第17話 誘導先の闇
風見先輩から渡された情報を元に例の『兵装』システムのある場所を示したところへ向かう。ルートマッピングアプリを使い、勇気たちはどうにか学園の裏側の敷地であるフェンスによって仕切られた誰も使用していない森林地帯の出入り口に到着した。
「これがマップで指示された道ってわけ。ここって学園の裏道じゃない」
フェンスに仕切られた森林地帯のこの区画は政府が管理している重要施設であり、学園の裏だった。わざわざ敵地に誘導されていることに疑心暗鬼感が生まれると、都合のいいタイミングで通知には木を隠すなら森の中ということわざのメッセージが送られてくる。
「なるほど、政府とかの目を欺くには都合の良い場所ってわけ。確かに政府も自分の領地に潜んでるとは思わないか」
「この先に進めって指示出ています」
「それなら進みましょう。でも、この先って」
道を見るとそれは下りになっていて、地下施設へ行くような道になっていた。
下り道をどうにか下り、たどり着いて早々に勇気たちは衝撃の人物をそこで目撃する。
「え、あれ? 誰かあそこにいる?」
施設の中に入って早々に二人の人影を目撃する。
施設内の暗がりのせいでうまくだれか判別が難しかった。
その二人は施設の中央に立つと、急に施設内に明かりがともって二人の生徒をみておもわず、勇気とアリスは息をのんだ。その二人はあまりにも予想外な人物だったからだ。
二人は、その姿を光に包まらせて施設の中央から消えた。
何かの転送装置によってどこかへと転送されたように見えた。
「どういうことですか!」
「つまり、例の保健室の一件ってあの二人の仕業ってこと?」
「でも、あの時ハーシア教諭もいましたから、操られている可能性だってある」
「そうね。もしかしたら共犯か。従わされているか。私としたことが全く気付かないなんて! とにかく急ぎましょう!」
アリスと勇気も急いで彼女たち二人が消えた場所へ飛び込んだ。
魔法の光に包まれて二人の視界は白に包み込まれる。
「あれ? これは驚きね」
「予想外なの」
勇気とアリスは声がして、顔を上げた。
そこには大きな球体型のフラスコに幾重ものパイプがつながった機械仕掛けの装置が存在していた。根幹にはパネルが設置されていて何かしらの役目を果たしているようだ。
「「っ!!」」
二人は少女の存在に驚いて喉を引きつらせたわけではなかった。
いや、それも一つの要因だっただろうがよりもっと強烈的なものがそこにはあった。
フラスコ内に浮かぶあらゆる骨や肉片の数々。そこからあふれ出る魔力の光を掃除機のように吸引するフラスコにつながっているパイプ。
そう、そこにはあまりにもおぞましく絶望に染めた闇が確かに存在していた。
「え、だって……え?」
アリスは激しく動揺をし、勇気も言葉を失っていた。
なぜなら、その装置の中にいた肉片となっていても顔はまだ残っていて判別できうる存在は知人で会ったからだ。
「あなた方は、ここで何やってるのですか! その人はあなた方が尊敬をしていた人でしょう!」
何かの謎の装置の贄にされていたのは香織・イーリス・フィアットその人だった。
そのほかにも何か複数の人間を材料にした痕跡も見受けらえた。
今の状況はこの二人が装置を動かし、手を加えてそうしたとしか思えない。
その装置で何をしようとしているのかを今は問い詰める必要があるのだろう。
緊張が走り、冷や汗が流れた。
装置のそばに堂々として居座る二人。木島リンフォルトと白峰カータレットだ。
「珍しくお客さんが来るって意外ネ」
「そもそも、ここに来られたのが意外なの。排除しちゃうの?」
「まぁ、ちょい計画には早いけど私らのためだしちょうどよいネ」
まるで何事もなかったかのように話をする二人に勇気は怖気が走る。
二人はこっちの言葉に耳など傾けず、ただもう今は自分たちを排除するってことだけに感情を優先し、殺意を向けていた。
(なんだよ、これ、この状況なんだよ!)
