3話目『同調』
おかえり
「ゼイ、ゼイ、ゼイ…。許さん、許さんぞ〜。ネズミどもめ。」
「駆逐してやる…この部屋から…一匹残らず…!』
アタシは、スマホでAからZに矢印を引いて、何でも揃うと豪語する通販サイトを開き、『ネズミ捕り』を探す。
「粘着式、踏み板式、生け捕り…カスタマレビュー:4.5、いや評価数が少なすぎる、こっちは3.9か…」
アタシは複数のネズミ捕り、シート、駆除餌をポチった。死神のノートを手に入れ『新世界の神になる』とのたまった男のように、全能感に包まれながら。
…
会社から帰宅すると、玄関先には黒いテープで封印された段ボールが鎮座していた。
「来たか…さすが、即日配達。プライムの名は伊達じゃないな。」
早速開封し、その戦略兵器を設置する。聖地=棚の周りは当然のこと、台所、ベランダの隅、ユニットバスの天井にある点検口の中にもと、右へ左へと動き回る。まるでデンプシー・ロールを繰り出すボクサーのように。アタシの瞳は緑の残光が軌跡を描いていることだろう。
「こんなものか。」
アタシは未来の海賊王の仲間の船大工が、新しい兵器を完成させた時のように、額の汗を拭った。
この地雷原を抜けて来られるのは、受け継いだ個性を一切使わず、障害物だったロボットの装甲を盾にして、爆風とともにライバルを抜き去ったヒーローぐらいだろう。
いつものごとく、発泡酒をプシュッ。ゴク、ゴク、ゴク…
『ねずみども、来るなら来い。その同人誌の二次創作のような思い違いを有給使ってでも正しく導いてくれるわ」
更にプシュッ。ゴク、ゴク、ゴク…
「今日は…寝ずに…ねずみを …。キャハハハ…、ねずに、ねずみをだって。」
プシュッ。
「なんか、たのしー。今夜は…オールだ…。オイ、最弱男…オマエはなぁ…」
…
朝日が眩しい。今日が週末で良かった。また寝られる。まだ寝られる。
二度寝をしようとして
「…」
「…… !?」
「………ッヲ!」
「ナニソレ…」
「……………………!!」
「アリエナイン、デス、ケド …」
フィギュア達全員が動いている。
視線の向きが一つに統一されている。
…棚のそばのネズミ捕りに。
「お前達、敵も味方も関係なく、同じ行動仲良くとってんじゃねーよ。」
「ネズミ捕りなんか、お前等に関係ないだろ〜〜〜」
「ヒロイン、なに乗り出してやがんだ。おてんば属性、はじめましたってか。」
「魔王、倒されたんじゃね〜だろ、それ。明らかに自分で寝転びましたって形だろ〜」
あまりの事に連続でツッコミながら、パロディネタも頭に浮かんでこない。
どうなってるの?
どういうこと?
家にいるネズミは、
ヒーロー養成学校の校長なの?
猫と仲良く喧嘩してる茶色いネズミなの?
見習いシェフを操って高級フレンチ作ったりするの?
著作権にうるさいランドやシーのラスボスなの?
わけがわからない!
…
…
昨日の酒のせいか。
あるいは、目の前の光景のせいか。
昨日の酒のせいか。
アタシはその場で、マーライオンと化した。




