第13話 寮
名倉佳奈美の訓練を見た後、学校が全寮制であるために学校側から指示されていた寮へと来ていた。
その寮は見るからに見た目が悪かった。まるで人が住んでるとは思えないような外観をしている。
ここの寮を勇気は知っていた。
なぜならば、潜入前に学園で起こった失踪事件の原因となった場所の発端の一つがここであるからだった。
「あの、ここっていわく付きの寮では?」
「何を言ってるのかわかりかねるんだけど。ここはいたって普通のアパート。ここは数年間手入れをしていないからあちこち方が来ているだけネ」
「えぇ………でも、見るからに……ポルターガイストとか失踪者とかいないですか?」
「起こったところで学生なら対処して当然ネ。第一、あなたのような罪人にはお似合いの寮ね。ここはあなたと同類しかいない寮ネ」
勇気の背中を押してさっさと行くように強引に歩みを進まされる。
「同類?」
「そうなの、ここはあんたのような停学処分や厳重注意を受けた問題児をあつめた男子寮なの。まぁ、でも今はあんたしかここにはいないようなものネ」
「俺しかいないとは?」
「それはここにいる生徒は全員失踪したからに決まってるネ」
「やはり、失踪者がいるんじゃないですか」
「そんなお知らないネ」
その言葉だけ聞くとますますいわく付きではないかという言葉が喉元まで出かかった。
その言葉をいわず、あえて飲み込み素直に寮まで歩みを進めた。
寮の入り口で一人の女性が立っていた。
「じゃあ、先生あとは任せるネ」
「シスターハーシア、何かあればご連絡をくださいなの。すぐさま救出に向かわせていただくの」
「大丈夫、私も先生だから何か起こっても自分で対処できるデス」
寮の出入り口で待っていたのは勇気の監督者に任命をされていたもう一人で唯一の教員。
ハーシア教諭だった。
二人の会話から勇気は察する。この後はハーシアが自分の監視をするのだと。
「ここでの生活においては私が監督を任されておりますデス。なので基本的には私の指示したルールに従ってもらいますデス」
厳しい言葉遣いだが温和な声がミスマッチでどうにも迫力にはかけた。
だが、勇気は彼女を終始にらみつける。
彼女の目を一度見ていた。
あの悪魔の素顔を見せた彼女を。
「では、さっそく、まずはこちらがポストになります。星城くんは406号室ですのでこのポストになりますデス」
彼女が指示をした場所に406と書かれた集合ポストの一つがあった。
その406のポストを開けて中から鍵を取り出す。
「これが星城くんの部屋の鍵デス」
彼女から鍵を手渡され受け取ると即座に一定の距離をとった。
「では、部屋に向かいながらルールを説明しますデス」
勇気は警戒をしながら慎重に彼女の後についていく。
彼女は勇気の中では悪魔である可能性の最重要候補であるため気が抜けない。
「――あるからして、外出時は定められており破った際には処罰が厳しく課せられますデス。って、星城さん聞いていますデスか?」
「あ、ああ、はい」
変に気を張っていたせいで大部分を聞き逃していた。
だが、勇気はこの教諭の言葉一つ一つに信頼などみじんもなかったので聞き流した。
「それで、ここが星城くんの部屋、406号室です。シャワーとトイレは部屋にそれぞれありますので。それと、外出は基本何かの用事がない限りは外出は原則19時以降は禁止デス。外出する際は先生への報告は必須デス。食事の時間などは絶対厳守なので忘れずに。忘れた場合にはいらないと判断しますので。では」
と彼女は勇気にすべての説明は終わりとばかりに部屋にあとはと放置した。
勇気は自らの自室を確認し始めた。
「見た目とは裏腹に部屋はそこそこ広めですね」
小綺麗な1DKの部屋だった。
洋室6帖にDK4.4帖くらいの広さがあり少しばかりほっとした。
寝床に問題はなく、学校からの支給物なのか新品の布団類が置かれていた。
