第18話 謎の究明2
死闘を繰り広げて倒れたのは白峰カータレットだった。
彼女の喉元へと突き刺さった短剣。
短剣の刺し口からは致命的になったというほどの大量の血液があふれ出ていた。絶命した彼女の瞳からは光は失われて、瞳孔が大きく開いていた。確実に彼女が死んだことを意味していた。
「お二人ともよくやってくれた。これで無事に教会との連絡もできるだろう」
「風見先輩、いついらしていたんですか?」
そこにいたのは勇気たちにこの一件を依頼した風見先輩だった。
彼女は現場の状況を観察しつつ、納得した様子を見せる。
「なるほど、生徒による犯行か。それも悪魔にだまされでもして同じ学園の仲間を大勢殺したか」
白峰が死亡したことで兵装の能力も解除されて凍結から解放されていた勇気は、風見先輩を見据えながら言葉を発した。
「先輩はおおよそ察しがついていたような言い方ですね」
「察しはついてはいた。装置を破壊できるのは同種の君しかいないと思ったのだ」
「まぁ、でしょうね」
勇気は装置に手を添えると何かに反発するような力を味わうが、あの先ほど銃弾を動かした間隔をもう一度行い、装置にひびを走らせ、危険な音を立てながら煙を吹き出し装置は停止する。
「ありがとう」
「先輩は最初からこのことが目的でしたよね?」
勇気は懸命に失った右はなくても左手だけでもと拳を握り締めて威嚇をする。
「落ち着くんだ。騙したのは悪かった。でも、私は言った通り協力者だ。でも、彼女たちの使う能力では同じ能力を持つものしか対抗手段がなかったのだ。それにこの装置も同種の君しか壊せないと思ったからこそ、君にお願いしたのだ。これは君たちにとって必要なことだったからそうさせてもらったのさ」
「それはクラスに敵がいては復帰もしづらいから少しでも排除を早くさせるための機会を作ったということですか?」
「さすがは神近の息子だ。察しはいいみたいだ」
彼女はもとより分担の任務と称し、学園のクラスの中で犯人とわかっている二人の排除を率先させた。
装置の破壊も同種の人間しか行えないがゆえに勇気にそれを行わさぜるえなかったという。
彼女の思惑もわからないでもないけれども、複雑な心境はある。
「君たちをだますような真似をしたのは申し訳なく思っている。でも、あの装置は香織イーリスフィアットを殺害したのを機に強力さを増し、人へ催眠誘導を引き起こさせる能力も始まっていた。復帰してもその影響を受ければ即座に生徒への被害は拡大すると判断した」
「わかりました。今はそれで納得します」
「勇気っ!? この人の今の言葉は決して納得できる言葉じゃない。ただの怠慢よ。私たちを利用したかったからともとれる発言なのに」
「でも、彼女のいうようにあの装置は僕じゃなきゃ壊せないような波動があった。それは事実だし危険性もあったのもまた事実です。だから、納得します」
「でも、だとしても私は最初から説明してほしかった! 第一、勇気は右腕を失ったのよ!」
先ほどの死闘で失った右腕。
それは死闘がどれほどに苛烈であったかを語る。
「確かにそれについては申し訳ない。今すぐにその手を治そう」
そういうと風見は落ちていた勇気の手をひろう。勇気へと近づくと切断面に合わせるように手をつなぎ合わせ、何かの呪文を唱えた。
「これでどうだろう?」
勇気は右腕の感触を確かめるように手を動かした。
違和感もなくくっついていた。
「違和感もない。何をしたんですか?」
「一種の魔術さ。でも、安心してくれ。私は魔術は使えても魔女じゃない」
彼女はいって胸元の第一ボタンをはずした少し小さな谷間を見せるとそこには十字架のようなあざがあった。わざと自らつけたと思われる痣。
魔女でも十字架には触れることはできるがこの場合の行動は悪魔になりうる可能性の低さを示した行動なのだろう。
「魔女じゃなくても確かに魔術は使えますからね。でも、腕を治したからといっても先輩を100パーセントは信用はしません。今回も自分たちを助けた一環だったにしてもです」
「まぁ、だろうね。なら、他にも私が得た情報を提供しよう」
「ほかにも?」
「そうだね、まずはアスモデウスは今この学園の誰かになっているということ」
勇気は強く反応を示してすぐに彼女の襟首をつかんだ。
「誰かってのは誰ですか! やはりハーシアなのか!」
「落ち着くんだ。彼女は違う。シスターはただの側近の悪魔。連絡役になっている」
「連絡役ということは学園長のほうですか?」」
「それが違った。私も先ほど彼女に会いいくつか言葉を交わして分かったが彼女はアスモデウスではない」
「じゃあ、いったい誰が……」
「学園の生徒のだれかだと判明した。その人物は教会と昔から縁があるかもしれない」
「っ。その推理は間違いないんですか?」
「おおよそ、当たっていると思う」
「そう思う根拠が何かあったというわけですか?」
「活動を自由にできるのは生徒以外にいないからとハーシア教諭と学園長の管理しているのならばその仲間なら生徒でもいくらでも行動は聞くと思ったからだ」
