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【完結】愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした  作者: 春乃りぜ(ましゅぺちーの)


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80/110

80 脱出

しばらくして、音楽がピタリと止んだ。



「あ……」

「終わったようだな」



それに合わせて私たちのダンスも終了する。

やっと家に帰れると安堵の息を吐いたのも束の間、複数人の貴族男性が私に近付いてきた。

そして目を輝かせながらルークに歩み寄ろうとする貴族令嬢も数多くいた。



(ど、どうしよう……)



予想外の展開に困り果てていたそのとき、隣からボソッと声が聞こえた。



「おい、顔を上げろ。背筋伸ばせ」

「ルーク……」



彼の言葉で私はハッとなって姿勢を正した。



(いけない……以前の気弱な公爵夫人みたいになっていたわ……)



せっかく変わったというのに、これでは意味が無い。

私は凛とした佇まいで彼の隣を堂々と歩いた。



不思議とルークが横にいると、とても安心した。

この後何を言われても耐えられるような気がした。



そんな私の姿に男性たちは声を掛けづらくなったのか、立ち止まった。

それはルークに近付こうとしていた貴族令嬢たちも同じだった。



(ルークはこうなることを分かっていて私にああ言ったのかしら……)



やはり彼は只者では無い。

しかしその中で勇敢にも、ルークに話しかけた一人の令嬢がいた。



「あ、あの……!」

「……?」



彼女は顔を真っ赤に染めてモジモジしている。



(まさか、ルークに惚れ込んで……)



そんな令嬢を見た瞬間、胸がズキンと痛むのを感じた。



「初めてお会いしますよね……?せめて、お名前だけでも……!」

「……」



赤くなった彼女を見たルークは突然フッと笑った。

その笑みに、後ろにいた令嬢たちまで真っ赤になる。



「申し訳ありません。急いでおりますので」

「あ……」



そうしてルークは私の手を引いて彼女の横を通り過ぎた。

このまま私を会場の外に連れ出すつもりのようだ。



(オリバー様……)



扉から出る前、遠くにいたオリバー様の視線をひしひしと感じたが気付かないフリをした。



(……知らない)




***




その後無事に会場を抜け出せた私は、ルークにお礼を言った。



「ルーク……ありがとう……」

「俺が勝手に来ただけだから気にするな」

「それでも、助けられたのは事実だから……」



またルークに助けられてしまった。

今度こそは絶対にお礼をしなければならない。



「家まで送っていくよ」

「あ、私馬車で来てるから……」

「……そうか」

「良かったら、乗って行ってよ!何なら伯爵邸に泊まっていっても良いし」

「……いや、そこまでは」

「ほら、早く早く!」



私はルークの手を引っ張って半ば強引に彼を馬車まで連れて行った。



「ふぅ……」



馬車の中で私の向かいに座ったルークは魔道具を外して髪と瞳の色を元に戻した。



(あ、いつものルークだ……)



さっきの姿も格好良かったけれど、私はやはりこっちの方が好きなんだなと改めて思った。

私は窓の外をじっと眺める彼の横顔に声を掛けた。



「……来てくれるなんて思わなかった。何だか王子様みたい」



王子様というワードに、ルークがビクッと肩を震わせた。



「……お前は、俺が王子に見えるのか……?」



そしてゆっくりとこちらを向いたかと思うと、意外なことを尋ねた。



(何、その質問……)



王子と言われたのがよっぽど珍しかったのだろうか。

何だか彼らしくない。



「うん、さっきのルークは私にとっての王子様だったよ」

「……」



思えば、危機的状況にある私を助けてくれたのはいつも彼だった。



(ヒロインのピンチに現れるヒーローみたいね)



いつの間にか、私の中で彼が大切な人になっていたらしい。

ルークは私の言葉にしばらくの間黙り込んだ後、再び窓に視線を戻した。

どこか機嫌が良さそうなのはきっと気のせいではないはずだ。




読んでくださってありがとうございます!


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