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愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした  作者: ましゅぺちーの


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26 伯爵家の領地へ

あれから私は自室で休憩を取った後、お兄様やお義姉様たちが集まる家族の晩餐会に参加した。

居候の身である私が行っていいのか不安になったが、晩餐会では伯爵家の皆が私を快く迎えてくれた。

お兄様や元々知った仲だったお義姉様はもちろん、嬉しいことにエドモンドもかなり懐いてくれている。



(修道院に行くってついさっき決めたばっかりなのに……)



あんなにも可愛いエドモンドを見ていると、ここを離れたくなくなってしまう。



(……ううん、でも迷惑はかけられないもの)



いくら私がここにいたいと思っていても、これ以上甘えるわけにはいかない。

伯爵邸の長い廊下を歩いて自分の部屋に戻った私は、今日一日を振り返ってみた。



(オリバー様と離婚してレミアと出会って伯爵邸に戻って来て……)



こんなにも忙しない一日は人生で初めてかもしれない。



明日は何をして過ごそうか。

ようやく自由を手に入れたのだ。

ただ邸の中でじっとしているというのは勿体ないだろう。



(修道院に行くまでの間、せっかくなら何かしたいわよね……)



オリバー様によって奪われた私の十年間。

どうせなら自分の好きなことをたくさんしたい。

大陸の各地を旅行したり、奉仕活動に参加してみたり……。



(あ……でもまずは領地にいるお父様とお母様に顔を見せに行く方が先かしら)



私のお父様とお母様。

お兄様と同じく、辛い結婚生活を送っていた私の支えとなってくれた人だ。



お父様は私の置かれている状況を知ってただただ後悔していた。

私にオリバー様との縁談を持って来たのはお父様だったからだ。

お父様はきっと他の誰よりも責任を感じているに違いない。



それはお母様もまた同じだった。

お母様は私の結婚を一番喜んでくれた人である。



(それなのに、あんな扱いを受けて……)



あの二人は優しい人だからきっと今も後悔に苛まれているだろう。



(なるべく早く行った方がいいわよね……)



私は近いうちに自分の足で領地にて暮らしている父親と母親に顔を見せに行くことを心に決めた。






***





翌日。

私は仕事をしている最中であるお兄様の執務室にいた。



「父上と母上に会いに行きたい?」

「ええ、お兄様。出来るだけ早めに行きたいの」



私はお兄様に両親に会いに行くことを告げている最中だった。

それを聞いた兄はしばらくじっと黙り込んだ後、優しく微笑みながらコクリと頷いた。



「もちろんかまわない。いつでも好きに行けばいい」

「ありがとう、お兄様……!」



お兄様は私の気持ちを全て分かってくれているようだ。



(本当にケインお兄様が私のお兄様で良かったわ……!)



兄は執務室にある椅子に座ったまま私に問いかけた。



「それで、いつ出発するつもりなんだ?」

「うーん……どうしようかな」



本当なら今すぐにでも行きたかったが、まだ伯爵邸に帰って来たばかりで色々とやるべきことがある。



(明日?明後日?三日後くらいには落ち着いているかしら?)



日程を考えていたそのとき、突然執務室の扉が勢い良く開けられた。



「叔母さん!お祖父様とお祖母様の元へ行かれるんですか!」

「…………エドモンド?」



部屋に入って来たのはエドモンドだった。

そしてその後ろには少し慌てた様子のお義姉様が。



「こら、エドモンド。はしたないですよ」

「僕も一緒に行きたいです!」



エドモンドは母親の注意などまるで聞かず、目を輝かせながらそう言った。



「え……」



エドモンドは愛嬌たっぷりの顔で私を見上げた。



(ちょ、ちょっと待って……そんな風におねだりされると断れないじゃない……!)



自分でも本当にチョロい女だなと思う。



「エドモンド、お前はついこの間領地に行ったばかりじゃないか」

「また行きたいんです!」



エドモンドのおねだりに、お兄様とお義姉様は困ったような顔をした。



「叔母さん!お願いです!僕も一緒に連れてってください!」

「……」



一歩も引き下がらないエドモンドに、お兄様がほんの少し強めの声を出した。



「エドモンド、あまり我儘を言うな。遊びに行くわけでは――」

「待って、お兄様」



そこで私はエドモンドを叱ろうとしたお兄様の言葉を遮った。



「エドモンド、私と二人でいいなら一緒に来る?」

「わぁ、行きたいです!」



エドモンドは満面の笑みを浮かべた。



「お、おいエミリア……」

「お兄様、私は大丈夫だから」



私は渋る兄を何とか説得し、喜ぶエドモンドの頭を優しく撫でた。



「ありがとうございます、叔母さん!」

「いいのよ、私もエドモンドと一緒にいると楽しいし」



孫であるエドモンドが行けばお父様とお母様も喜ぶだろう。



(何より、こんな笑顔を見られるのならどんなお願いだって叶えてあげられるわ)



目の前で嬉しそうに飛び跳ねるエドモンド。

そんなエドモンドを見てお兄様とお義姉様も反対出来なくなったようだ。



そして結局のところ、私は三日後にエドモンドと二人で領地を訪問することになったのであった。




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