第49話 寝室での会話
三人称つづき。
D01-46KYS
「まずいわ、草次君の身体、冷たくなってきているみたい」
「それは…、人肌で暖めた方が良いかもしれませんね…」
「私が一肌脱ぎましょう」
「魔法でどうにか出来ないの? 」
「魔法で室温を上げてはいるのですが…」
「手長猩猩に伝わる薬湯とかは無いの? 」
「手長猩猩たちの体力を想定したものになりますから、主様ですと劇薬になってしまうかもしれません」
「沙耶、診たところ、体温の低下以外は特に異常は無いようです」
-「人肌で暖めれば何とかなるはずです」
-「ですがシルコワはいけません」
「なぜですか? 」
「物理障壁と、対抗結界、室温の上昇と既に3つの魔法を使っています」
-「さらに襲撃にも警戒しならないのです、別のことをしている余裕は無いでしょう」
「襲撃への警戒はヤズナ様が一手にお引き受けくださればよろしいのではないでしょうか? 」
-「物理障壁と対抗結界も既に構築は完成しており、維持するだけですから負担にはなりません」
「ふぅ、言わなければなりませんか…」
-「それはシルコワ、あなたが猿の特性を持つ女だからです」
-「覚えていますか、沙耶? 」
-「シルコワは猿の男は性欲が強いと言っていたでしょう? 」
-「しかしそれは猿の女にも言えることなのです」
-「体力の低下しているご主人様に余計なちょっかいを出されて、さらなる体力の低下を招いてしまったら、目もあてられませんからね」
「そ、そのようなことはしません、私とて時と場合を弁えております」
「しかしあなたはさっきから、いやに自薦しているではありませんか、なにか思惑があるようにしか見えませんが? 」
「…思惑、というほどのものではありませんが、明日、主様が順調に回復して目覚められた時に、私が裸身で添い寝をしていたら、どんな反応をされるのか、それを見てみたいと思っただけです」
-「確か主様は初物でしたよね? 」
「初物…、そのような呼び方……」
-「シルコワ、…あなたまさか、ご主人様の一番槍を狙っているのではないでしょうね」
-「あなたのような猿の女に一番槍を任せてしまったら、鬼腰に搾り取られて、女性に対して酷い心的外傷を抱えてしまうことでしょう」
「誰が鬼腰ですか、筆卸しは相当数の経験があります、心安んじて私にお任せください」
「…ここには女性が三人もいるのです」
-「新参者に全てを任せる必要はないでしょう」
-「ですよね、沙耶? 」
「え、私? 」
「ワタクシはご主人様の最初の相手は沙耶が良いと思います」
「……でも草次君はヤズナを随分信頼しているわ、ヤズナだって憎からず想っているのでしょう? 」
-「なら、ヤズナが適任だと思うけど…」
「否定はしません、そうですね、このような気分になったのは、随分懐かしいですね、人間だった頃以来です」
-「ですが、それとこれとは別です」
-「沙耶もご主人様も最初の頃より距離は近づいてきていますが、まだまだ親密度が足りません」
-「システム的にも沙耶が、ご主人様との仲を深めることは、今後のダンジョン経営に有利に働きます」
-「それは沙耶、あなたも承知していると思っていましたが? 」
「それは…」
「そのような理由で主様の初物を剥いてしまうのでは、主様に失礼です」
-「それに経験上、初物と初穂では上手くいかないこともあります」
「ご主人様と沙耶の相性は既に保障されているのです」
-「沙耶とてご主人様といずれそうなることを覚悟しているはずです」
-「経験不足についてはワタクシが助言しましょう」
「…待ってください、ヤズナ様」
-「魔神ヤズナは確か初穂神だったはず」
-「つまりヤズナ様も、むしろ助言を請うべきお立場なのではありませぬか? 」
「…そのようなもの、ワタクシが何年生きていると思っているのですか? 」
-「交配の仕組みなど熟知しております」
「…つまり耳年魔と」
「たかが600歳を少し超えたくらいの小娘が、無礼な口を利くものです」
-「少しお灸を据えてやる必要がありそうですね」
「お言葉を返すようですが、ヤズナ様……」
「いい加減して、草次君が寝ているのよ? 」
ピタッ
「……やはり、沙耶には才能がありますね」
「末恐ろしい、これで19歳とは…」
作中の熟語の中には一部、本来使われていない意味を持たせているものもありますが、なんとなく意味が伝わればいいなと考えています。
ヤズナの発言については、人間だった頃、常に戦いに身を置き、周囲が男ばかりだったのでこのような表現になりました。戦争で勝利して、町や村での略奪、暴行が当たり前の世界ですから、こういう猥談もあったのでしょうね。
ヤズナの言う「相性が保証されている…云々」に関しては「ダンジョンルール」に載っています。




