第70話 ダンジョン御輿・並足
D01-66
今、俺たちはダンジョン御輿に乗って「狂った騎士の屋敷」に向かっている。
といってもそれほど急ぐ必要もないので、手長猩猩たちは並足(20km/h)ほどだ。
ガルガジッタ河川敷などは、手長猩猩の戦士であっても危険な場所なので、いつもなら足早に通りすぎるそうだが、今はヤズナがいるのでその限りではない。
ログを見るとヤズナは物凄い勢いで、目に付く魔獣や水棲生物を倒しており、死骸は即収納している。
ちなみに付近の有力な亜人たちは手長猩猩と盟約を結んでいる為、手を出しては来ない。
ダンジョンコアも連れてきているので、DPの取りっぱぐれも無いのだ。
ヤズナのスキル<収納>だが、容量はともかく、内部でゆっくりとだが、時間が経過するため、先の戦いでの収納分は、沙耶さんがインベントリに格納しなおしたそうだ。
並足な分、揺れも少なく、前回のように転げ落ちないように踏ん張ったりもしないで済んだ。
しかし沙耶さんはやけにボーッとしているな。
心ここにあらず、と言った風情だ。
沙耶さんの目の前に手を翳して振って見る。
特に反応は無い。
……そういえば沙耶さんが言っていたな。
女は胸覆いをしないし、男が身に着ける物だからと下も着けないそうだ。
沙耶さんの襟元から見えるのは素肌だけ、確実とはいえないが、胸覆いは身に着けていないと思われる。
では下はどうなのか?
沙耶さんとて文明人、さすがに身に着けているだろうと予測はつくが、あるいは、とも思ってしまうのだ。
これは真相を突き止める、良い機会なのかもしれない。
事は慎重を要する、ただし大胆さも必要だ。
…………
…………
「なにをしているの? 」
沙耶さんの正面に回って、床に寝そべるオレの目と、沙耶さんの目が合った。
オレは居住まいを正し、沙耶さんの隣に回って質問する。
「沙耶さん、さっきからどうしたの、ボーッとして? 」
「クドク虫を使って、魔物を倒せるかどうかを試していたのよ」
「へー、上手く行った? 」
「ええ、問題なく倒せたわ」
-「視線が通るところならインベントリも使えるみたい」
それはかなり有益な情報かもしれない。
手の届かない物でもインベントリに格納できるわけだものな。
「それで? 」
「え? 」
「さっきは何をしていたの、私の着物の裾を覗こうとしているみたいだったけど? 」
オレは腕組みをして胡坐をかく。
よぅし、これで首に手をあてることを、封じることができたぞ。
視線を感じたのでふと見上げると、沙耶さんの赤い瞳がオレを映す。
心なし、目を細めているような……。
「聞こえなかった? 」
-「なにをしていたの? 」
やっべ、沙耶さんが納得できる理由なんて、何も思いつかないぞ。
地形についての簡単な説明は「第66話 フィールド特定・1」にあります。




