93 自覚
(ほ、本当に届いた……!)
あっという間に時が過ぎ、晩餐会の前日になった。
今、私の目の前にあるのは丁寧にラッピングされた箱だ。
中には彼が選んでくれたのであろうドレスやアクセサリーが入っている。
(ルークが私のために選んでくれるだなんて……)
正直に言うと、ルークに誘いを受けたあの日から緊張してしまって眠れない日々が続いた。
こんな気持ちは久しぶりだ。
十年前、オリバー様と結婚する数日前のときと全く同じ状況である。
(どうしよう……私、多分ルークのこと好きなんだわ……)
今になってようやく気付いた。
私はおそらく彼のことが好きなのだ。
オリバー様と結婚して、私は地獄のような十年間を送ることになった。
初恋の人は決して私を愛してくれなくて、何度も心が死にかけた。
もう一つの家庭が存在していることを知ったとき、私はようやく彼への恋心を捨てた。
そしてそれと同時にあることを心に決めた。
二度と誰かを愛したりしないと。
最愛の人と結婚すれば幸せになれるかと思ったが、一方的な恋はただ辛いだけだった。
二度と恋はしない、結婚もしない、と固く誓った。
しかし、ルークとの出会いで全てが変わった。
私を助けてくれたのはいつだって彼だった。
家族以外の男性に優しくされたのも、親しくなったのも初めてで。
人の部屋に勝手に入るし、無愛想で生意気なヤツだったけど……彼といると本当に楽しかった。
このタイミングに自覚するだなんて予想外のことだったが。
(でも好きだって分かったのはいいけど……それなら私はどうすればいいんだろう?)
オリバー様とは結婚することが決まっていたし、良い夫婦になれると信じて疑わなかったから特に何もしなかった。
だけど、今回は違う。
(それに、ルークが私のことを好いてくれてるとも限らないし……)
最近の彼の行動を見ると、ついつい勘違いしてしまいそうになる自分がいる。
そんな風に期待したところで後々辛くなるだけだということを誰よりも知っているはずなのに。
(いけないいけない……私ったら何を考えて……)
――しっかりしないと。
慌てて首を振ったそのとき、ふいに以前お兄様が口にした言葉が頭に浮かんだ。
『分かっているのか?元王族だったとはいえ、今はただの旅人だ。お前とは身分が違う』
『旅人なら、いつかはこの国を出て行くだろう。そうなったらお前はどうするつもりだ?』
「……」
現実は厳しいものだった。
お兄様の言っていたことは全て正論で、伯爵令嬢である私が彼とこの先ずっと一緒にいられるはずが無かった。
(私もそろそろ自分の将来について決めないといけないわね……)
私はそこで考えるのをやめて、明日に備えるためベッドに入った。
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