第46話 シーソーゲーム
D01-43
「まったく……」
オレは今、宴会の前に待機していた木々の間の、少し隙間のある場所に戻ってきている。
宴もたけなわ、そろそろ終わりが見えてきたというところで、沙耶さんに話があると言われて連れ込まれていた。
ふぅ、ずいぶん食べたな、食休みも兼ねて、丁度座りやすそうな岩に腰を下ろす。
沙耶さんは右斜め前の木に寄りかかっている。
沙耶さんの態度からして、色っぽい話とかではなさそうだ。
何を言われるかと戦々恐々としていると、
「もう少し、気を付けて行動しなさいよ、君の生命は君だけのものではないのよ? 」
と言い出した。
オレは少しムッとした。
そんなはずはないだろう?
オレの命はオレだけのもののはずだ。
オレの不満げな態度に気配で察したのか、沙耶さんが言葉を補足する。
「ダンジョンルールはちゃんと覚えている? 」
-「草次君が死ぬと私も死ぬし、ダンジョンも無くなっちゃうわ」
-「ヤズナもシルコワもどうなるか分からないのよ? 」
「そっか、ごめん、自分のことしか考えてなかった」
-「でもそんなに危険な行動とったかな? 」
-「慎重に行動していたつもりだったけど…」
沙耶さんは少し息を吐いて、話を続ける。
「大体、君、行動に一貫性が無いのよ」
-「川の水は拒絶したのに、どうして得体の知れない、生きている虫はバリバリ食べるのよ…」
そうなんだよな、ヤズナがわざわざ取ってきてくれた川の水は拒否しておいて、シルコワが用意してくれた料理は無条件で食べたんだよな…。
ヤズナとはあのおっぱいタイム以降、少し心の距離が離れた気がしている。
ヤズナのことは信頼している。
実は飼われているんじゃないかってくらい、寄りかかっているよね、今のところ。
でもその一方、絶対に知られたくない思い(付いてるか付いてないか)も抱えてしまっていた。
……オレは、ヤズナに付いているかもしれないから邪険にして、女性だと紹介されたシルコワの好意は受け入れたのか?
いや、そんな狭い了見はしていないはずだ。
では古参のヤズナを遠ざけて、新参者のシルコワを近づけることで、双方とも平等に扱うことにしたのか?
いやそんな深い考えはなかったと言い切れる。
そもそも新参も古参も何も、まだこの世界で目覚めて一日も経っていないものな。
それに、だったら、沙耶さんはどうなるんだって話だ。
まあ沙耶さんはオレの中では別枠だが。
では巨大生物や大きくて野蛮な原住民(?)を、素手でバッタバッタと倒し、時には爆散までさせたヤズナに、弱者に選択肢などないと力の論理を振りかざすヤズナに、繊細な心など無いだろうと決め付けてしまったのか。
その反動で、敗者であるシルコワの方は、無条件で繊細だと思い込んでしまったのか。
オレが頭を抱えてあーでもない、こーでもないと考えていると、
「聞いているの? 」
現実に引き戻された。
「……目が離せない…」
「え? 」
オレが聞き返すと、こちらをじっと睨みつけた沙耶さんが
「ちょっとよそ見をして、視線を戻したら、いつの間にか死んでいそうで目が離せないって言ってるのっ」
…………。
くっ、赤葡萄虫に殺されかけたことは、沙耶さんには黙っておこう。
ううっ




