第71話 脱衣
D01-67
今、オレは湯殿の手前、更衣室のようなところにいる。
ヤズナと沙耶さんも一緒だ。
特にお咎めも無かったので、そのまま付いて来た感じだな。
二人とも羞恥心が薄いのか、豪快に着物を脱いでいる。
それで判明したのだが、二人とも下着を身に着けていないようだ。
こういうのを見ると、あれだな。
御輿の上での、針の筵の一時間は何だったのか、と思うな。
腕を組み、胡坐をかいたままのオレは、黙秘権を行使して、貝のように口を閉じた。
さらに途中で寝落ちしたふりまでして、沙耶さんの追及をかわしたのだが、
普通に
「今、下着履いて無いの? 」
とか、頭が湧いているようなことを訊いても、教えてくれていたのかもしれないな。
ところでヤズナだが、後ろから見た感じ、お尻の下の股間の隙間に、ブラブラした物は見当たらないんだよな。
身体と脱衣棚の隙間から覗こうとしても、大事な部分が陰になっていて、はっきりとは判らない。
そこで沙耶さんから
「なにをモタモタしているの、さっさとしなさい」
とのお叱りを受けた。
実は気付かれていないのではないか?
と冷や冷やしていたのだが、沙耶さんに認識されていることが解り、ホッとした。
とはいえ、もう一つ、脱衣を躊躇する理由があった。
実は身体の一部が言うことを聞かなくなっていて、非常に恥ずかしいのだ。
まあ、堂々と脱いでいる二人を前に、屈んだり、もじもじしたりする方が恥ずかしいので、覚悟を決めて脱ぐとしますか(克己心は使わないことにした。今使ってもすぐに言うことを聞かなくなると予測できるからな。それでは精神へのダメージばかりが積み重なってしまう)。
着物に手をかけると、
バン
と音がして、両開きの木製の引き戸が、限界まで開かれた。
シルコワが入ってきたようだ。
「なにをしているのですか、あなたたちは」
えらい剣幕だ。
ヤズナが代表して声をかける。
「湯殿に入るところです、シルコワも入りますか? 」
「そうではありません」
-「良いですか、ヤズナ様、沙耶殿? 」
二人がきょとんとした顔でシルコワを見る。
「未だ結ばれていない男女が、湯殿に一緒に入ってはいけません」
ヤズナが腕を組んで反論する。
「しかし、シルコワ、男たちの視線を気にしていたら、生活できないではないですか」
「それは戦場での話でしょう? 」
-「そのような特殊な状況を基準に考えないで下さい」
-「沙耶殿、沙耶殿はこの状況に疑問を感じなかったのですか? 」
「うーん、郷に入りては郷に従え、と言うし、こっちでは下着も身に着けないでしょ? 」
-「そういうものなのかな、と思っていたわ」
「殿方に裸を見られて、恥ずかしいとは思わないのですか? 」
「それは、幼い頃からの環境のせいかな、大勢の人に裸でいるところを見られる状況って結構あったから…」
「沙耶殿、…その他大勢と、気になる殿方との視線は、区別しなければいけませんよ」
シルコワがこちらを向いた。
ビクッ
「お気持ちは解りますが、主様、湯殿に入るのは時間をずらして下さいませ、私もお付き合いいたしますので」
ガシッとオレの手首を掴み、脱衣所から出ようとするシルコワ。
「シルコワは良いのかよ…」
「私のことは端女とお思い下さいませ」




