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第48話 狂った騎士の屋敷

三人称です

 D01-45KYS



 ここは手長猩猩の里から少し離れた場所にある瀟洒な屋敷の一室だ。

 エオリア王国からの救難信号があった時に、狂ったエオリアの騎士を鎮める為に使われる建物で、彼らがその後数年逗留することも想定された、広さと頑丈さ、設備などが整っている。

 今は家主はおらず、シルコワの妹たちが管理していた。


 今、刈谷、沙耶、ヤズナ、シルコワが居る場所は、家主のための寝室である。

 天蓋付きのキングサイズのベッドがあり、4人で寝ても誰かがあぶれることはない。

 現在、意識の無い刈谷はベッドの真ん中に横たえられている。


 本当は日帰りでダンジョン跡地に戻る予定だったが、刈谷が倒れた為、急遽この屋敷で一泊することになったのだ。


「草次君、また眠りについたようね」

「急速にHPを失ったのです、体調を崩されたのかもしれませんね」


 ベッドの周囲をヤズナがチェックしている。


「窓際は要警戒ですね、シルコワ、入り口の方はどうなりました? 」

「はい、物理障壁と対抗(カウンター)結界を張っておきました」

-「生半(なまなか)な相手では手も足も出ない筈です」


「……二人とも、どうしてそんなに警戒しているの? 」


 すると、ヤズナが静かに溜息を吐き、シルコワが小さく(おとがい)を左右に動かした。


「な、なによその態度」

「ハァ、……沙耶は何も解っていませんね」


「沙耶様……」

「様はやめて」

「…沙耶殿、身内の恥を晒すようですが、猿の特性を持つ者は常時発情期であり、総じて性欲が強いのです」

-「これは猿の本能のようなもので、代表の私がどれほど制止しても襲撃の可能性はある、と考えて行動しなければなりません」


「でも宴会場の手長猩猩たちは、随分ヤズナを恐れているように見えたけど…」

「ワタクシとシルコワだけだったら、襲撃はないでしょうね」

「え? 」

「沙耶、あなたがいるから、襲撃に備えなければならないのです」


「どういうこと……? 」

「ふぅ、気づいてなかったのですか、猿どもの態度に……? 」

「ああ、じっと見ていたわね、でも向こうの世界でもよくあることだったし、あまり気にしないことにしているの」

「それは、無用心すぎますよ、沙耶」

-「周囲が文明人ばかりだったあなたがたの世界と、この世界は違います」

-「いつまでも観光客気分、物見遊山でいてもらっては困ります」

「そ、そんなつもりはないわ…」

-「草次君を見て、あらためてこの世界が危険だと確信したわ…」


「そういうことではなく、沙耶、あなたは自分の容姿に無自覚すぎます」

「そうですね、沙耶殿ほど美しい女性を見たのは生まれて初めてです」

「そんなに言われるほどのことかしら、草次君とだって普通に接することができていたと思うけど? 」

「ご主人様は全体を俯瞰(ふかん)するように見て、あなただけを見ないようにしていました」

-「ダンジョンの外で、いちいちあなたの容姿に気を取られていたら、いつ足元をすくわれるか分りませんからね」

「そ、そんなことをしていたのね、気付かなかったな…」




 あくまで異世界の猿の話で、現実世界の猿には発情期があります。

 シルコワの娘たちと妹たち

 娘たち……子孫たちのことです。

 妹たち……血族ではないが、魔性になった者たちのことです。

 左上にある記号の、話数の横のKYSとは門倉(沙耶)、ヤズナ、シルコワの頭文字です。


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