第43話 勇者・刈谷
D01-40
奇岩の大猪の肉は確かに美味かった。
ぷるんぷるんした一口サイズのブロック肉を口に入れると、口の中でほろほろと溶けてなくなっていくのだ。
取り皿に乗っていたブロック肉を全て食し、物足りないと感じたオレは、テンションが上がってきたことも手伝い、他の料理も試してみることにした。
ウサギ肉とワイルドラット肉の香草焼きは、食感も似ており、そんなに変わらなくも思えるが、弱冠ウサギ肉の方があっさりしているのかもな。
ただワイルドラット肉の方は、香草や香辛料をすりつぶしたものが、念入りに塗りこまれているので、本来は臭みがある肉なのかもしれない。
シルコワが取り分けて来てくれた取り皿には、
緑色の葡萄の粒みたいな虫も乗っていた。
皿の上を歩いているのもいたが、そっと掴むと脚を引っ込め、ジッと動かなくなった。
団子虫みたいな性質を持っているのか?
硬いのかとも思ったが、指の圧力を強めるとぷよぷよと弾力があることが解る。
羽があるはずの背の部分も、境目が殆ど見えないほど目立たず、球体にしか見えない。
見た目は美味そうなんだよな。
そのまま口に入れて噛んでみる。パリパリッと薄皮が割れて、口の中で簡単に潰れる。
甘い。
中はトロッとしていて上質な花の蜜のように甘い。
羽は皮みたいなものか、あまり気にならないな。
脚は種みたいなもので、気になる人は気になるかもしれないね。
沙耶さんと目が合った。
彼女は宇宙人を見るような目でオレを見ている。
オレは、
「おいしいよ」
と声を出さず、口だけを動かして緑葡萄虫(勝手に命名)を口に放り込んだ。
彼女は小さく左右に顎を振り、視線を逸らした。
ただ調子に乗って食べていたら口の中で動き出した奴がいて、さすがにびびった(根性で噛み潰したが)。
ムカデの蒲焼も試してみた。きっちり火が通っているので、煎餅のようにバリバリ食べられる。
さすがに木串は食べなかったけどね。
さてあとは拳大幼虫の壷煮か。
オレはシルコワに持って来てもらった縦長の壷に手を入れる。
「アツッ」
おもわず指で耳たぶを触る。
どうやら手長猩猩のようにはいかないようだ。
あいつら指先が硬質化して爪のようになっているので、熱が爪の先まで伝わってないのかもな。
そうだ、オレはさっきの、ワインのコルクを抜くやつみたいな、変な食器をもう一本持って来てもらい、逆さにして箸のように持つことにした。
果たして幼虫はつかめだ。
箸とは勝手が違うので何度か滑ったが、見事つかみ、取り皿に落とした。少し冷ましてから、今度は直に手で掴み取る。
一口で丸ごとは無理なので、黒い頭の部分を掴み、尻の方から口に入れて噛み切る。
ブチブチブチッ、うーん、なまこ? みたいな?
もぎゅもぎゅ、ブチッ、うわっ、口の中が大洪水や…
あ、口から外に零れそう、じゅるるるっ、ごくん。
…これは濃厚な、スープ? シチュー?
クリームチーズみたいな味なのかな、少しシャバシャバしているが。
食感が面白いのでいつの間にか全部食べていた。
まあ、文明人として、頭の黒い部分は食べなかったけどね。
お、何か来たぞ、羹物か。木製の深皿に、皿から飛び出した骨付き肉が乗っかっている。
オレは肉を手で掴み(すでに手で食べることは気にならなくっている)、左右から引っ張る。
骨は肉からスルッと抜けて骨だけになる。
オレは取り皿に骨を落として肉に集中した。
骨を取ると肉はぐにゃぐにゃしていて、つかみ辛かったが、気にせずかぶりついた。




