当たるかイマイチ判断しかねる。これの精度をもっと上げれば魔術も感知出来るようになるんだろうか...ん?
「(誰か居るな...)」
ソナーに複数の反応があった。部屋のドアの外に二人、天井裏に一人、窓の外に一人...。あきらかに俺を狙っている。
「(出るか?いや、下手に動くと逃げられる。ここはしばらく寝たふりをしつつ警戒を怠らないで、近づいてきたところを狙う)」
窓の外にいた一人が部屋の中に入ってくる、じわりじわりと近付いてきて、俺の寝るベッドの真横まで来た。そのあいだ俺は布団の中で霊水針を数本作っておく。
「(今だ!)」
勢いよく布団をまくり上げ、不意を突きそばの一人の右足に針を打つ。
「ぐわぁ!」
バン
という音が鳴り、霊水針が爆裂。威力は抑えておいたがそれでも当たった部分には穴が開いただろう。
「ふっ!」
すかさず天井に居るもう一人に向けて一本打ち込む。
「いぎ!」
天井で悶えるようにバタバタと音が鳴る。その音に反応して隣のベッドで寝ていたエリーゼが目を覚ました。
「な!?何の音ですか!?」
エリーゼの声に気付いたのか、廊下の二人は急いで逃げてしまった。俺はそれを追いかけるため、ドアを開け放ちエリーゼに一言伝えた。
「敵襲だ!そこのやつと天井に一人居るから抑えといてくれ!」
それだけ伝えるとすぐさま身体強化を行い、逃げた二人の後を追う。
ソナーで捉えているため場所はわかる。どうやらどこかの部屋に逃げ込んだらしい...って!その部屋、ハンスの部屋じゃねぇか!
部屋の前に立ち、中からの奇襲を警戒しドアを開ける。するとそこには...
「動くな!動いたらこの坊主の命はないぜ!」
状況が飲み込めず混乱しているハンスの口を抑え、その首にナイフを突き付けているモヒカンの男と木の長い棍棒のようなものを構えたこれまたモヒカンの男がいた。
「あ、お前らは!」
「そうさ!お前に半壊させられた山賊、紅蓮の突撃隊だ!」
「お前らは昨日俺らが豚箱に放り込んだはずじゃ...」
「あぁ、確かに捕まった。ほとんどがな」
「てことは...」
「そう!俺らは別件で別行動をしていた生き残りだ! お前にお頭たちの敵討ちに来た!」
多少驚くフリをしながら相手に情報をベラベラと吐かせるが。
まずいな...ハンスが人質に取られているから動けない...どうしたもんか。
「へへ、知ってるんだぜ?お前の弱点」
「!?」
「お前、火が苦手なんだろ?ずっと見ていたからな、あの試合。なんてったってこの坊主に雇われたんだからなぁ!」
「ちっ...」
まずいな、昼間と同じ手を使っても相手が遠距離魔術を使ってくれば動けなくなる、やられる前にやるか?いや、ハンスの身に危険が生じる...
「へへ、おい!」
「おう!」
一人が棍棒を持っている方に合図を送ると、棍棒の先に“マッチ”で火をつけた。どうやらその棍棒は松明だったようだ。
「これが怖いんだってなぁ~?どうだ~?ビビって声も出ねぇのかぁ~?」
火のついた松明をゆっくりと近付けてくる。だが何も感じない、なぜならこいつらは圧倒的な勘違いをしているからだ。
「ふん!!」
俺は一瞬で松明を持っている方を抜け、ハンスに突き付けているナイフを蹴り飛ばす。
「な!?なんで火が効かねぇんだ!」
「畜生!!」
男が松明を俺に振ってくる、だが俺は至って冷静に霊力で土の塊を松明の先端に被せるように作り出し消火。瞬間、部屋を暗闇が包みこむ。
「うげぇ!」
「ぁあぐ!?」
目を閉じ霊力を集中させ、感知して居場所がわかる俺は暗闇の中で二人をぶちのめす。そして霊力による土の輪っかを被し無力化した。
「ふぅ、大丈夫か?ハンス」
「え?あ、あぁ。怪我は無い」
「そうか、そりゃあ良かった。ひとまずロウソクかなんかで明かりを着けてくれないか?」
「わかった」
ハンスがロウソクではなくランプに火をつけ、部屋が明るくなる。
「うぅ...」
「・・・・・」
片や痛みでうなっていて片や白目を剥いて完全に気を失っているモヒカンの男二人。
「おい、お前、残っているのはお前らだけか?」
まだ意識のある方のモヒカンに尋問を仕掛ける。
「ぐ...だ、誰がお前なんか言うかってんだ!」
「その状況でよくそんな口が叩けるな...」
「はっ!なんだ?殺しでもするか?やれるもんならやってみろよ、その代わりお前の質問には答えられねぇがな!くくく...あべし!」
思わず俺はモヒカンの顔面に蹴りを入れてしまったが気にせず尋問に戻る。
「殺すつもりは無い、どっちにしろ兵士に引き渡すからな。それで、吐かないって言うんだったらこっちにも考えがある」
「へっ!俺は何にも怖くねぇぞ」
「そうか、じゃあ遠慮は要らねぇな、ほれ」
バシュッ
「うぎぃ!?」
「さて、俺を一日中見てたってんならわかるよな、今テメェの股間に撃ち込んだのはあの水の針だ。俺の質問に答えないんだったらどうなると思う?」
「あ、あ...」
モヒカンの顔が青ざめて恐怖しているのがわかる。
「そう、今まで付き合ってきたテメェの汚い息子はぼーん、木っ端微塵に吹っ飛ぶ。あ、そうだ、安心しろ。もし吹っ飛んでもちゃんと治癒魔術で治してやるよ」
そう言うとモヒカンの顔に余裕のある表情が少し戻る。だがここで叩き落とす。
「けど、治すのは前の穴だけにして、自慢の息子自体はお亡くなりになってもらう。つまり穴1つ残してあとはツルツルだ、良かったな」
「や、やめてくれええええええ!!!」
と言っても実は今撃ち込んだのは霊水針ではあるが、単に水を針の形に変えただけのもので圧縮は一切行っていない。
「じゃあ俺の質問、答えてくれるよね?」
この際だからそのまま騙されてもらうことにしよう。
「わかった!なんでも話す!!」
ん?今、なんでもっていったよね?とかいうネタはやめといて...
