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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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デストロイ外伝 『フィッシャーマンズ ライジング』 最終回 後編


 新しい職場に慣れるので手一杯で、更新が遅れました。


 やっと最終回となります、正確には次回のエピローグで外伝終了ですが、少しだけ外伝の補足と本編へと続く輪郭を楽しんで頂けたら幸いです。


 それではどうぞ、宜しく読んでやってつかぁさい。


 「光の檻の内部、ギガントプロス本体から高エネルギー反応を検知した……おそらく自爆するつもりだろう。」


 唐突に切り出された衝撃的な言葉に、伝声管を伝って緊張が拡がってゆく。


 「待てくれ、何故そうも断言出来るんだ!?」


直後、そう疑問を挟んできたのはフィーロであったが、その懐疑的な表情を見ながら、この時、バララの胸中にはまた別の疑念が湧いていた。

 今回だけではない……これまで彼女に帯同してきたバララには覚えがあったのだ。

 危機に瀕する度、一見しただけでは知り得ない状況をシオリは的確に看破してきた、自身は鑑定魔法の一種だと誤魔化していたが魔力を行使する素振りすら見せなかっただけに余りに疑わしい。

 そういった意味では碧渦の勇者が持つと云う予言とやらと五十歩百歩だとバララは思っていた。

 が直後、核心を突く言葉がチヨ婆の口から溢れる。


 「また脳量子神速検索なんちゃらかい?嬢ちゃん。」


 「んん……まぁね、しかも阻止に動かなきゃ直ぐに導火線に火が点くみたい。」


 「ちょっと待て、今、脳……量子……検索と言ってなかったか?」


 聞き捨てる訳にはいかないワードに会話へ割って入ったバララであったが、直ぐにチヨ婆に遮られ睨まれてしまう。


 「今は黙って信じな、後で本人が話すだろうよ……。」


 「………。」


 「話しを戻そうか……それでだ、私はこれから切り札を使う為の準備に入るが、一発限りの上、威力は未知数だ。出来ればギガントプロスに直接デリバリーしたい。」


 そう言葉を結び、シオリは貨物用エレベーターの外壁に備え付けられた伝声管を引きながら、左舷から遠方の光の檻を一望していると、伝声管から無線を繋ぐ際に発せられるノイズが耳へ障った。


 「……つまり、邪魔な防壁をこの艇で何とかしろと?」


 (良いね……肚を括ったね、ボウヤ。)


 「そうだバララ、エスコートを頼む……それと切り札のキャンセルは出来ないから、五分間きっかりで光の檻が有ろうが無かろうが私は撃つ。」


 「そうか……では必ずエスコートする、ガトを解放してやってくれ。」


 「アレを視たのか……。」


 その瞬間、伝声管を隔てて尚、両者に陰鬱な空気が流れる。

 だがそんな淀みを打ち払う様に、口を開いたのはバララであった。


 「俺達が死者にしてやれるのは送り出す事だけだ。それがどんなに陰惨で眼を背けたくなる死に様でも、俺達は……。」


 刹那、バララの言葉を切っ掛けにシオリの脳裏へサラ·ストームの予言が過る。


 ーー浄火、その本質は一切の不浄を焼き払い、世に光を照らす者。

 されどその揺らぎは清濁を併せ呑む事を赦さず、身近な者達を死地へ誘うだろう。


 身近な者達を死地へ誘う……背筋に流れる微かな予感にシオリは思わず唇を噛んでしまう。


 「バララ……君は、死ぬ事が怖くないか?」


 「何故そんな話になるんだ?」


 「答えてくれ、今、トラウマに抗ってまで戦おうとする君の、君を支えているものは何だ?」


 懇願するかの様な声音で詰問され、暫しの沈黙を要するバララ……だがやがて、掠れた吐息が洩れた。


 「死ぬのは怖い……それでも昔の俺なら、他愛ない事だと強がっただろうなーー」


 「………。」


 「だが俺一人が生き残り、思い上がりを打ち砕かれて、みんなの所へ逝きたいとすら思っていた……だから今はまた、死にたくないと思える事が嬉しい。トラビス、本当に怖いのはな、きっと大事な瞬間に何も動かない、動けない事だよ。」


 「……今がその時なのかな?」


 「分からん、そいつは後で決めればいいだろ。」


 答えにならぬぶっきらぼうな物言いに、だがそれでもシオリは思わず声を出して笑ってしまう。

 その瞬間、ふと『それでもいい』と呆気なく結論に至った自分に、こみ上げるものを抑えられなくなっていたのだろう。


 一頻り笑った後、一息つき……ただ一言だけ彼女は告げる。


 「始めようか。」


 「ああ、始めよう。」


 その短いやり取りを以て、二人は伝声管を手放した。


 視界を遮ろうとする汗を拭い去り、まだ震える手で操舵桿を叩き着ける様に握り込むバララ。


 「全機関室へ通達、本艇はこれより面舵(右舷)20で地表付近まで降下後、全速突撃を敢行する!何が起きても、機関出力を60%以上で維持し続けろーー」


 持てる全ての気力を振り絞り、バララは指示を飛ばしてゆく。

 それは同時に第三世代型対ドラゴン強襲飛空艇ドライマルセルへ機動力と云う血流が隅々まで行き渡る瞬間でもあった。


 斯くしてアズナブル·レッドはその真価を取り戻す。


 ……一方、甲板中央ではシオリがバララの激に耳を傾けながら、二丁の迅雷ーD44を構えていた。


 (現状で放てる最高火力、神焔の更なる能力解放と魔力の……。)


