彼はおそらく、私が彼を好きなほど、私を好きではない・10
DP01-BS10
ううっ、死にたい……。
今、私はトイレ付きのお風呂場の中にいる。
考えてみればここでも良かったのでは、とも思ったが、拷問室からお風呂場まで結構距離があったものね、移動している間に合わなかったかもしれないかぁ……。
レイナ(あれだけの体験を共にして、他人行儀もないだろう)が熱いシャワーを私にかけておしりを重点的に洗ってくれている。
その後、張られた湯船にレイナと共に浸かる。
今、私の手足は感覚が無いので、そのまま入ると溺れてしまう。
だからレイナが先に入って支えてもらう必要がある。
はふぅぅ。
湯のあたたかさがじんわりと私の身体に染み込んでくる。
湯船に浸かってはじめて知った。
私、ずいぶん冷え切っていたんだな。
今までは男の人たちが周りにいたから、緊張して気にならなかっただけだったんだな……。
あのあと私は、レイナに抱え上げられ、私の胃の内容物が入った金属バケツの上で静止する。
両膝を抱え上げられ、親が幼子にしーしーさせる格好だ。
一応の配慮として、レイナと私はタイル張りの壁側を向いていて。
メガネは後ろを向いている。
ううっ、メガネェ……。
後ろを向くぐらいなら、出て行ってよ……。
本当にこの人は配慮が足りない。
ガラスの向こうから覗いていた人を追い払ってくれたのは助かったけど。
覗いていたのは「サガサン」という人らしい。
覚えておこう。
ああ、お腹がゴロゴロする。
そしてその時は来た。
一瞬の我慢も利かずに決壊した。
「今度は水だけをおしりの穴から入れれば、腸の中まで綺麗になりますよ」
「いや、それはダメだ、無駄に体力を奪ってしまう」
-「風呂が用意されている筈だからそちらを使ってくれ」
助かったよ、メガネ。
レイナは少し常識に欠けるところがあるよね。
メガネは汚物の処理を買って出てくれた。
ううっ、それもレイナに一任したかったが、彼女には私の世話があるから仕方ないのかな…。
私とレイナは併設された風呂場へと直行する。
メガネはホースの水で床を流した後、バケツを持ってどこかへ行く。
レイナがどこへ行くのかと訊くと、別の場所にもトイレがあるのでそちらで処理するとのことだ。
ふぅ
……あらためてじっくり見ると、このお風呂場、普通じゃないんだよね。
壁がガラス張りになっていて外からも見えるようになっているし、床も透明で、湯船の底から下が見える。
下の階は寝室のようで大きめベッドが並んでいる。
今、そこに服を着たメガネがいる。
彼はこちらを見ようとはせず、周囲を警戒してくれているようだ。
「サガサン」が再びうろうろしていたのでメガネが追い払ってくれたのだ。
メガネは、配慮は足りないかもしれないが常識人なのだ。
ちゃぷん
湯船の中でレイナが感覚の無い私の手足を擦ってくれている。
レイナの視線が優しい。
もう覚えてないけど、おかあさんってこんな感じだったかな……。
コンコン
ドアが叩かれた。
このお風呂場にはドアが二つあり、拷問室側ではない方のドアだ。
「村澤です、どうなさいましたか? 」
「もうすぐヘリが到着します、お急ぎください」
「承知しました、すぐに身支度を致しますのでお待ちください」
お風呂場から出る前にレイナが奇妙な行動を取る。
シャワーの頭でガラス張りの壁を叩く。
ごごん、ごごごん
なにをやっているのだろう?
するとメガネがこちらを振り向かずに、寝室を出て行こうと歩き始めた。
なるほど。
こちらを見なくても、お風呂終了を知らせるための合図か。
めずらしく配慮してくれたみたい。
まあ、レイナの発案かもしれないけど。
レイナは私の身体を拭き、手際よく服を着せてくれる。
これは、さっきまで来ていた私服だわ。
レイナが確保してくれていたのね。
登場人物紹介
門倉沙耶……15歳、女性、ダンジョンパートナーNo.1。四肢が動かず、喋れない。村澤レイナに心を許しつつある。
村澤レイナ……31歳、女性、ダンジョンパートナーNo.79。轡の奴隷。轡に毒されすぎて常識の無いところがある。アブノーマルなプレイに精通している。
サガサン……34歳、男性、ダンジョンマスターNo.83。沙耶の周囲で不穏な動きを見せる。
メガネ……32歳、男性、ダンジョンマスターNo.85。配慮に欠けるが常識人。
衣笠幸四郎……27歳、ダンジョンマスターNo.77の秘書。ヘリの到着を知らせてくれた。
アルジェンヌ・ホテル会員制地下特設ルーム……一泊・税別27,8000円也。轡もよく利用する部屋。轡の趣味を遺憾なく満たす事ができる。ここで多くの奴隷を躾けてきた。宿泊料には口止め料も入っている。
ホテルだからセーフ?




