表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/6

第3話 未知との遭遇

「静かにしてくれ」


レオニスの落ち着いた一言で、艦橋内は静まり返った。


接触まで数分あるが、これはゲームではない、現実だ。ならば、司令官である俺がここで腹を括るしかない。


レオニスは再び腕を組み、平然を装った声で命令を下した。


「全艦、戦闘配置につけ。防御シールドは現状維持。エル、人工構造物の解析を急げ」


「受信済みデータをもとに解析中。宇宙船と推定され、連邦基準における『フリゲート級』に相当します。ただし船体構造、推進波形ともに既知のデータベースに該当なし。未知の宇宙船と推測します。」



やはり宇宙船、それも未知の宇宙船だ。ここは見知らぬ宙域。敵対する意思があるかもわからず、ましてや背後の勢力すら分からない。手当たり次第に撃沈していては、情報もないこちら側が不利になる可能性が高い。まずは平穏に通信を試みるか……。


「エル、全周波数帯で通信を試みろ。」


「共通通信、連邦標準通信、遭難救助通信を送信します。」



「未知の言語による通信を確認。内容は解析できません。解析するには数週間必要と推定されます。」


言葉による対話ができないなら、まず、あの船の鹵獲ろかくを優先するか、あるいは戦闘能力を奪って情報を引き出すのが妥当だろう。敵対の意思があるかどうか判断できないとはいえ、限界まで引きつけてから、相手の出方を見るしかない。


「わかった、今後のために解析を進めてくれ。」

「また、レールガンを起動しろ。いつでも撃てるよう、敵フリゲートの動力部へ照準を固定だけしておけ」


「っ……対艦レールガンを、ですか……?」


参謀長が一瞬息を呑んだ。


もともと対戦艦用の兵器を初手から照準を合わせろというのか。しかし、未知の敵を前に備えを怠るわけにもいかない……。


「撃つためじゃない、こちらが撃てると思わせるためだ。」「撃てば木っ端微塵になるのはわかっている」「だから、俺の命令があるまで絶対に攻撃をするな。まずは、無人攻撃機を分隊規模で展開せよ」


レオニスはホログラムに写った宇宙船を見つめながら言う。


「もし敵対してくるなら、敵の武装、および推進機関のみを攻撃しろ。まずはあの宇宙船の無力化、最悪は破壊せよ」


こちらの防御ならフリゲート級程度の攻撃など無に等しいだろう。なるべく鹵獲したいところだな


エルはいつもと変わらない声で報告する。


「無人攻撃機部隊の発進が完了しました。」


艦橋中央のレーダーには、敵フリゲートへ向かう無人攻撃機の光点が次々と現れていった。





その頃、接近する敵のフリゲート級の艦内は、慌ただしく戦闘への準備を進めていた。


なぞの金属製装備に身を包んだゴブリン達が武装準備をしていた。銃器の手入れまでしている者もいる。


艦橋内では大きな体をもち、階級章をつけているオークたちが萎縮しながら上質な服を着ている人物と通信をしているようだ。

彼らの目的は誰にもわからなかった。





場面は再び、レオニス率いる旗艦へ


「警告。敵艦、急減速」


エルの澄んだ声が、静まり返った艦橋に響いた。 ホログラム上の赤点が、不穏にも旗艦の手前でその動きを止める。


「やっと通信に応じる気になったか?」


参謀長ユリアンが画面を注視した。

だが、レオニスの直感は別の挙動を予測していた。この不自然な停止は、射撃精度の安定、あるいは……。


「敵艦左右より熱源分離。十五メートルと推定される敵機が二機。本艦へ向けて急発進。誘導ミサイルの発射を確認。」


「対空迎撃、急げ!」


ユリアンが即座に叫ぶ。


連邦軍の教え通り、向かってくるミサイルは叩き落とすものだ。しかし、レオニスはそれを片手で制した。


「待て、迎撃は不要だ。防御シールドは現状維持。そのまま受けろ」


「……閣下!?」


ユリアンが驚愕の声をあげるが、レオニスは先の戦闘を見据えていた。

ミサイルを迎撃するのにも資源を消費する。無駄に対空火網を開いてこちらの手の内を晒す必要はないだろう。


数秒後、艦橋内の窓の端がわずかに点滅した。 衝撃波も、船体の振動すらもない。敵の放ったミサイルは強力なエネルギー障壁に接触した瞬間、吸い込まれるように闇の中へと消えていった。


「……チッ、やっぱり撃ってきたか」


レオニスは初めての戦闘に内心緊張しながらも、明確な敵対の意思を確認して声を大きくした。


「エル、無人攻撃機分隊へ迎撃命令。二機の敵機を排除、その後、本艦の援助をしろ」


「無人攻撃機、迎撃を開始します」


艦橋右側のレーダー上で、先行していた無人攻撃機たちが、一斉に小型機特有の急制動をかけた。宇宙空間の無重力を利用し、素早い猛禽類のように敵機の背後へと回り込む。


無人攻撃機から放たれたレーザーが、敵機の一機を正確に捉えた。複数機による飽和攻撃により、敵機中央部を貫いて爆発が起きた。残るもう一機も、網を張るように展開した無人機の連携によって、撃墜された。


「敵機の排除完了。無人攻撃機分隊、旗艦の援助のため、敵フリゲート級の周辺に待機します」


目的はあくまで無力化で大破はなるべく避けたいところだ。


「発砲許可を出す。レールガンを一発だけ撃て。攻撃目標は敵艦の尾部。推進機関を狙うんだ」


旗艦から一瞬だけ青白い稲妻が放たれ、それと同時に敵艦の尾部を正確に射抜いた。だが、次の瞬間、レオニスの予想を超える光景がホログラムに映し出された。

敵艦の尾部で制御を失ったエネルギー炉が、激しい紫色の閃光とともに誘爆を起こしたのだ。


メインホログラムには、大きな金属片から小さな金属片までが四方に激しく噴き出す光景が鮮烈に映し出された。 凄まじい威力に、船体が耐えきれなくなったようだ。

敵艦は、爆発の中心となった後ろ側は大破し、艦橋の残る前側はなんとか形は維持しているようだった。決して綺麗に真っ二つへとはならなかった。


「命中。敵艦、推進機関の誘爆により船体後部が大破。物理的な破壊により強制停止を確認しました」


エルのいつもと変わらない声が、静まり返った艦橋に響く。


ホログラムに映る敵艦の状態は、完全な消失を示す黒になった。実際の敵艦も辛うじて形を保っている前半分だけが、弱々しく明滅していた。


「……見事な指示です。敵の反撃能力を完全に奪いつつ、前部の艦橋周辺を残すとは」

最初から情報収集や艦橋データの確保を最優先に考えての作戦だったのか……私にはその真意までは計り知れないようだった。


顎をさすりながら、レオニスはホログラムに映る、大破した宇宙船の残骸を見つめていた。 ゲームであればここで画面が暗転する。だが、目の前で漂流しているのは、不自然に歪んだ本物の残骸であり、そして死だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