第53話 克己心
D01-49
ちゃぷちゃぷ、
オレは今、ベッドの端に座って、シルコワに身体を拭われている。
き、気まずい……。
なぜなら、何も身に着けておらず、一部、屹立しているからだ。
シルコワの傍には平たい木製の桶があり、湯が張ってある。
この湯はシルコワが魔法で出したもののようだ。
空だった木桶に、いつのまにか水が湛えられ、湯気が立っていた。
宴会の時に使った焼石のようなものを使わないのだなとも思ったが、よく考えてみれば、シルコワのような美人眷属のたおやかな繊指とはいえ、いきなりスープに突っ込まれたら、食欲も無くなるよなと、思い直した。
手馴れているのか、効率よく汗を拭い、湯で濡らした布巾で身を清めてくれている。
でも流石にお尻は自分で拭かなきゃな。
と思っていたが、シルコワがオレの身体のどこかに力を込めると、自然にオレの腰が浮き上がり、サッと尻汗まで拭いてくれた。
全身をあらかた拭いてくれたようだ。
するとシルコワがおずおずと上目づかいでオレを見上げてくる。
「あの、お慰め致しましょうか? 」
「いや、遠慮してくれ」
猿の尻は赤いというが、そういえば手長猩猩の尻はそうでもなかった。
小柄な手長猩猩を尻は白、といっても純白ではなく、黄色味がかった白色(クリーム色というべきかな)であり、大柄な手長猩猩の尻は内出血した後みたいな色をしていたな。
これは新しい発見かもしれない。
おそらく雌の尻がクリーム色で、雄の尻がずずぐろい赤紫だか青紫だかなのだろう。
…………よし、萎えた。
「おおぅ、これは、……なんという克己心、おみそれしました」
なぜかシルコワの感銘を受けた。
フッ、学生スキルがこんなところで役に立つとはな。
元の世界の人間なら解るだろうが、周囲に目がある状況で日常生活を送るなら、いかなる理由があろうとも、どうしても、なにがなんでも、股間を膨らましていてはいけない瞬間がある。
そういった場合のために、萎えるネタは二つか三つ用意しておくものなのだ。
例を挙げると、自家発電を母親に見られた瞬間とかだな。
個人的には、何度も同じネタを使っていると、感覚が麻痺して、効かなくなってくるかもしれないので、二つ以上は必要だと思っている。
今回、フレッシュなネタが効果を発揮したことは喜ばしいことだ。
オレはまた一つ、手に入れてしまったみたいだな。
それはそれとして気になることをシルコワに訊いてみた。
「沙耶さんとヤズナはどこへ行ったんだ? 」
特に沙耶さんの動向が気になる。
せっかく裸で添い寝してくれたのに、恩を仇で返すような真似をしてしまったかもしれないからな。
あっ、やべ、
むくむく
オレはカッと目を見開いた。
自家発電を父に見られた時ことを思い出す。
オレと父がしばらく固まった後、
「ほどほどにしとけよ」
と捨て台詞を吐いて父は去っていった。
ふぅ、あぶないところだったぜ。
やはり何度使っても、実体験を伴うものは威力が違うな。
ただ、精神に受けるダメージもでかいが。
ちなみに沙耶さんは湯殿に行っているらしい。
ヤズナは沙耶さんの付き添い。
オレは病み上がりなので身体を拭くだけ、ということになったようだ。




