第三十話 学園侵入
翌朝。
「おいまたかよ...」
またもエリーゼが布団に潜り込んできていた。
「今日くらい良いか...ふぁ~あ、昨夜は色々あって寝れなかったし...おれもひとねむりぃ...ぐぅ...」
睡魔には勝てず、二度寝を決め込も...
「おい!アル!学園行くぞ!!」
...うとしたが俺の崇高な時間はハンスによって阻害された。
「んぅ...なんだ...ハンス...おれはいまから...二度寝を...ぐぅ...zzZ」
「寝るなあああああ!!!お前今日は学園に行くんだろ!?」
「あぐっあぐっ、ゆらすなぁ~」
俺の崇高な時間(笑)は自分のした約束にて無残に崩れたのだった。
「はぁ、学園に行くとは言ったけどこんな朝早くから行くもんなのか?」
無理やり起こされた俺はハンスと共に朝食をとった後にシルヴィアさんを連れて屋敷の前に止めてあった馬車に乗り込んだ。
ちなみにエリーゼとラリーはまだ寝ている。クソったれが...
「それは俺が学園に行く時間だからだ」
「あ、そう言う事?」
「そう言う事だ」
なんと自分勝手な理由で...まぁいいや。ハンスも昨日はあれだったから眠いのだろう、目の下に隈のような物が見えるし。
「ところでそれは制服か?」
「あぁ、そうだ。誇りあるフェルディーテ王立学園の制服だ」
ふふんと得意げに胸を張るハンスが着ている制服は紺を基調とたブレザー...というよりはタキシード?に近い形状をしており胸の部分には校章と思しき刺繍が施されていた。下は灰色のズボンに黒い革の靴を履いており、上半身とは違いあまり装飾は多くない。全体的に華美と言うほどではないがしっかり気品を感じ取れるデザインだ。
「実はこの制服は初等部までしか着ないんだ」
「え?三年間しか着ないのか?」
「あぁ、中等部からは学科ごとの制服が支給されるんだ。例えば武術科だったら身動きの取りやすい丈が短めのものだったり、魔術科だったらローブを模して収納が多いものだったり」
「へぇ、九年間統一すればいいのにな」
「学園長が一目でどこの生徒がわかるようにしたんだってさ、なにぶん人が多いから」
「毎年何百人も来るんだろ?」
「あぁ、一年生だけでも300人はいるっていうし」
「そんなに居たんじゃ土地が足りなくなるだろうに」
「それは大丈夫だ、良く分からないけど学園内の施設は特殊な魔術でいくらでも広く出来るんだってさ」
「なんだそのムチャクチャな魔術は...」
「学園長しか使えない魔術らしい」
「もし普及すれば大変な事になるだろうな」
「かもな」
そうこう話し込んでいるうちに学園についてしまった。
フェルディーテ王立学園。王都フェルディーテに作られた王都が運営する巨大な学校。約百年の歴史を持つこの学園だが、現学園長でありながら初代学園長でもあるエルフ族の《ウォルター・エル・フィートマン》氏による空間魔術で学園内の施設は全て外見以上の広大さが内部に広がっている。本誌の発行時点にてフィートマン氏以外に空間魔術を扱える者は存在しない。
また授業内容は多岐に渡り、語学算術歴史などの一般知識は勿論のこと、武術に魔術と言った戦闘をメインとした教科、商術や政術などの経済学やその他にも執事やメイドの技術を育てる家政術など様々なことが学ぶことが出来る。
全校生徒は約2500人、全寮制となっており部屋は二人部屋か三人部屋が用意されている。貴族と平民の身分によって寮が分けられているが内装や内容に差異は全くない。
そしてこの寮の自慢は学園長こだわりの大浴場である。話によると地下に源泉があり常に湯が沸き上がるように細工した魔術を使い、全寮の大浴場へと繋げているとのことだ。学園長曰く「あくまで私の趣味ではあるけれども、生徒に身も心も綺麗に洗い流してもらいたい、そしてお風呂と言うものの素晴らしさを分かってもらいたい」と熱弁。我々取材班も一つご相伴に預かったが、とても素晴らしいものだった。
~月刊 王都の歩き方より~
「なるほど...」
俺は一昨日買っておいた雑誌を読みながらつぶやいた。
「てか、締めの一文が風呂って...」
「だが記者の気持ちはわかるぞ、あの浴場はいいものだった」
「そんなにか...ちょっと気になるな...」
元日本人だしな!
「まぁあと2年すれば好きなだけ入れるさ」
「待ち遠しいなぁ、そう言えばこの本には全寮制とあるが、なんでハンスは家から?」
「今は夏休みだからな、帰宅が許可されているんだ」
「夏休みとかあるんだな...じゃあなんで今日は学園に?」
「今日は部活の練習なんだ」
部活だなんてなんか前世の学校とあまり変わりないな...
「何部に入っているんだ?」
「火属性魔術部だ、試合競技じゃなくて演舞競技が専門だけどな」
「へぇ~、火属性ってことは他の属性もあるんだな?」
「そうだ、火水風土の魔術部が一つずつ存在する」
「魔術部以外にも部活はあるのか?」
「あぁ、武術部も様々な武器種ごとに別れていて存在する、正直数が多すぎて全部把握しきれない程だ」
「生徒が多いからそれぞれの趣味趣向が飛び交っているんだろうな」
「なんのために存在しているのか分からない部もいくつかある、例えば...枕部とか」
「何だその部...」
「部活紹介の時に『究極の睡眠をあなたに!来たれ枕部!!』とか言ってたな」
「なんだそりゃ」
と話しているうちに来客用の受付まで来てしまった。
「何か御用でしょうか?」
受付のお姉さんが愛想良く聞いてくる。
「見学をしたいのですが...」
「はい、見学ですね。ではこの用紙に日付とお名前と年齢をお書きください、字は書けますか?」
字は書けますか?バカにしてんのか?あ、俺は今4歳だったな...
「はい、書けます」
「そうですか、まだ小さいのに立派ですねぇ」
お姉さん、にっこにこである。
「はい、書けました」
「では、これが来客用のタグになります。施設へ入る際には各受付にこのタグを見せて下さい」
「わかりました。ありがとうございます」
「いえいえ、それとお帰りの際はここに来てタグを返して下さいね」
「はい」
ということで、無事学園内に入ることが出来たのであった。
アルバート達が去った後の受付では...
「はぁ...さっきの男の子可愛かったなぁ~」
ショタコン全開であった。
「えぇと、名前はアルバート・ウィルホーキンス...ウィルホーキンス?はて、どっかで聞いたような...」
うむむと眉を顰めてこめかみに指を当てて悩む受付嬢。
「あ、エリオット・ウィルホーキンス...え?親戚...?」
弟です。
学園編への予備知識を埋め込むためのパートがいくつか続きます。
次回は来週の水曜日を予定しております。




