第26話 最後の戦い2
次から次へと迫る怪物を能力や銀の短剣で切りつけ吹き飛ばして倒していく。
すべての攻撃は防ぎきれず時折は肉をそがれ、食われ、切り裂かれる。
懸命に、怪物の群れからの攻撃に耐えながら怪物を殺し続けた。
時折、明らかにワザとに思われる風見先輩からの攻撃も仕向けられた。
「先輩、何をするんですか!」
「これもすべては願いのためだ!」
さすがの彼女の暴挙に堪忍袋の緒が切れる。
勇気は周囲にバリアを張り巡らして身を守るすべを得る。
そのまま、会話のできる状態を作ると彼女へと向かい思いのたけをぶつけた。
「何を血迷ってんだ! あんたは何もかも間違ってる! 悪魔のささやきに惑わされるな! 悪魔が簡単に願いなんて叶えるわけないだろう! こんなことをさせてあいつらはどうせ何かに利用するんだ! それがあいつらの罠なんだ!」
「おや、私たちが嘘をついていると? 心外ですね。なんだったら、あなたの願いもしっかりとかなえてあげますよ。ここの彼女を開放するとかね」
そういって名倉佳奈美に憑依したアスモデウスがアリスの首にそっと手を添えて超亜hつするような振る舞いを見せながら見下ろしてくる。
「てめぇっ! アリス姉さんにどんな悪魔を憑依させた! おまえが全部仕組んだってことはわかってるんだ! お前の言うことなんて全部を信じるわけないだろう!」
「あーあー、信じてもらえないなんて悲しいですねぇ。本当に悲しいです。でしたら、これでどうでしょうか。セーレ」
「仕方ないな……」
そういわれて、アリスに憑依した悪魔がまるで落ちたように彼女の首がゆっくりと下を向く。
ゆっくりと顔をあげた次の時にまるでさっきとは別人のような表情をした星城アリスがそこにはいた。
「あれ、ここはどこ? 私さっきまであの暗がりにい――って勇気!」
ようやく目の前の状況を見て気づいたように前のめりになろうとするアリスを後ろから羽交い締めにして食い止めるシスターハーシア。
「あー、それ以上身を乗り出したら落ちてしまいますよ。それに助けに行くことまでは許しませんよアリスさん」
「あなた名倉さん……いえ、違う。あなたはアスモデウスね」
「こんにちは、アリスさん。お目覚めはいかがですか?」
「お目覚めってことはあなたわたし何かしたわね。何をしたのか説明――」
次の時にはまた彼女の意識は落ちたように首を下げると、シスターハーシアも羽交い絞めをほどき、ゆっくりとアリスを離した。
「はぁ、これやるとすごいつかれるんだけど」
アリスの見た目のままだがすぐに雰囲気が彼女とは別のものだと直感でわかる。
彼女ではなく、悪魔に戻ったのだと悟らされた。
「さあ、これで願いをかなえてあげられるとわかったかな」
勇気はそんな光景を目にしながらも常に怪物から身を守るように張っていたバリアを大きく広範囲に広げていく。
怪物たちはそのまま壁にまで追いやられていくとそのままバリアによって壁に押しつぶされた。
その光景を見た悪魔たちは拍手喝采をする。
「素晴らしい。彼の能力はずば抜けてますね」
「ただの念動力であそこまでできるなんて彼くらいですかね」
「私もそう思うよ。でも、同族の彼女には通用しなかったみたいですね」
「ああ、彼女ね」
悪魔たちが評価する彼女とは、勇気と同じ超越者としてその人生を縛られてしまった風見凛のことだった。
彼女は刀を構えて勇気に殺意を向ける。
「先輩、こんなの悪魔の思うつぼだ! 俺たちが戦うなんて馬鹿みたいだと思わないか?」
「私には、私には救わないとならない人がいる! だからこそ、この場で君を殺すのだ!」
大きく振りかぶられる風見の刀。
ギリギリのところでよけていく。
何度も左右や上下に振りかざされる刀の軌道を読みながら、後ろへと下がる勇気。
ついに壁を背中に、ピンチへと陥る。
刀の切っ先が急所の喉元をとらえたのを見えた勇気は咄嗟に右手を地面に掲げて、地盤をへこませ、彼女の足場を崩した。
不安定な足場になり、バランスを崩した彼女を勇気は押し倒す。
刀を持つ彼女の手を弾き飛ばし、手から刀を取り落とさせる。
そのままその首筋と腕をつかみ、馬乗りになる。
「さあ、もうやめましょう。あいつらを殺せばすべてに蹴りがつくんですから」
「それだと私の願いはかなわないんだ!」
「え」
その隙が油断をおこした。
彼女の手によって刀は引き寄せられ、勇気の胴体を横なぎに彼女の刀は切り裂いたのだ。
勇気は自らの腹部を抑えて後ろに倒れこむ
「すまない、ゆうきくん。私の願いは姉の救出なのだ」
「お姉さん? ……くふっ」
口からあふれでる血液。
霞む視界。
勇気は自らの命がわずかなのを感じた。
「そう。私の姉、風見羽詩亜」
「そういうことか」
ずっと、安直に考えていた。彼女はみんながシスターハーシアと呼ぶものであるから外国の出身だと勇気は勝手に考えていたのだ。
実際は違う。彼女はしっかりと日本人であり、教会で育ったからこそシスターを名乗っており、その名前から愛称のようにそう呼ばれていたにすぎないのだ。
「悪魔と交渉しないと……すくえない……か……あはは」
そうして、勇気の意識はそこで途切れたのだった。




