第56話 ダンジョン御輿
D01-52
気がつくとオレは沙耶さんと輿のようなものに乗せられていた。
手長猩猩たちが担いでくれているらしいが、揺れ幅が結構あり、転がり落ちないように、足を投げ出し、両手を斜め後方に当てて身体を支えている。
あっ、ヤバイ、忘れていた。
ダンジョンコアは今どこにいるんだ?
ちゃんと付いて来ているのだろうな?
ゴツッ、後頭部に硬いものが触れた。
そこかぁ~、もう少し、ソフトに存在を示してくれよな。
左側には沙耶さんが居り、オレと同じ体勢で身体を支えている。
その沙耶さんの左手にオレの右手が重なっていた。
そう、あれから、なんとなく手を離しづらくてここまで来ていた。
オレは沙耶さんの横顔をじっと見る。
ここにはヤズナやシルコワの目がないので見放題だ。
いくら見つめていても飽きない。
沙耶さんは頑なにこちらを見ようとはしない。
オレの吐息が沙耶さんの髪を揺らした。
「草次君、…近い」
まあ、そうだよね。
沙耶さんから離れようとする。
手も離そうとしたが、今度は沙耶さんから指と指の間に指を挟む形で手を組み、引き寄せられた。
「草次君、私、昔いろいろあって男の人が少し苦手なの」
-「だから少し時間が欲しい」
そう言って組んでいた手を離した。
オレは彼女から少し離れ、天井の方を見上げながら声をかける。
「ヤズナに、何か言われていたのなら…」
「ヤズナは自分の幸せを犠牲にしてでも、私のことや草次君のことを考えてくれているわ」
-「シルコワもだけど、彼女達は親身になって色々と助言をくれているの」
「だからといって、その信頼や期待が重荷になることはある」
-「まあ、オレも、暴走しちゃうところはあるから、偉そうなことは言えないけど、自分の心を置き去りにしてまで身を捧げようとしてくれなくてもいいよ」
-「もっと気楽にいこうよ、そういう意味では、オレを見習ってくれてもいいよ」
「フフッ、草次君を見習ったらすぐ死んじゃいそう」
「あ、ひどっ」
「でも、草次君がクドク虫にやられて倒れた時、HPを回復しても体調を崩して意識を失った時、物凄く寂しかったわ」
-「ああ、この世界で独りぼっちになってしまうのかなって思った」
-「そして草次君が死んだら、私も死ぬことを思い出して、…少し安心したわ」
気付けばオレは土下座していた。
「沙耶さん、ごめん、ほんと、ごめん」
-「次からはなんて、甘ったれた言い方かもしれないけど、次からは君を独りにしないように、慎重に慎重を重ねて日々を過ごすことを誓うよ」
沙耶さんがオレの頬に触れてくる。
「無理しなくていいよ、と言いたいところだけど、君は迂闊だからそのくらいの方が良いのかしら…」
-「ヤズナもシルコワもついてきてくれている」
-「それに次に何かあっても、今度もまた君を護るからね」