まるで供物のように永遠に溶かされ続けていく『香織』の死骸。さらに、まだ生きていてもがき苦しむ誰かもいた。どこのだれかはわからない。その培養液は酸なのか身体から泡立って彼の身体から血液があふれみるみる溶かされていた。さらに、装置が駆動を奏でるとどこからか飛んできたのか大きなフラスコの中にまた二人組の男女が投入される。二人は嬉々として根幹にある操作パネルを利用し何かを始めた。フラスコの中で炭酸があふれるかのように、泡立ち始めると二人の男女が徐々にその体を溶かし始めて絶叫する。
すると、その装置から二人へ何か光のようなラインがつながるように見え、二人の体から膨大に力があふれた。
「今すぐ、その装置から離れてください、木島リンフォルト、白峰カータレット」
「うざいネ」
「本当めんどくさいの。今の状況でまだ反抗的な態度をできるってすごいばかなの」
勇気は息をのんで、二人にナイフの切っ先を向けた。
手を何かに弾かれ、手に持っていたナイフはあらぬ方向へと飛ばされる。
「今の魔法? いや、今の僕と同じ力?」
「まったく、鈍すぎなの」
「うちらは同種ってわかんないの。あ、そうかうちらと違ってアスモデウス様の恩恵をしっかり受けていないとかなの?」
「アスモデウスだと?」
勇気はその言葉を聞いた瞬間に怒りは有頂天に達して、地を蹴って突っ込んでいた。
後ろからアリスの決死の休止のような言葉が聞こえていたがかまわず拳を突き出していた。
次の時に、血しぶきが舞う。
それは勇気の腕からだった。
「ぁああっ!」
勇気の右腕は上腕部から先が何かに切られたように切断されていた。
「勇気っ!」
アリスは慌てて勇気のそばに寄り添い、止血に協力した。
彼を抱えて急いで彼女たちから距離をとる。
「あなたたちは何者ですか?」
二人は面倒そうに目を細めて、装置を指さした。
「わからない? 今実演して見せたのネ?」
「勇気と同じ超能力者?」
「あはははっ、超能力者? 違うネ。そんなエスパー後時と同じにしないでほしいネ。私たちは選ばれし者」
「そうなの。アスモデウス様から恩恵を授かった選ばれた人」
「アスモデウスの恩恵? 何を言っているの?」
「ただのハンターのあなたにはわかるはずないネ。これは恩恵を受けたものにしかわからない。中には未熟な恩恵者もいるからこそ、アスモデウス様の助言の通りに殺し合いをしつづけているだけ」
突然と余計な情報までを語る白峰に木島が肘鉄を食らわず。
「相変わらず調子乗るとすぐにしゃべりすぎなの。殺すのよ?」
「あれ? 私たちは運命共同体ネ?」
二人の間にとてつもない殺気がばちばちと漂う。
数旬の間で何かを分かりあったように鼻息をならす。
「その装置からあなたたちにエネルギーを送っているように見えるのは気のせい?」
「見る目はあるの。ただのハンターのわりに。ご明察なの。この装置は私たちが捕虜にした未熟な超越者を供物として捧げている優秀な学園の監視システムなの。これを使って超越者たちのあらゆる情報を私たちに送信してるなの」
「超越者たちの情報? 送信?」
まるで見当のつかない会話だけを永遠と続ける二人。
ますます状況の理解についていかない。
「アリス姉さん、さっきからなんとなくだけどわかります。さっきから肌に何か伝わってくる波長のようなものがあります」
失った腕をおさえながら冷や汗をどっとあふれ流して歯を食いしばり立ち上がる。
「彼女たちが言う超越者ってのはたぶん、アスモデウスから何か見初められた俺やその他にもいた人たちのことなんじゃないかって思います」
「それって、じゃあその言葉からいうと彼女たちは自分たちと同じ人を生贄にして自分たちが強くなろうとしているってこと?」
「理由はわかりませんけど、そうだと思います。あの装置からも自分の肌に何か伝わる嫌な空気があります」
「ちょっと、勇気顔色悪いわよっ? 平気?」
「なんかやばいかもです。さっきからあの装置に何か意識を持っていかれそうになっています」
アリスは慌てて装置に目を向けて、腰のホルスターから隠し持っていた拳銃を引き抜いた。
「おや、それで破壊しようって魂胆ネ?」
