4話目『疑念』
おかえりなさい
とりあえず、汚れた床を拭き、その場で服を脱いでユニットバスへ向かう。パジャマに着替えた記憶すらない。温まるまで時間のかかるうちのシャワーも、二日酔いの頭痛には敵わないらしい。お湯に変わっても、ズキンズキンと頭の中で心臓が脈打っていた。
今日は家から出るつもりはない。昨日着なかったパジャマに着替え、部屋に戻り、あらためて、フィギュア達を見る。
フィギュア達が滲んでる?
…違った、涙で歪んで見えるんだ。
あらためて、”みんな”を見る。
アタシは涙を拭くこともせず、みんなの方へ歩いていく。そこで視線を、みんなから、みんなが見てるネズミ捕りに向けた。
ネズミ捕りは
…空っぽだった。
なんだか、
『アタシの心とおんなじだなぁ』
なんて、言葉が頭に浮かんだ。なんでだろう。みんなと一緒に過ごす土曜日なのに。心が空っぽになるはずなかったのに。流れる涙の分、心に隙間ができていくような気がした。
「…」
「…イヤだ。」
「イヤだ。ダメだ。イヤだ。」
アタシは頭を横に振った。ひどい頭痛が襲ってくる。頭の奥を無理やりこじ開けようとしたせいか、RC細胞が暴れ出したグールのように激痛が走る。人間の食べ物を口にした際の拒絶反応にも似て、胃の中のものが遡ってきそうになる。
アタシは手荒く、みんなをつかみ上げる。そして最高のはずの配列に並べ直していく。
うまくいかない。焦るな、アタシ。頭の中には何の疑いも持たなかった頃の、秩序が詰まっているじゃないか。
…
うたがい……?
何を言っているんだ、アタシ。あの配列は最高のはずだ。最高でなければいけないのだ。コレは、公式設定からも外れていない。にわかオタクが語る薄っぺらい解釈なんかじゃない。
最高の配列なんだ。
最高の配列なんだ。
最高の配列なんだ。
だから。
だから動くな。
頼むから。
みんなが元の位置に戻った。正しいはずの位置、向き、距離……。
疲れも、二日酔いも、寝不足も、みんな並んで襲ってくる。
でも寝室にはいけない。
怖い。
目を離すのが怖い。みんなから離れられない。
アタシはソファーに深く座り、みんなの方を見る。視界が次第にぼんやりとしてくる。
霞む思考のなかで、アタシの声で誰かが呟く。
その解釈が本当に最適解?
…
その配置が本当に最高?
…
その思いは本当にホンモノ?
…
…
.
.
.
もう、何も考えられなくなった…




