第50話 抗えない運命
三人称です
D01-47KYS
「では、沙耶、お願いします」
「はい? 」
「ワタクシ達の諍いを収めたのです、沙耶もその気になったのでしょう? 」
「ま、待って、…やりたい女性がやれば良いのでは……? 」
「沙耶にはそういうところがありますね」
-「他者の望みを優先して、いちいち身を退いていたのでは、幸せを逃してしまいますよ? 」
-「現実問題として、ワタクシとシルコワは襲撃者に備えなければなりません」
-「襲撃者たちの目的があなたである以上、あなたとご主人様を一緒に護る方が効率も良いですしね」
「……現状、沙耶殿に出来ることはあまり多くありません、添い寝をお任せするのは口惜しいことですが…」
「そう、これは適材適所というものです」
「うっ、…でも、私、その、男の人と…」
「こういうことは慣れです沙耶、幸い相手は意識が無いのです、練習台とさせてもらいなさい」
「…沙耶殿、相手となる殿方のことを考えてください」
-「主様は今病床の身ですから、どのようにすれば健やかになって頂けるかを考えれば、おのずと行動に表われるはずです」
「覚悟を決めなさい、沙耶、ツンと澄まして相手と距離を置いているだけでは、何も始まりませんよ」
「沙耶殿、主様の容態は大丈夫なのですか? 」
「沙耶、心の距離を縮めるのです、触れ合うことで、ご主人様を自身の一部と錯覚してしまうのです」
「沙耶殿、あまり猶予はないのではありませぬか、治療行為を手控えて容態が悪化しましたでは、目も当てられませんよ? 」
「沙耶……」
「ああ、もう解ったわよ、添い寝すればいいんでしょ? 」
「服のままではいけませんよ、それではただ横で寝ているだけになってしまいます」
「沙耶殿、これは治療行為ですので、それに相応しい格好をして下さい」
寝室に微かな衣擦れの音がする。
「ちょっと、あんまりジロジロ見ないでよ…」
「沙耶、同性の視線をいちいち気にしていても、仕方がありませんよ」
「沙耶殿は初心ですね、私が知っているどの初穂の者たちも、あなたほどではなかった」
-「がんぜない童女のようです」
下着姿で衣服を畳む沙耶。
「……沙耶、あなたが今、身に着けているものは何なのですか? 」
「え? 」
自身の身体を見下ろす沙耶。
「…ブラとショーツのこと? 」
「ぶら……、よく解りませぬが、下帯のようなものには見覚えがあります」
-「人間だった頃、砦の兵士たちが身に着けておりました」
-「男性にはおさまりが悪いものがありますから、そのままにしておいては戦いに集中できないためでしょう」
-「しかし、その上に身に着けているものには見覚えがありませんね、ワタクシの時代にはなかったものです」
-「シルコワは何か解りますか? 」
「私も身に着けたことはありませぬが、裸身を晒して日銭を稼ぐ旅の踊り子が、男を誘う為に身に着けているのを見たことがあります」
「そうなのですか、沙耶? 」
「ち、違うわ、…これは胸の形を整えるためのものよ」
「解せませんね、物質は魔力を多く含有すればするほど、形状や状態を維持し続け、簡単には変化しないはずです」
-「沙耶殿からも魔力を感じられるのですが」
「ああ、そういうことですか、確かご主人様や沙耶がいた世界には魔力の概念が無かったはず、だからそういうものも必要だったのかもしれませんね」
-「そういうわけです、沙耶、見慣れぬそれも、下帯も必要ありません、そもそも下帯は男性が身に着けるものですからね」
「え、いや、でも、さすがに……」
「沙耶殿、殿方と添い寝をするのに、着衣のままでは失礼と言うものですよ」
「……草次君、本当は寝たふりをしていて、この状況を楽しんでいるのではないでしょうね? 」
「何をぶつぶつ言っているのですか、沙耶? 」
やきもきさせつつ次話はW19‐4です。




