第72話 蝶を捕まえた
D01-68
ヤズナと沙耶さんが出た後、オレも風呂に入った。
シルコワの絶妙な采配により、湯上りの二人にばったり、ということもなかった。
シルコワは湯着と言ったらいいのだろうか、白い着物のようなものを身に着けている。
動きやすいように、ということなのか、袖は短く裾も短い、湯がかかると色々透けて見える代物だった。
彼女は植物の繊維で出来たタワシのようなものに、植物性の石鹸水のようなものをかけて、身体を洗ってくれたり、手桶で湯を身体に流してくれたりと甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
ただ、妙に視線を外すのが上手いというか、いつの間にか死角にいるというか。
シルコワを目で探してみても、自然に彼女以外の場所に目を向けているんだよな。
…………
気が付けば背後からシルコワを抱きしめていた。
他意は無い。
シルコワの気配が希薄に感じたので、確かめてみたくなっただけだ。
いや、全く無いとは言えないかもな。
ダンジョンルームにシルコワが入ってきた時に、息を整えようとして屈んだ彼女に女を感じた、というのもあるのかもしれない。
「あ、主様…………その……」
シルコワの声色が湿ってきたような気がする。
これは偶然だが、オレの右手はシルコワの襟元に入り込んでおり、女性らしい膨らみに手をかけていた。
彼女のうなじが赤くなってきているのが判る。
「あ」
オレはそそくさとシルコワから離れた。
手桶で下半身を重点的に洗った後、湯船に身を沈める。
なぜ、シルコワから離れたか、そこは察してくれ。
背後からシルコワの熱い視線を感じたが、頑なに顔を逸らし続けた。
しばらく経ち、身体が火照ってきたので、シルコワに声を掛ける。
「そろそろ出るから準備をしておいてくれるか? 」
シルコワは少し諦めたような声で
「承知致しました」
と言い、湯殿を出て行った。
オレが風呂から上がると、いつものシルコワが待機しており、吸水性の高い布で全身を拭いてくれた。
その後は魔法で浄化した下帯を締めてくれた。
この感覚、やはり丁度良いな。
シルコワが世話をしてくれている間、オレはといえば、克己心を二度使い、何をとは言わないが、いろいろなものを殊更刺激しないように務めた。
ふう、なんだか疲れたな。
薄氷の生還