 ーー意を決し、彼女が瞳を見開いた瞬間、迅雷から蒼炎が纏わりつく様に顕現すると、銃身から拳大の橙色に輝く二重円形魔法陣が浮き上がってゆく。

 やがてそれら内外の円陣がそれぞれ左右へ回転すると……内円の中央に『螺』の文字が現れ、一瞬で砕け散った。


 「プロテクト33解放、制限の言霊コードを出力転換……さぁ、今こそお前の真なる名を取り戻せ、神の威光を示す代行者ーー」


 特殊なワードの組み合わせと彼女特有の魔力認証を得て、迅雷(神螺威)は本来の名と性能を取り戻し、一部の外装がパージされると特殊弾倉が解放された。

 が同時に銃身自体が凄まじい熱を放ち、グリップを握る彼女の手を焼き始めてもいた。


 しかし苦悶する素振りさえ見せぬまま、ウエストホルダーから青、黄、紫色の光がゆっくりと浮き上がって彼女の周囲を漂う……刹那、シオリの思考は瞬きの間だけ懐古する。



 アナタ、自分のスキルを把握し切れてないわね、錬金術には面白い考え方があってーー


 ーーワタシね……少しだけ、アナタの力が羨ましいのよシオリん。



 「まず第一段階……今更だよサラちゃん。」


 哀しく、余りに強い輝きを瞳に称え、そう呟いた彼女の前で、三色の光がひとつに混ざり合って二丁拳銃の弾倉へ収まってゆく。


 その時不意に、アズナブル·レッドによる加速の負荷が彼女に最後の戦いを告げる。


 (任せたぞ、バララ。)


 「衝角(船首)に電磁フィールドを偏向展開!」


 操舵桿の脇に在るコンソールパネルへ設定入力しながら、目まぐるしく変動する各部計器を一瞥し、是正指示を飛ばし続けるバララ。

 そんな彼を食い入る様に見詰め、フィーロが小さく呟いた「スゲェ……。」の一言にチヨ婆は思わず鼻を鳴らしていた。


 「一時の方向、目標視認!!目測距離800……さぁ、どうするねドーン?」


 「決まっている、全速前進!!」



 ーー独特のローター音を轟かせ、最高速度で進むアズナブル·レッド……間もなくして、それは接触した。


 光の檻と船首に展開された電磁フィールドが激突し、凄まじい反発力場が生じる事で幾重ものスパークが周囲の環境へ破壊を振りまいてゆく。

 艇体へ襲い係る衝撃に軋みを上げ、尚もゆっくりと前進しながらアズナブル·レッドが徐々に光の檻、その格子の一部を押し拓いていくと……黒煙が内部より洩れ始める。


 (やはり一定以上の質量は反射出来ないか、ならば押し込むのみ。)


 次の瞬間、更にローターが低く唸り、その回転数を上げると僅かずつではあるが艇体が前進し、黒煙をより濃く流していく。

 だが黒煙が力場に沿って流れる最中で、電磁フィールドの一部、先程反射によって破損した部位へと流れ込み艇体を腐食させる……。


 「緊急入電!!右舷機関部出力63%まで低下!!」


 「何としても保たせろ!!(マズいか……)。」


 ーータイムリミットまで一分を切ったその瞬間、ギガントプロスの絶叫が轟き、全てを拒絶する様に光の檻が膨張させてアズナブル·レッドを押し戻す!?


 筆舌に尽くしがたい力場は破壊の権化と化してシオリの眼前で甲板へ穴を穿った。


 「まだだ……バララ!!」


 「アンカー撃て!!ここで退がる訳には……いかない!!」


 次の瞬間、アズナブル·レッドの側弦から二本のアンカーが地表へ射出、打ち込んでその艇体を力場の中に留まらせるが……尚も破壊の力を振り撒いて猛り狂う。

 これ以上は保たない、ギリギリの鬩ぎ合いの最中で、バララは電磁フィールドが完全に消失し、船首の突撃衝角が砕けてしまうのを視た!!


 ーー刹那、砕けた衝角が上向いたのを認め、バララは最後の賭けに出る。


 「二番、三番アフターバーナー!!」


 そう叫んだ次の瞬間だった、アズナブル·レッド船尾四基の排気口の内、下二基から凄まじい火柱が噴き上がり……得た推進力がアンカーによって留めていたその艇体を上向けた。


 「装甲が保たない!?バラバラになっちまう!!」


 「今だッ!!アンカーパージ!!」


 ……それは余りに優雅であり、壮大な光景であったという。

 想像の範疇外、歯牙にも掛けぬ筈の思考の底の底から、バララが顕現せしめた一手。


 まるで水面を跳ね上がる鯨が如く……おそらくは歴史上初めて、第三世代型級巨大飛空艇が垂直上昇と云う芸当を為した。


 シオリが課した時間制限まで残り十秒にも満たない、切り取られた刹那の中の瞬きにて……。

 チヨ婆が、フィーロが、90度反転した艇内を転がりブリッジ内壁に激突する最中、操舵桿へ必死でぶら下がり、バララは最後の仕上げであるコンソールパネルを右拳で……叩く!!