「無茶はやめたほうが身のためなの」
見るにおぞましい悪魔の装置を放っておけるはずもない。
アリスは拳銃の引き金を引いた。
弾丸は発射されたが装置に当たる手前で跳ね返り、アリスの足を跳弾が射抜いた。
「あぁあああっ!」
「だからいったなの」
「自業自得ネ」
アリスは顔を上げると苦しみ叫んで走り出した。
そのアリスに対抗して木島が何かの武器を取り出した。
それは円状の刀。鉄扇というべきか。アリスは隠し持っていた短刀で彼女と相対しようとしたが木島の持つ武器がアリスの短刀をまるで吸収するように叩き砕いた。
アリスはあっけなく粉砕された武器に驚愕し、次の時がら空きとなった腹に強烈な蹴りを食らいアリスは吹き飛んだ。
「アリスッ!」
勇気は飛んできたアリスを抱き留める。
「ねぇ、侵入者さん。正直邪魔だからそろそろこの場から消えてくれるネ? 消えたら見逃してあげるネ」
「っ!」
勇気は今この状況を前にすれば引くことが負けを認めるとわかっていた。だが、勝てないのもまた事実だと受け止めざる得ない状況も理解していた。
それほどまでに彼女には勝てないと判断するしかない。
しかし、ここでこの装置を見捨てることで今後も彼女たちはよからぬことを繰り返すことだろう。
(先輩はシステムの実態を知っていたはず。なのに壊さなかったのはなぜだ?)
勇気は考える。
利用をするためだったのか、もしくは壊せなかったのか。
(壊せなかったと考えるべきでしょうか。先ほどの弾丸で跳ね返ったのを見ると、僕と同じ念動力が働いている。風見先輩はこの装置を壊す方法をただ一つ知っていたからこの件もお願いしたとみるべきでしょうか)
深い考えに至っていく。
勇気は倒れているアリスを見た。アリスはまだ意識を保っていて顔を上げ、薄く微笑む。
「勇気、あれを破壊しないとだめ。あれは多くの人を殺す! そのうち、勇気も殺す! もしかしたら、名倉さんだってあの二人に装置のために殺された可能性だってある」
懸命の彼女の言葉に勇気は大いに同意だった。
「だけど、アリスさん。俺はあの力を今はまだうまく扱えない」
「勇気、あなたにならできる! もう一度あれを起こすの」
「っ!?」
とんでもない彼女の信頼する発言に、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
彼女もまた装置の破壊方法には気づいていた。
あれ以降まともに発動してきておらず、練習目的として入学した学園でも一度として発動をしなかった。
「アリスさん、無理ですよ。あの時以来何もしてこなかった。そんな僕に何かできるとは思えません」
「勇気! 自信をもって! 勇気ならできるわ」
勇気はアリスの言葉に気力をもち立ち上がって、駆け出した。
アリスから拳銃を受けもらい左手に握り駆け出す。
銃弾を装置に向けて撃ち込んだ。
「甘いネっ!」
白峰カータレットが発狂して威張ったが、勇気の放った銃弾は装置ではなく背後の木島だった。
「あぐぅ」
「き、きじまぁああ!」
仲間が撃たれたことで激高した白峰カータレットが『兵装』を呼び出して、手に白い錫杖が生み出された。
錫杖の柄を地面にたたきつけた途端、周辺一帯を吹雪が吹く。
それも打算だったのだろう。
アリスがいつのまにか白峰カータレットの背後を先回りしていた。そのまま押し倒すと彼女を襲撃する。
彼女は蹴りを放ってアリスから距離をとって向き合う。勇気は今度こそ拳銃を装置へとむけて人質のようにする。
「形勢逆転ね」
「おとなしくしていてください。あなたの負けです」
「あははっ、私はあの優秀な香織・イーリス・フィアットを倒した超越者白峰カータレットネ! わたしをなめるなッ!」
彼女が指を鳴らした瞬間、勇気の体を氷化が始まる。
「くそっ! ぐぅぁ!」
勇気は氷漬けにされてしまい、その体は見て聞こえるがまるで世界と隔絶されたような状態に陥った。
アリスだけは難を逃れ、彼女の眼前にまで迫っていた。
もう一つ隠し持っていた短剣を彼女の喉元めがけて突き刺した。
「ァっ」
「経験値がたりないのよ、超越者さん」




