第54話 熟練の技
D01-50
シルコワに灰色のタオルケットのようなものを渡された。
オレは意味が解らずじっと見る。
しっかりとした布だが意外に手触りはよく、きめ細かい。
固まっていると
「未使用の物ですから、心配ありませんよ」
と言われた。
えっ、未使用だから、心配ない?
トイレットペーパーのようなものなのか?
使い捨てにするには手が込んでいる代物にも見えるが。
解らないので訊いてみた。
「下帯です」
とのことだ。
なんだ、パンツか。
でもどうやって使うんだ?
スカートみたいに巻くのか?
「使い方が解らない」
と言ってみると着けてもらえることになった。
まず横に二つ折にし、下腹部のすぐ上あたりに巻いていく。
そして……、ああ、駄目だ。
仕草が流麗すぎて、途中で手順が解らなくなってしまった。
なんというか巻き慣れているよね、熟練の技というか…。
だが調子は良い。
股下に一本だけ通っているのだが、途中で二つ折を開いているらしく、なにがとは言わないが、おさまりが良い。
上は着物のようなものを着せられた。
前の家主が置いていった物だそうだ。
手長猩猩は基本裸族なので今はこれしかないらしい。
別に最初に着ていた服でもいいんだけどな。
それとなく言ってみたが、遺漏なく最後まで歓待させてほしいと懇願された。
歓待の途中でオレが倒れたというのもあるだろう。想定外のことが起きたからと言っても、それも主催者側の責任になるということなのかな?
シルコワも大変だな、と思いつつ受け入れた。
ちなみに最初の服は下着共々、ベッドの枕元に畳んで置いてあったので、インベントリに入れておいた。
再び魔法で浄化してくれたようで、清潔になっていた。
寝室を出て、風呂上りの沙耶さんとヤズナの二人に合流した。
ヤズナはいつもの格好だが、沙耶さんは着物姿だった。
身に着けている物がシルコワに似ている。シルコワは赤茶色の着物だが、沙耶さんの物は、もう少し明るい色の着物だ。
二人の姿だが、ヤズナは余計なことを考える暇もなく綺麗だ。
沙耶さんに至っては…、なんというか、油断したというか、一度見てしまうと目が離せないというか。
しばらくそうしていると、そっと背中を押す手があった。
シルコワだ。
沙耶さんたちの側まで移動する。
気を取り直してオレは沙耶さんに声をかけた。
「沙耶さん、さっきはごめん」
「うん」
沙耶さんはオレの謝罪を受け入れてくれた。
沙耶さんが悪戯っぽくオレに話しかける。
「どうしたの、固まっちゃって、見惚れちゃった? 」
「なんというか、ナマメカシイなって…」
「フフッ、それ、褒めてないよね」
少し沙耶さんとの距離が近くなった気がするな。
「ねぇ、手、握っていい? 」
「いいよ」
許可を得て沙耶さんの手を握る。
オレの手にすっぽりはまる小さい手だ。
風呂上りのせいか熱が伝わる。
「その、…言われ慣れているかもしれないけど、綺麗だと思った」
「草次君に言われると新鮮だな」




