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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第三章 盗賊領主はハンコウする編 「夜明けからの使者は悪戯に喚く」 後編 Bパート


 「………。」


 「………。」



 峡谷間に流れる風が今、頭上で泣き昏れている……互いに肩を支え合ってダナンとキャサリンは辿々しくではあったが、何とか歩みを進めていた。


 周囲に散らばる亡骸たち、彼らはようやく苦痛から開放されたのだろう、だがそんな惨状に二人は目もくれない。

 心中を占める焦燥感に駆り立てられ、疲弊しきった身体を引き摺りながらも最終防衛線へ辿り着く為に抗いもがく。


 不意にキャサリンが頭上の風鳴りを見上げると、濃紺の空が薄まっている気がした……夜明けが近づいている。


 だが彼女に安堵は無い、死者たちが撤退するとは到底思えず、件の化け物の存在を鑑みても不安は募ってゆく一方であったからだ。

 ……それでも、現状での救いは仲間達の存在とギャンビット号からの救援であろう。


 絶対的とも言える心の拠り所で己を鼓舞し続け、ひたすら足を前へやる。

 がしかし、この時、キャサリンとは対照的にダナンの心境は違っていた。



 「……ごめん。」



 力無く……ダナンが呟く。



 キャサリンはその言葉を……聞き流す、無視を決め込んだ。


 現状でそんな謝罪等聴いてられないという一心であったのだろう。



 ダナンも数瞬後、洩らした言葉に唇を噛んで口を結ぶ。

 最早ダナンの身体は戦闘不能と言ってよく、あの爆発の直後からキャサリンは彼を護りつつ、土砂から逃れた残存グール数十体との戦闘を繰り広げた。


 結果として二人は生き残ったが、キャサリンも軽視出来ぬダメージを負うハメになってしまったのだ。

 悔やんでも悔やみ切れない無力感……『自分を見捨てて行け』と叫んでもキャサリンはきっと受け入れない、かといって自ら舌を噛んで死ぬ事も敢行出来なかった。


 そんな心情を吐露した謝罪であったのだが、当のキャサリンはというとその謝罪自体に腹を立てていた。



 「活路を見出すんでしょ。」



 「………?」



 「あんたのお陰でルートのひとつは潰せた……でもまだ終わりじゃないからね、あの時、マドロックさんに吐いた約束を反故にしようとするなら私はあんたを一生許さない。」



 ハッとした様に目を剥き、ダナンがキャサリンの横顔を見やると、彼女はひたすら前だけを向いている。



 「そう……だな……まだ片手でナイフは振れるし、考えも回せる……よな。」



 「判ってンじゃん、指示よろしく♪頼りにしてるから。」



 ーー己に課した決意を、何度ブレさせるのか……再び戦意を奮い立たせ、キャサリンの肩から離れて前を向くダナン。


 だがその瞬間……皮肉、余りにも過酷で理不尽な光景が二人の瞳へ映る、映ってしまった。



 「く、クソッタレ……!!?」



 呆然と呟いた視線の先……最後の防衛線へと続く分岐路の折返し地点で蠢く影の集合体、既視感が最悪の現実を二人に悟らせてしまう。


 防衛線等、とっくに突破されていたのだ……。



 一瞬、否、流石のキャサリンでさえ白痴の如き表情を晒し動けずに居た。


 そんな彼女の思考を無慈悲にも呼び戻したのは、か細く捨て台詞を吐き、無謀にも踏み出したダナンであった。



 現実的な策も戦力も展望すらない縋るものの全てを剥がれ、圧倒的な迄の死の恐怖を喉元へ突き付けられて……それでも彼はもう『ブレない』という意思だけで蛮勇に走ったのだろう。



 死にたがりとも揶揄出来る男が死んでも死にきれない化け物の波間へと漕ぎ出して行く。



 止めなければいけない、その一心でキャサリンは走り出すダナンの背中を掴もうと手を延ばす!!


 だが……届かない、キャサリンの細く長い指先が虚しく空を掻き留まる。



 ほんの、ほんの数秒間、覚束ない足取りで向かって来るダナンの怒号に影の蠢きがピタリと止む……生者を捉え一斉に見咎めたのだろう。



 ーー次の瞬間、ダナンは亡者の波に呑み込まれていった。





 ……僅かに時間は遡り、大峡谷山岳部。




 「………。」



 「………。」



 息を切らせ、一部尾根状となっている岩山を伝い、峡谷を一望出来る場所へとマイケルとナーサは登ってきた。


 冷たい空気が鳴り響く最中で東の地平線を見やると、空が白み始めている。


 広大な大地の血道を蹂躙するかの様に、埋め尽くすグールの大群……最早そこは生者が身を置いてはいけない、忌避すべき光景が展開されていたという。


 そんな最中に今、キャサリン達は居るかもしれないのだ、瞬きもせず峡谷をつぶさに見回すマイケルの横顔にナーサはその心情を察しざるを得なかった。


 それは酷く……余りに酷い温度差であるかもしれない。


 だがこの時、ナーサの意識は冷静に犠牲の勘定へと切り変わりつつあった。


 現状の自分たちでは無条件でグールを突破するのは至難であり、何の手掛かりもなく大群に突っ込む等、ただの自殺行為であろう。


 グールの頭上を取っているとはいえ、裏を返せば自分たちも囲まれている、更にキャサリンたちの居所を特定出来たとして、救出から退路の確保までの時間が限られ過ぎていた……。


 命の損切りを考える……ナーサ本人は勘定に入れず、キャサリンやダナンを救えるのか?それとも目の前のマイケルを生き延びさせるだけで精一杯なのかと……。


 少なくとも現状のマイケルは己の命を顧みていない、『仲間が救えればそれで良い』という思考が透けて見えていた。


 同じだったのだ自身と……だがその立場は大きく違う。


 永く生きた自分とは違うのだ……だからこそ、ナーサはマイケルの命を惜しむ、確実に助かる人数を選ばねばならなかった。


 決断を迫られる中、それは唐突に告げられた。



 「ーーみ、みつ……けた!!」



 マイケルが指し示した方向、遠く……遠くにか細く、一筋の狼煙が上がっている。


 躍動しようとするマイケルの背中を見やり、ナーサは幾許もなく、判断を下す、動こうとした。


 マイケルを気絶させ、叶わずばその手足を折ってでも背負い、離脱しようと……だが次の瞬間。



 「惚れた……女なんだ……。」



 ナーサへ振り返り、彼女を見据えて放たれた素直過ぎる吐露、何より余りに無様で、必死で、だが真っ直ぐな顔であったという。



 「跳ぶぞ『マイケル』……舌を噛むなよ!!」



 一も二も無くマイケルの首根っこを掴み、断崖へと飛び出してゆくナーサ。




 ……一層風鳴りが響き渡る最中、じき不穏な夜が明けようとしていた。




 つづく


 どうだったでしょうか?すいません纏め切れませんでした。


 おそらく次回でコルカド編は大まかにですが終わります。


 そろそろ主人公を出したいなぁ((汗))

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