第40話 手持ち無沙汰
D01-37
トンテンカン、トンテンカン。
手長猩猩たちは忙しそうに立ち働いている。
オレも手伝おうとしたが、総指揮を執っているはずのシルコワが、息せき切って走ってきて、思いとどまるようにとなだめすかしてくるので、気の毒になったから止めておいた。
ヤズナはというと、近くを歩くだけで手長猩猩たちが、腰を抜かして尻餅をつき、泡を吹き始めるので、手伝うどころではなかった。
沙耶さんは……、勃起した手長猩猩たちが、涎を垂らしてじっと彼女を見つめてくるので、危険と判断し、お願いして側に居てもらうことにした。
手持ち無沙汰のオレの手元には、ヤズナに渡された皮袋がある。
この中には水が入っている。
多分、ヤズナとシルコワが、なんでもないことのように、気軽に跳んだ小川の水ではないかな。
オレの口から出まかせに反応して、律儀に川で水を汲んで来てくれたのだ。
ありがとう、ヤズナ。
ただ、沙耶さんも言っていたが、ここは異世界なのだ。
そしてそんな異世界の屋外で、そこらにあった川の水を、煮沸消毒もせずにぶっ掛けて大丈夫なんだろうな?
と、いうことだ。
そりゃヤズナはこの世界の住人だし、ヤズナくらい強けりゃ何の問題もないのだろうが。
こちらはひ弱な文明人、ネズミも食べられない文明人ですよ、奥さん?
オレがどうにか水を掛けなくて良い状況を作り出そうと思案していると、
赤い瞳で見るともなしにこちらを見ていた沙耶さんが、
「なにをもたもたしているのよ、早く消毒してしまいなさいよ」
と、言ってきた。
少し向こうからヤズナの視線も感じる。
……よし、こ、……ここは…手が滑った振りをしてこぼしてしまうか…、……ヤズナには悪いが。
オレが手を動かそうとしたとき、オレの手から水が入った皮袋をもぎ取った沙耶さんがすぐそばにいた。
「ったく、仕方ないわね、1人で目も洗えないのでしょ? 」
-「ほら、両目開けときなさいよ、水掛けてあげるから」
そんな親切心、今、発揮しなくいいんですよぉーーっ、沙耶さーーーん。




