77 公爵家のパーティー②
(来た以上、挨拶もしないで帰るだなんて失礼すぎるわよね……)
そう思った私は、仕方なく列に並んだ。
ふと前を見ると、他の貴族令嬢はこれでもかとオリバー様にアピールをしている。
(あわよくば後妻に……なんて思ってるのかしらね)
しかし私は、彼女たちの頑張りは全て無駄だということを誰よりもよく知っている。
オリバー様にはローザ様がいるから。
元々彼女以外の女性は愛せない人だ。
どんな美女が来たところで門前払いされてしまうだろう。
(…………あれ?でも今日のオリバー様は何だかいつもと違うわ)
彼の様子を見て、一つだけ気付いたことがあった。
普段は貴族令嬢が必要以上に関わろうとすると絶対零度の冷たい瞳で制する人だったというのに、今日は何だか機嫌が良さそうでニコニコと挨拶を交わしている。
(……私の気のせいかな?)
もしかすると、愛するローザ様とようやく一緒になれて嬉しいのかもしれない。
あの様子だと、彼女が正式に公爵夫人になる日が近いのだろう。
私はそう結論付けて、これ以上は考えないことにした。
それからしばらくして、いよいよ私の番がやってきた。
「――公爵様、ご招待いただきありがとうございます」
私はドレスの裾を握って頭を下げた。
顔を下げてはいるものの、頭皮に物凄い視線を感じる。
(我慢よ、これが終わればすぐに帰れるんだから……)
どうか何も起きませんように。
そう願った私の頭上で、声がした。
「――顔を上げてください」
「……」
その声で、私はゆっくりと顔を上げて目の前にいるオリバー様を見た。
「――本日はお忙しい中お越しいただき本当にありがとうございます、ログワーツ嬢」
「……!」
オリバー様の顔を見た私は、思わずビクリと体を震わせた。
彼は紳士的な笑みを浮かべており、さらにその頬はほんのりと赤みを帯びていて、とても嬉しそうな顔をしている。
(な、何……!?こんな顔初めて見たんだけど……!)
少なくとも彼は、こんなにも優しい顔を私に向けるような人ではない。
この顔はローザ様とリオ君だけだったはずだ。
(それなのに……どうして私に?)
明らかに他の参加者たちと違う態度に、貴族たちは様々な憶測をした。
「ログワーツ嬢にあんな優しい笑みを……」
「もしかすると、公爵様は令嬢にまだ未練があるのかもしれないな」
「結婚しているときは特別仲の良い夫婦には見えなかったけれど……私の誤解だったのね」
それを耳にした私は、猛烈な不快感に襲われた。
(え、何!?嫌!!!)
そんな噂を立てられるだなんて冗談じゃない。
私は彼のこと好きでも何でもないのに。
「公爵様、私はこれで失礼いたします」
「……もう行ってしまわれるのですか?」
「はい、どうか残りの皆さんで楽しい時間をお過ごしください」
私はそれだけ言うと、オリバー様に背を向けてこの場を去ろうとした。
が、しかし――
「――待ってください、ログワーツ嬢」
「!?」
私を引き留めたのは何とオリバー様だった。
「私の開いたパーティーは、そんなにお気に召しませんでしたか?」
「えっ……」
彼は悲しそうな顔でそう聞いてきたのだ。
もちろん会場にいる貴族たちの視線は私とオリバー様に集まっている。
(この状況で、そんな風にするだなんて……)
これではすぐに去ることが出来なくなるではないか。
「いえ……そういうわけでは……」
「なら、ご令嬢も是非楽しんでいってください」
「……分かりました」
結局私は、オリバー様の謎行動によりパーティーに残らざるを得なくなった。
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