「テレビなどはなしですね。まぁ、それはどうにか自らで買うしかないとして」
天井の隅をみたり、備え付けのエアコンなどを視認する。
「なるほど、監視カメラが複数設置されていますか。こればかりは仕方ないというべきですか」
洋室の確認を済ませ、ダイニングキッチン側に移動をする。学校備品らしき冷蔵庫などはあり、そこに安心感があった。
風呂場の戸を開けて中を確認するとそこにだけはやはり何もなかった。
「これだけ監視カメラがある中で生徒の失踪の原因が特定できていない?」
勇気は先ほど聞いた言葉を考えながら、例のアリスから聞いた資料を頭の中で思い起こしながら考え込んだ。
「やはり、ここの管理人をしているハーシア先生はかなり怪しすぎます。それに香織さんが死亡したのを目撃したという二人の言葉。それも真実なのかどうか。それに白峰さんのあの呪い」
勇気は先ほどに腕に施された呪いについて考えた。
あれは『魔女』にしかできないような『呪い』である。
それを扱えるとなれば彼女の存在も怪しいことなかった。
「実は都合よくこの場所に入れられたのではなかろうか?」
とりあえずと風呂場に入って周囲を観察しながら扉を閉める。
腕時計で時刻を確認する。
「あと、2時間後には移動しないとまずいですかね。まあ、来てくださればいいですけど」
勇気は数時間前に接触した名倉佳奈美との出来事を思い出していた。
あの時に渡した手紙には勇気は落ち合う約束を取り付けるメモを渡していたのだ。
名倉佳奈美自身のことも知っていると書いた詳細と共に。
「これで来なければあきらめるしかないでしょう」
勇気は風呂の戸を開けて、足が硬直した。
ダイニングに一瞬だけ何かの人影が見えた気がしたのだ。
慌てて、懐に忍ばせてるナイフを持ってダイニングへと。
「だれだ!」
背後のクローゼットに気づいて強引に開ける。
中には誰もいなかった。
だが、足元に何かが落ちているのに気づく。
「ん?」
何かのシミでできた紙。
何も書かれてはおらず、クローゼットの中を確認したいと思い、腕時計に備え付けられたライトで中を照らすと中には衝撃的なものがあった。
血のシミがあちこちにあり、クローゼットの上に無数のシミでできた紙とまるで封印された魚うな屋根裏などないはずの奇妙な扉。
あまりのおぞましさに生唾を飲み込み、改めてここがどういう学校かを思い知らされた。
「これが失踪事件の真相とかじゃないですよね?」
失踪事件の真相は幽霊の仕業なんてことがありうるだろうかとも考えたがそうしたら、香織が失踪か殺されたか定かでないにしても接点となることがない。
今は情報が少ないので情報を集めるためにもとかばんを手に取る。
「とりあえず、早めに合流地点に向かいましょう。ただ、どうやってばれずに外出するかですが……あの方法があるか」、
勇気は自らのカバンを見て義父からと緊急にと渡されたあるものを思い出していた。
かばんを持ってさっそく、風呂場のほうに移動する。
「回収されていませんように」
願いながらかばんに細工をしていた中の刺繍をほどく。
そこから、小型の機器のようなものが出てくる。
見た目はただの音楽プレーヤーだが、その見た目とは裏腹にれっきとした携帯電話だった。
さっそく、ある人物へとメールをした。
同時に携帯を操作し、風呂から出て、ダイニングに設置された監視カメラ前にて手を振った。
同時に自らの学生証に紐づいてされてるGPS情報をごまかせたことを緊急端末で確認した。
電子ハックが無事にできたのだとわかる。
「大丈夫そうですね。さっそく行きますか」
勇気は携帯をポケットに忍ばせ、鍵をもってさっそく外に出る。
周囲を見ても、例の監督官であるハーシア教諭の存在が確認できなかった。
「本当にあの人いるのか? まぁ今はいないほうが都合がいいからいいけど」
勇気は周囲にいないことを確定的に把握し、門限破りを始めたのだった。