 それは必然であったのかもしれない。


 ドライマルセルには基本的に前後二基ずつ重力低減機関が実装されている、そしてグラビティカノンとはその機関の副次効果を利用し放たれる実弾砲撃であり、出力が低下するのは自明の理と言えた。

 そして現状にて、前部低減機関が出力低下している以上、後部もそれに倣ってバランス調整をしていた……そう、バララが押した仕上げのパネルこそ、後部重力低減機関を起動させるものだったのだ。


 結果、光の檻上空において、今度は船首からアズナブル·レッドは自由落下してゆく事になる。

 ……全長64.57mという巨大な質量と重量が直下で光の檻へと叩き着けられた!!


 想像を絶する破砕音がスパーク光が、ブリッジ内の乗組員の視界と聴力を奪い去る直前、フィーロは確かに目撃したという。


 円形状に囲われていた黒煙がその輪郭を崩し、露わとなったギガントプロスのひとつ眼を……そして白く埋め尽くされた視界で確かにバララが操舵桿を握り立っていた。


 この瞬間の事を後に懐古出来る者は少ないだろう。


 結果として光の檻が消失した瞬間、バララが咄嗟にアズナブル·レッドを後退させていた。



 ーーその遥か上空にて


 「重畳だな、バララ!!」


 アズナブル·レッドが落下する直前に投げ出されていたシオリは態勢を取り直しつつ、露わとなったギガントプロスへ視線を定める。

 雲を突き抜け、風圧で身体が引き千切られそうな感覚に襲われながらも彼女の照準に狂い等微塵もない。

 今……この機会を作り出した全ての者に報いる為に、勇者がその真価を発揮しようとしていた。


 火の特性付与というスキルである『神焔』の更なる能力、その真髄とは……融合フュージョンに他ならない。


 シオリは『神焔』を解放し、眩い白光を放ちながら、その二丁拳銃を叩きつけるが如く、合わせた刹那!!

 それは生まれ変わった姿を現した、銃身を1m以上延長させた純白とゴールドの装飾が施された美しい神の威光たる一丁のリボルバー。


 全ての決着をつけんが為に、引鉄に掛ける指へ力を込める一瞬……彼女の脳裏へガトの悪戯っぽい笑顔が過る。


 ギガントプロスは姿を隠した時同様に膝を着き、項垂れている、その胸部に穿たれた穴は、ガトの身体は、上空からでは確認出来ない。

 ……迷い等在ってはならない、それでも尚、込み上げる感情を押し殺してシオリは引鉄を引き。


 斯くして銃声は空に掻き消された。


 『神焔』の真髄を込めた筈のそれは……余りにか細い火線として放たれて、ギガントプロスの胸部へ届く次の瞬間。


 巨大な黒球が膨張するが如く現れ、ギガントプロスの上半身を瞬きにも満たぬ間で……呑み込み、そして消失した。

 一体何が起きたのか?後退したアズナブル·レッドから目撃していた者達も理解し難い状況であったが、残された巨大な腐肉が崩れてゆくを目の当たりにし、やっと理解が追いつく「終わった」のだと……。


 「ドーン!?前進だ!!」


 その時ただ一人、チヨ婆だけが気勢を吐いた……気づいたのだろう。



 遥か上空ーー引鉄を引いた直後、本人が一発限りと公言した通りに、神の威光を示す銃はその発射の威力に耐え切れずに全壊してしまった。

 残されたグリップ部分を棄て、高空から落下しながら、彼女ははにかむ様に瞳を閉じて身を任せる。


 最初から、こうなる予感はあった……それでも後悔なくシオリは選んでいたのだろう。


 何処かで解放を願っていたのかもしれない、この異世界から、勇者の重責から、そして……。

 もういい、思考を意識を閉じよう、全てを手放したいとそう願った直後、彼女は硬い感触に、地面に着いたかの様な錯覚に陥る。


 驚愕の表情で眼を剥き、彼女が目にしたのは……魔獣エピオン·ジャックの自由を体現した両翼であった。


 嘴をカッカッと鳴らし、目もくれずに飛ぶエピオン。


 借りを返したつもりなのか、だが魔獣がアズナブル·レッドへ進路を取ろうとした瞬間、不意に小さな呟きを耳にし、エピオンはその高度を上げる。


 「頼む……こんな顔……皆んなには……見られたくないんだ。」


 その呟きをエピオンが理解していたのか、それは定かではない……。


 ただひとつ、確かだったのは……魔獣エピオン·ジャックは自身の背中に響く、か細く小さな嗚咽に応えたのだ。


 何処までも広がる原色の青空が風鳴りとそれに付随する全てを吸い上げてゆくようだった……。



 おわり……次回幕間、それぞれのエピローグへ

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