94 悪魔 オリバー視点
公爵邸の地下にある監獄。
私は薄汚い格好をした一人の男と向き合っていた。
「いいか?必ずやり遂げろ。ヘマしたら死が待っていると思え」
「ひ……ひぃっ……!」
狂気に満ちた目でそう言うと、男は顔を真っ青にして体を震わせた。
「こ、公爵様……」
「成功したらここから出してやる。お前の犯した罪は不問にしよう」
私はポケットから出した紫色の液体が入っている小瓶を男の震える手に握らせた。
「で、ですが……無茶です…………そんな、晩餐会で王弟殿下に毒を盛るだなんて……!」
男は目に涙を溜めて必死で訴えてきた。
「王弟だと?馬鹿げたことを言うな。王族としての身分なんてとっくに捨てた男なんだ。それに加えてアイツは妾腹の子だ」
「しょ、妾腹の子……?」
「そうだ、先王が気まぐれに手を出した平民のメイドが産んだ汚らわしい王子だ。こう言えば分かるか?」
「……」
よほど衝撃的な事実だったのか、男は固まった。
「ただ王家の使用人に扮して毒を盛れば良いだけだ。これでお前の犯した罪が無くなると思えば悪くない話だろう?」
「だ、誰かに気付かれでもしたら……」
「王宮に使用人がどれだけいるか知っているか?誰も全員の顔なんて覚えちゃいない。もし断るなら……今ここでお前を切り刻んで殺す。楽に死なせはしない」
「……!」
この男は元々レビンストン公爵家の使用人だった。
使用人が何故こんなところにいるのか。
それはコイツが公爵家の金を横領していたからである。
元妻のエミリアが浪費をしていると嘘をついていたのも全てこの男の仕業だ。
全ては自分の犯した罪がバレないようにするため。
(ハハ……本当にムカつくな……)
この男も、それに気付かなかった自分も。
「せ、成功したら本当に助けてくれるんですか……?」
「ああ、そうだな。それだけじゃない、前よりも良い地位を約束してやる」
「……!」
そうは言ったものの、助けてやるつもりはさらさら無かった。
無事に帰ってきたところで口封じに殺害するだけである。
(こんなものを信じるとは……何と愚かな……)
どのみち罪人だ。
殺したところで問題は無い。
「それで、やるのか?やらないのか?」
「や、やります……!やらせてください……!」
少し脅し、少し良い条件を提示したら男は即答した。
(何と貪欲な男なんだ……)
呆れてものも言えない。
「ならここから出してやる。言っておくが、逃げようだなんて思うなよ?」
「と、当然です!さっきから殺気を向けてくるのをやめてください!」
今すぐにでもズタズタに切り裂いて殺してやりたかったが、ここは我慢だ。
(やはり罪人は利用するに限る……)
あの男の無惨な死体が見れると思うと、笑いが止まらなかった。
読んでくださってありがとうございます!
ブクマ、いいね、評価などしていただけたら励みになります!




