第二十八話 勝負の後は...
本日二話目の投稿です。
熱い戦い(文字通り熱かった)を終え、体力もある程度回復した俺とハンスは昼食も過ぎてほぼ夕食に近い食事を一緒に取っていた。
「その...なんか悪かったな」
「何が?」
「いや...その、いきなり敵意むき出しで」
「気にするなよ、俺は楽しかった、お前は違うのか?」
「楽しかったさ!最後はな...」
「最後は?最初の二試合は?」
「.........済まない!!」
ハンスは机にオデコを強くぶつけ謝罪した。
「ちょ、ちょっと待て落ち着け、何があった?」
「実は...」
ハンスは自分が不正をしていた事を白状した。端的に纏めると、魔術師を数人雇い、遠くから魔術や魔力を送り込んで自身の魔力を底上げしていたと言うものだった。
「なるほど、道理で最初の試合の時に蹴りを食らってピンピンしてたんだな」
「そうだ...」
「屋敷内にこの家の者じゃない気配があったのもそのせいか...」
「気付いていたのか?」
「俺が気付いてわけじゃない、エリーゼが音と臭いで見つけていた」
「そうだったのか...流石は獣人族だな」
「まぁ、良い奴だよ。同時に変な奴だけど」
「はは、まぁそう言ってやるな。あれだけ主人を思っている従者もなかなかいないもんだ」
「あれは俺のじゃないぞ、親父のだ」
「え!?」
「解説のとき言ってたぞ?」
「ホントか!?」
「あぁ...」
「そ、そうだったのか」
それから俺らは最初の頃の蟠りも無くなり様々な話をした。俺からは村での話を、ハンスからは学校や王都での話を。ひとしきり話す頃にはもうわだかまりなど無く、親友とまではいかないもののそれに近いくらいの仲になっていた。
「それで俺がウォーターボールをちゃちゃっと使ったらエリーゼが『えええええええええええええ!?!?』なんて大声出して驚いちゃって」
「ははは、それでそれで?」
「急いで家に戻ってお母様に報告したら昼寝してるところを邪魔しちゃって」
「あーあ」
「そしたら二階からドンッとかいう鈍い音が聞こえたと思ったら、エリーゼがボロ雑巾みたいになってお母様に引きずられてきたんだよ」
「あっはっはっは、そりゃあ面白い!傑作だ!」
「だろ?」
「あぁー笑った笑った、お腹痛くなるくらいだよ」
「そりゃあ良かった」
「ところで...話変わるけど」
「なに?」
「アル、お前って火が苦手なのか?」
ハンスの唐突な発言に時が止まった...気がした。冷や汗を流しながらなんとか喉を振り絞って声を出す。
「な、なんで、それを...」
「だってなお前、俺のフレイムハンドを見た瞬間に急に嫌そうな顔するんだ」
「そ、そんなにか...?」
「あぁ、と言っても気付いたのは試合が終わったあと、部屋で目が覚めてから試合のことを思い返しているときだ」
「そう...か」
「なぁ、何か理由があるのか?今のお前、すごい汗だぞ?」
どうしようか、言った方がいいんだろうか。どっちにしろもう隠せないだろうし、だったら素直に言った方がいいんだろうけど、どこから説明する? まさか前世の話をするのか? 無理だ、無理に決まっている。ならどうやって...あ。
「実は、前に火属性の魔術を失敗して身体に燃え移ったことがあるんだ。それ以来火を見るとどうしてもその時のことを思い出しちゃって」
「そんなことがあったのか...」
嘘は言っていないはずだ、火属性の練習をして燃えたのは事実だし、強いていうなら「それ以来」ぐらいだ。大丈夫、嘘じゃなーい嘘じゃなーい。
「その、済まなかった。知らなかったとはいえ古傷をえぐるようなことをして...」
「い、いや、良いんだ。いつかは克服しなきゃならないし、それにハンスがそれで本気を出せなかったら俺だって嫌だったし」
「お前は強いな、実力でも精神面でも」
「そんなことは無いさ、俺にだって苦手なものはある。火以外にもね」
「そうなのか?意外だな」
「俺はまだ4歳だぞ?年相応に嫌いなものはあるよ。例えばあれだ、サヌートの実あれは無理だ」
「あー、あれな俺もあれは苦手だ。何故か木の実の癖に魚臭くてな」
「そうだよな!親父はあれを美味いって言うんだぜ?」
「お父様もよく酒に合うって言ってうまいうまいって食べてるよ」
いい具合に俺は話を逸らし、お互いの苦手なものは物談義が始まった。なんとか俺の過去についての追及は避けることが出来たし、これで良かったかな?
気がつくと外はもう茜色に染まっている、夏の空だから日が落ちるのが遅いはずだが、それほどまでに話し込んでいたということだろう。
「流石にもう今日は学園を見に行けないな」
「そうか、今日は学園に行く予定だったのか、下らない勝負事に突き合わせてしまったせいで予定を潰してしまったな、済まない」
「いや、あの戦いが無ければ俺らはこんなに仲良くなれなかったんだから気にするなよ」
「それもそうだな、じゃあお詫びとして明日は俺が連れてってやる」
「ハンスが?」
「あぁ、生徒と一緒なら入りやすいだろう?」
「そう、だな。じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
「話は決まったな、それなら今から風呂に入ろう」
「一緒にか?」
「男同士なら問題ないだろ、それともエリーゼと一緒に入りたかったか?」
ハンスがニヤニヤした顔で聞いてくる。
「冗談、裸の付き合いってやつもあるし。入らせてもらうよ」
「そう来なくっちゃな」
そう言って俺らは一緒に風呂へ入った、風呂でどちらがのぼせずに入ってられるかの勝負をしたのは...話さなくっていいか。
第二章の予定としては王都から帰るまでにしています。
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