118.
私のためにこのキーホルダーを買ってくれた
そしてこのことを知っているのは私と白崎さんだけで、誰にも言ってはいけない秘密
すごい大袈裟な表現だけど、どうしても顔がにやけてしまう
人に何かを買ってもらうのってこんなにも嬉しいことなんだっけ?
もしかして買ってもらったのが白崎さんだからこんなにも嬉しいの?
トイレの中で濡れた服を着替えながらどうしてもそんなことを考えてしまう
白崎さんは私のお兄さん的な存在、けど私の白崎さんに対する気持ちがそんなに簡単ではないような気がして…………
「…………よしっ、ウジウジしてても白崎さんを待たせるだけだよね!!早く着替えないと。あっ、でもその前に」
早く着替え終わって白崎さんの元に戻らないといけないのだが、その前に白崎さんから買ってもらったキーホルダーをカバンにつけることにした
袋の中身はイルカのキーホルダーだということは知っているが、それでも袋を開けるときはものすごくワクワクする
ちがう、これはかわいい袋に包んでくれているからだと心に言い聞かせても言うことを聞いてくれない
こんなにも心って脈打つものだったのかと、この時初めて気づいた
「あ、あの……白崎さんお待たせしました。この上着ありがとうございました」
「別にいいって。それよりまだ上着は返さなくてもいいぞ。今日は夏でも肌寒い日だって言ってたし日焼けをしないためにもあの服を着てたんだろ。その上着を着ててもそんなに暑いわけじゃなかったし、堀川が着とけ」
「まぁ確かにこの上着を着ても暑くはなかったですけど、そうしたら白崎さんの方が寒いじゃないですか。半袖Tシャツ一枚なんて白崎さんの方が風邪引きますよ」
「俺は風邪なんてそうそう引かない人なんだからいいの。それに、男が半袖Tシャツ一枚でも違和感ないだろ。現にこの水族館の中だけでも結構Tシャツ一枚の人だっているしな。
その上着をどうしても着たくないっていうなら返してもらってもいいんだがな」
「…………じゃあお言葉に甘えて借りさせてください。けど寒かったら言ってくださいね。私が白崎さんから上着を借りたせいで風邪ひいたなんて笑えませんから」
「それなら尚更上着を着ることはないな。どうせ風邪引くなら堀川より俺の方がいいだろ」
ほら、そうやって私をあやまかす
これだから私の心臓の音が激しくなるんだ




