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第51話 ダスター・グラン・4 / 噴水の家

W19-4



 …………

 …………

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 ジャミ「ああ、グラズ様、あなたを我が姉の手から救い出してみせます」

 リリアン「グラズ兄ちゃん、さらわれちゃった? 」

 リシアン「君は黙っていなさい」

 赤の王妃「解りやすくて良いではありませぬか? 」

 赤の王「なにか、なにかもっと、…他の方法があってもいいはずだ……」

 ゼイン「あまり思い詰めるな、お前は良くやってくれている」

 ゼイン「ひとつひとつ、少しずつでも前に進んでいるのだからな」

 …………

 …………

 …………


 うっ、いかんいかん、どうも意識がはっきりとしないな。

 それはさておき、(それがし)は今、タリアの家に世話になっている。


 考えてみれば納得のいく話だが、人口600人の宿場町で歌一筋で食べていくのは無理だ。

 しかも夫は死んでいて、独りで生きていかねばならないのだ。


 彼女は、生活が苦しくなると春を(ひさ)いで生活していた。

 町の者たちも、心得ており、少し高級な娼婦という位置づけで、町の有力者に援助を受けていた。


 だが、不心得者はどこにでもおり、付近の大きな町からやって来た男が、タリアを買った。

 その男は女に暴行を加えて屈服させねば達せないという、困った性癖の持ち主で、タリアに殴る蹴るの暴行を加え始めた。

 悲鳴を上げるタリア。

 そこに居合わせた某が(その日も噴水で肉体(からだ)を洗っていた)タリアの悲鳴を聞きつけ、男の手から彼女を庇った。


 某は男を自警団に突き出し、男は留置所に入れられた。

 だが何故かすぐに釈放された男は、お供を引き連れ、タリアの家までやってきた。

 そこに居合わせたタリアと(それがし)を憎々しげに睨みつけ、恨み言と捨て台詞を吐いて去っていった。


 それ以来、タリアは某を頼りにするようになり、ついには個人契約を交わして住み込みの用心棒になった。


 タリアの朝は遅い。

 大体昼過ぎに起きてくる。

 某はタリアが起きる頃に合わせて朝食をつくる。


 タリアの職場でもある、酒場「うしろ髪」のマスター・ゾギ親父直伝のツマミだ。

 ゾギ親父はタリアを娘のように可愛がっており、タリアを変態性癖の客から救ったことで気に入られ、秘伝のツマミの造り方を伝授してくれた。


 まあ、朝(というか昼だが)から凝った物は必要ない。

 胃にやさしい、あっさりしたものが喜ばれる。


 このところの彼女はお疲れ気味だ。

 肌が荒れ、少しやつれてきている。


 …理由は解っている。

 ただでさえ生活が苦しく、身を売らねばならなかったというのに、某という扶養家族が増えたからだ。

 だが、某が狩りに出ようとすると、彼女は不安がって某を離してくれない。


 タリアは某が居なければ生きられなくなりつつあった。

 食事の時も、寝る時も、身支度をするときも、歌を歌う時も片時も某を放そうとしない。


 夜の仕事の時も傍にオレを置きたがった。

 する方も気まずいだろうし、さすがにそれはご遠慮願いたかったが、彼女が半狂乱になって頼むので、喘ぎ声が聞こえるほど近くで控えていることで(ただしタリアの視界に入っている必要がある)、なんとか手を売ってもらった。


 そして客が去った後は決まって某に甘えてくる。

 そんなとき、某は壊れ物のように慎重に触れ、優しく抱いてやるのだ。


 だが、食い扶持を得る為とはいえ、深い仲になった女が、他の男に抱かれている時の喘ぎ声を傍で聞いているというのは、そもそもそんな仕事をさせている状況に甘んじているというのは、忸怩たるものがある。

 かといって今にも壊れそうなタリアを放ってはおけない。




 誰か、某たちを助けてくれ……。



























 …………

 …………

 …………

 グラズ「だから、可能な限り頑張ったから、何だというのですか? 」

 グラズ「その結果が、親友に裏切られ、愛する人を奪われるということなのですか? 」

 ゼイン「今は考えるな、その者たちも、その世界も、今は失われてしまっているのだからな」

 グラズ「すみません、取り乱しました」

 ゼイン「よい、お前もよくやってくれている」

 ゼイン「この計画(プロジェクト)が上手く行けば、世界の復活の道標(みちしるべ)も見えてくる」

 グラズ「そうすれば、今度こそ奴を…っ」

 ゼイン「やめろというに、まずは目の前の事に集中しろ」

 ゼイン「ギリー、状況はどうか? 」

 ギリー「今はその時ではない、まだ運命は交錯しない」

 ゼイン「……まだ猶予はある、とはいえ(とき)は有限だ、なんとかならんか? 」

 ギリー「急いてはことを仕損じる、…こういう時だからこそ」

 ゼイン「すまん、無理を言った」

 ゼイン「エルミールダレク、記憶の石版の方はどうだ? 」

 エルミー「因果との接続は完了しています、後は強い情動さえあれば…」

 ギリー「だとすれば、この状況、注視する価値はあります」

 グラズ「そうか、女とイチャイチャしているだけにしか見えんが…? 」

 ゼイン「だが、ふぅーむ、この状況…」

 グラズ「なんです、なにか気になることでも…? 」

 ゼイン「たしか、…あの方が……」

 グラズ「! あの方がなんと? 」

 所長「ヒモだ」

 グラズ「おわっ、誰だ、お前は」

 所長「失礼、小生は57番目の世界の管理者です」

 グラズ「そうか、名前は、覚えていないのか? 」

 所長「それが…、……記憶にございません」

 ゼイン「だが、失われた世界の一つが輪郭を帯びたことは喜ばしきことだ」

 グラズ「……それで、ヒモっていうのは、何のことだ? 」

 所長「それはですね、……ごにょごにょ」

 グラズ「最低じゃないか、こんな奴があの方の似姿だと……? 」

 ゼイン「これこれ、君が言い出したことだぞ」

 ギリー「それに前後の状況をキチンと見れば、そう単純でないことがわかります」

 ゼイン「即断即決は君の美徳だが、それで失敗したことも多いことを忘れないように」

 グラズ「はいはい、じっくり、腰を据えて、でしたか? 」

 ゼイン「そうだ、じっくり、腰を据えて、ひとつずつ前へ進めて行くのだ」

 エルミールダレク「まずは石版を出現させるところからですね」

 グラズ「では、それまでにこちらで用意できる兵力でも編成しておくか…」

 ゼイン「ほどほどにな、目の前の環境を壊すような大兵力は控えるのだぞ」

 グラズ「解っていますよ、でもこれくらいなら、いいのかな? 」

 グラズ「大は小を兼ねると言うものな」

 …………

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