「じゃあまず、テメェら以外に残っているモヒカンは?」
「モヒ...い、いない!あとは全員捕まっている!」
「ホント...だな?」
「あぁ!本当だ!」
「じゃあもう一つ質問だ、どうやって俺がここにいると突き止めた」
「それは、そこにいる坊主の依頼書に『田舎貴族のガキ』と書かれていて、それでお前だと思って...」
「そうか...わかった。もう質問は無い」
「な、なら早くあの針を抜いてくれよ!」
「あ、それ無理」
「は?」
「だから無理なの、一回刺したら。下手に抜こうとすると途中で暴発するよ?」
「な!?騙したなテメェ!!」
「騙したも何も、最初から俺は一度も抜いてやるなんて言ってないぞ」
「っ!?クソが!じゃあどうすんだよ!」
「そうだな、俺が魔術で操作しなかったらそれは爆発しないからな、つまり...」
「つまり...?」
俺はモヒカンに顔を近付けニッコリと微笑みかけ言った。
「二度と俺に関わるな、そうすれば爆発はしねぇよ」
「は、はいぃぃぃいいいい!!!」
「よし、じゃあ眠ってろ」
ガスッ
近くに転がっていた棍棒のような松明を頭にフルスイングしてやり気絶させる。大丈夫だろ、これぐらいじゃ死なねぇだろ。若干やり過ぎた気がするが、すぐにそんなこと忘れ次の行動に移る。
「ハンス、怪我はないか?」
「え?あ、あぁ。アルのおかげで無事で済んだよ...」
「そうか、良かった。それで俺は一旦部屋に戻ってエリーゼの様子を見てくるんだが...ハンスはどうする?」
「俺は...」
ハンスはチラリと完全に無力化されたモヒカンを見てから俺に向き直った。
「俺も、着いていく」
「そうか、じゃあついでに何があったかも話しておくよ。じゃあ行くぞ」
「お、おう!」
部屋に戻るまでの間にさっき部屋で起きた出来事を一切の偽り無くハンスに伝えた。ハンスは今回の原因が自分にあると今日何度目か分からない謝罪の言葉を言ってきたが、俺は特に気にしていないと伝え部屋のドアを開けた。するとそこには頬を赤らめながら礼儀正しく自分のベッドに腰掛けているエリーゼと、縛られ口に布を突っ込まれた二人の男の姿があった。そしてなぜかその二人の男はどこか幸せそうに口に入っている布をもごもごとさせていた。
「無事だったか」
「は、はいぃ...」
俺が声をかけるとエリーゼはもじもじと足を動かし恥ずかしそうにしている。どうしたと言うのだろうか。
「口に布を入れて騒ぐのを防いだのか、いい判断だな」
「いえ、片方が魔術を詠唱し始めたので...」
「なるほど、魔術の無力化か。よくやった」
「い、いえ...」
何を恥ずかしがっているのだろうか...とりあえずこの二人からも何か話を聞いておくか。
「魔術を使ったのはどっちだ?」
「右の方です...」
「わかった」
エリーゼから聞いたとおりに右の男に近付き布を引き抜こうとする...が何故か全く離そうとしない、何やってんだコイツ。
「オラ、さっさと離せ~!」
「んぐぐ~!!」
しょうがない、またあの手を使うか。
バシュッ
「んがぁ!」
「ほい!」
男のヨダレでベチョベチョになったそれを手に取ってみると...
「パンツ...?」
女物のパンツだった、何でこんなものが...ハッ!
「まさかお前...」
エリーゼの方を見ると両手で顔を隠し狂ったように悶え、声にならないような声を漏らす。
「~~~っ///」
「おい、何があった...?」
「じ、実は...」
エリーゼの話を聞くと、二人を捕らえた後に俺と同じで尋問をしようとしたら片方が魔術を唱え始め、慌てて近くにあった布を男の口に突っ込んだらしい、ただそれが自分のパンツだったことは予想外だったらしく、口からはみ出た布を見て気付いたとのことだ。その後、もう一人の方にも口封じをした方が良いと思い今度は冷静に手頃な布を探すがどこにも無い、自分の荷物にも無礼を承知で俺の荷物も探すがどこにも無く困っていると何故か捕らえられている男が口を挟んできたと言う。「布なら丁度いいのがそこにあるじゃねぇか、へへ」と顎で自分の方を指しながらにやけ顔で言ってきた。その視線の先は自分の下腹部...
「もういい、なんとなく分かったから、無理すんな...」
「すいません...///」
「とりあえず...ご愁傷様...」
「うぅ~///」
エリーゼは恥ずかしさのあまりベッドに突っ伏し動かなくなってしまった。
ヴィクターさんを起こして夜勤の兵士にこいつら突き出すとするか。
エリーゼのパンツもぐもぐしたいです^q^(要殺処分)