勇気は彼女の言葉を聞いて黙り込む。
「わるいけど、そうだとしても私はもうこの件にかかわりたくないわ。いいえ、勇気をかかわらせたくない」
「アリスさん?」
「あの時の彼女たちはまるでここにはほかにも超越者がいるような言い方をしていたわ。それにこの学園自体が今はアスモデウスによっての鳥かごにされてる可能性もあるような言い回しを私は感じたの」
「鳥かご? まってください。じゃあ、なんで源蔵さんはそんな場所に俺とアリスさんを入れて調査なんて……」
「それは……」
「まさか……あのくそおやじ!」
アリスは言いよどんだ。
勇気はその時点で察した。
アリスがすかさず勇気の手を引っ張りはじめた。
「勇気もうこの学園にいる意味はない。お父様とも縁を切りましょう。それで、遠いどこかの地に一緒に暮らせばいい」
「アリスさん何を言いだしているんですか?」
「お父様は私たちを餌にしてアスモデウスを退治しようとしているのがわかったのよ。それにこの学園自体が勇気みたいな子たちを実際は集めていたことだって」
気づいたことはまさにそのようなおぞましいものだった。
教会は知っていたからこそ、あえて勇気をその渦中に入れることで状況をかき乱そうとした悪手に出たのだ。
「あの人が昔から手段を択ばない人だって知っていたのに」
アリスは怒り気味にその場から出ようとしたがその行く手を素早く回り込んだ風見が立ちふさがった。
「お二人とも待て。今、学園から去られたらアスモデウスに感づかれる。それだけは避けたい」
「そんなの知らない。私たちはハンターでも一人の人間。勝手に人の命を餌にしないでほしいわ」
「怒るのはわかるぞ。だが、ここで抜ければ余計にアスモデウスも何をするかわからない。もしかしたら、教会そのものを破壊する可能性だってあるのだ」
「そんなの知らないわ」
アリスの怒りは怒髪天をつく勢いだった。
その怒りはもっともだった。
「アリスさん、落ち着いてください。もしかしたら、こうして仲間割れさせたりすることもアスモデウスの策略になってるかもしれないです」
「勇気?」
「風見先輩、他に情報を聞かせてください。さっき、ハーシアが側近で連絡役って言いましたよね? でも、他にもいるんじゃないですかそういう人が」
「いるかもしれないがだれかはわかっていない」
勇気の脳裏にはそのいるとわかっただけでも一人がすぐに思い浮かんでいた。
このような状況でも変に騒々しくさせなくさせる立場にある人物以外にあり得ないと思えた。
「風見先輩、質問いいですか?」
「なんだい?」
「超越者って何ですか? 白峰カータレットと木島は言ってました。超越者って」
「超越者か。これについて分かったことはこの超越者は超能力に目覚めている人たちを指す子供たちとしか判明していない。その超越者に対してはアスモデウスが何らかの形で接触を図っている。一部には何か誘惑的言葉でかどわかし超越者をあおり、超越者同士で争わせてるような節がある」
その言葉を聞いてすべてが納得いった。
「源蔵さんはこのことを知ったから僕をこの場に任務という表向きな嘘で入れた可能性が高いですよね。もしかしたら源蔵さんはそれを利用して俺の能力でアスモデウスを殺させようとしていた可能性だってある。そもそも、この能力について一番知っているのは敵なんだ」
勇気は自らの両手を見ながら壁に向かい手をかざした。
一瞬で壁がべこっとへこんだ。
「ゆ、勇気、能力をうまく扱えるようになったの?」
「いいえ、まだ完ぺきとまではいきません。でも、少しだけコツはつかんでいますけど、これで源蔵さんたちはアスモデウスを殺させようとしたんです」
確かにすごい力だけれども、これは結局は悪魔に起因したものだとするならばむやみやたらに扱ってはならない力な気がした。
「アリスさん、ごめんなさい」
勇気は彼女の手を握り返して誤りを最初に口にした。
「なんで、勇気が謝るの?」
「僕はこの利用したことについては正直怒っていないんです。僕が怒っているのは、源蔵さんはアリスさんは僕がこの場所から逃げないための材料にされたことに一番怒ってるんです。僕がいなければあなたはこんな危険なことに巻き込まれはしなかった」
「勇気、謝ることない! そんなの全部あの人が悪いこと! だから、ね、どこか別の場所へもう逃げよう」
「アリスさん、謝罪はそれ以外にもあるんです」
謝ったことはそれ以外もあった。
「僕はこの場所が危険でも逃げることはできない。僕にとって復讐は今果たせそうな状況で逃げれないんです」
アリスは数旬後、発狂し拳銃をりだすと天井へと数発撃ちその場から走り去るように去っていった。
「あ、アリスさん!?」
「あ、勇気さん。待って。まだ復帰後の話が」
「今はそんな暇ないです。また後で連絡ください」
勇気は今は当面の目標が目の前の彼女以外で頭はいっぱいだった。
今の言葉で彼女が錯乱して何かを起こさないとも限らない思い、勇気もその場を後にするように出口に向かい走りだした。




