第20話 大木の洞・5
D01-20
そういえば特に意識を込めなくても、
ヤズナと意思のやり取りができていたな。
そういうものなのか?
-こちらに聞く体勢ができていればある程度は、解りますね-
そっかー、オレの心の声とか、ヤズナにだだ漏れなんだね。
-心を読まれるのは嫌ですか? -
いや、ヤズナなら、まあ、いいかな、と思えるよ。
もう、今さらだしね…。
ヤズナから歓びの感情が流れてくる。
ただ、意思の疎通ができるといっても、ヤズナ次第って感じだよな。
ヤズナにその気がなければ、こちらからでは、なにもできそうにない……。
-これは心の技術の問題ですから、そういうことに一日の長があるワタクシ寄りになってしまうのは、仕方がありません、いずれ、意志のやり取りを続けていれば技術は身に付いてくるはずです-
そういうものか…、
まあ、気長にやるとするか…。
オレがしばらく物思いに耽っていると、
ん、なんだ?
なにかがオレの袖をクイクイと引っ張っているぞ。
オレは引っ張られる方向を見下ろす。
紅い瞳がじっとこちらを見つめている。
オレは二度見した。
沙耶さんだ。
…そ、そうだよね、オレたち、まだ大木の洞の中にいるんだよね、
ヤズナが声をかけてくれてしばらく経つのに…。
オレは慌てて立ち上がり、
またダンジョンコアに頭をぶつけながらも、
痛みを感じる暇もあらばこそ、
大木の洞を急いで出た。
沙耶さんは大木の洞から出て、
腕を組んで頭上に掲げ、背伸びをした。
オレはそれを遠巻きに見ながら、
窮屈な思いをさせてすみません、沙耶さん、
と心の中で謝っておいた。




