第76話 就寝前・3
D01-72
「まって、ちょっと待って」
「ん、どうしたの? 」
「草次君…、君は私のことを誤解しているわ」
-「システム上必要だから、とかそんなドライな考え方していないからね」
-「ちゃんと君のこと気にかけているから」
「それは、…ありがとう」
「私の言っていること、伝わっていないよね…」
そして沙耶さんは顔を真っ赤にして、耳まで真っ赤して言った。
「君のこと好きだって言っているの」
か、顔が熱い、なんだかこっちまで照れてしまうな。
「それで? 」
「へ? 」
「君はどう思っているの? 」
-「こっちの気持ちばっかり分析して、君がどう思っているかとか、聞いていないのだけれど…」
「オレは君のファンだよ、それではダメかな? 」
「うん、それではなんにも伝わって来ないかな」
-「ファンって言ってもいろんな人がいるわ」
-「それに私のコアなファンって、私の忘れたい記憶を、何度も再生して鑑賞するような人たちなんだよ? 」
-「しかもそれを仲間内で自慢したりするような人たちなんだよ? 」
-「だからファンと言われても、どちらかというと敬遠したいのだけれど」
「そっかー、ファンは地雷かー、…それは、ファンの人たちとは、永遠に解り合えないかもね」
「彼らのことは、今はどうでもいいの、それより君のことを聞きたいな」
-「ではまず、どのくらいのファンだったの? 」
-「私のこと、あんまり詳しくなさそうだけれど…」
「…まあ、実はファンって公言できるほどでもないんだ…」
-「にわかファンと言いますか、どの作品の何役をやっているか、とかも知らないよ」
-「最近露出するようになってきて、写真を見ていいなと思っただけだし…」
「それはそれで業腹ね」
「なんかごめんね、オレ、ゲームばっかりやっていたからさ」
「でもそれは、向こうの世界の話でしょ、こっちに来てからは、どうなの? 」
-「最初は凄くオドオドしていたよね」
「そりゃあね、女の子と接する機会なんてなかったのに、手酷く撥ねつけられたし…」
「……私の夢、見たりした? 」
「ごめん、言っている意味わかんない」
「……そう、つづけて」
「そうだね、自己紹介してから少し距離が縮まった気がするな」
「ちょっと待って、その前に君、私になにか嘘をついたでしょ」
「へ? 」
-「あったかな、そんなこと」
「うん、あのときも首に手を当てていたからね」
「うっ、そうだったかな、自分では全然気付かなかったけど」
-「ああ、だから大きい溜息をついていたのか、なんだかいたたまれなかったよ」
「その気持ち、正解よ、いたたまれないことをしたのだから」
-「それで、なんだったの、あれ? 」
-「どうせ、たいした理由なんて無いのでしょうけど」
「あの頃は沙耶さんのこと、苦手だったからね、あんまり近づいて欲しくなかった」
「それ、ショックだな」
「い、今は違うよ」
「…それで、つづけて」
「だから念じたのさ、もう少し離れて欲しいってね」
「目を瞑って? 」
「…目を瞑って」
「ハァ、迂闊モード全開か…」
「ちょっと、人の行動に変なモードを付けないでくれよ」
「偶に格好良いところもあるのだけれどね、……本当に偶にだけど」
次話、閑話。




