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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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デストロイ外伝 『フィッシャーマンズ ライジング』④

最近、コンビニ前でコケて買ったものをブチ撒けてしまいました。


恥ずかしかった……。


キリング・マッチャロ連峰


大陸最北に聳え、標高の比較的に低い七つの山々が東西へ続いている。

その配置が北斗七星に酷似した配列であるため七聖山とも呼ばれ、一部では信仰の対象となっていた。


「だがキリング・マッチャロには八番目の山がある……。」


白銀の世界を進む犬艝の荷台で風を受けながら、バララは後部に座るシオリへそう呟く……。


「えっ!?何だって!!」


「八番目の山がーーー」


「聴こえなーい……。」


「………。」


巧みに鞭を振るい、独特の号令を使い分けて案内人(ガイド)は狼犬を走らせてゆく。

一台につき四頭で艝を引き、三十分に一度、休憩を取らせる……この時に狼犬の足裏をチェックし、怪我や凍傷の有無を診ているのだが、元々狼犬は厳しい雪山の環境に適応した犬種であり、肉球部分は耐水性の強い毛に覆われているため一時間は無休で走れる。

だがそうしないのは移動手段として狼犬が必須で、酷使した挙げ句に潰してしまえば、そのまま自身の遭難を意味するからだ。


無論、人だけが乗る艝の方が軽く、二回の休憩の度に曳かせる艝をローテーションで変える。


斜面の少ない雪道を凡そ八時間程走った所でガイド達は艝を停めた、今夜はここで野営を組むという。


「えっ?まだ山の麓にすら着いてないけど……。」


独り絶句するシオリを余所に、着々と荷物の一部をバラしてゆくガイド達……。


「まず麓まで三日掛けて進む。」


「三日ッ!?諸々聞いてないぞ。」


「お前は山を嘗めているのか?麓に着いたら犬艝隊を待機させるベースキャンプを設置し、荷物を背負って数人で登山だ。それからデッドサンデーの3500m地点に俺達のベースキャンプを張る。予定通りなら五日の行程だ。」


淡々と凄まじい行程を垂れ流され、辟易してしまうシオリ……。


「もうっ!……分かった、分かったわよ、了解、この際貴方の指示に従うわ。」


「賢明だな。」


「それより、そのデッドサンデーってのが八番目の山なの?」


「ああ、ジルコニアベルトの由来にもなっている七星の添星にあたる山で、そこだけ標高が頭抜けて高く、別名『死霊の頂』とも呼ばれているな。」


……そう会話をしていると、シオリの視界の横を一人のガイドが過る。

長方形の妙に黒ずんだレンガをいくつか荷台から降ろしているようだ。


(側面に穴が通っているあの形……元の世界でも似たものがあった気がするな。)


何気ない些細な事ではあったが、思いがけず感じた懐かしさからシオリはバララの説明そっちのけで、そのガイドの作業を眺めていた。


……どうやら簡易の窯を作っているようだ。

まず雪面を踏み固め、その上にレンガを四角の形で並べる。

並べる際に穴の空いた側面を上にし、そこに長細いアンカーを打ち込んで固定していた。


(……乾し草に大小の薪材、この匂いは松脂かしら?)


「おい、聞いているのか?」


「えっ!?」


「……そんなに野営が珍しいとはな。」


気まずい雰囲気の最中、皮肉混じりの溜め息を洩らしバララはおもむろに窯の側へ歩み寄ると、素っ気なく右手をかざして……微かな声で何かを呟く。


と次の瞬間、かざした掌中から小さな火の玉が落下し、着火剤である松脂に火が灯る……。


「……ほう、バララも魔法が使えるのか。」


「いや、この程度で魔法と呼べるなら世界の魔法使い人口が爆発的に増えるぞ。俺のはせいぜいサバイバルに応用できる位だ。」


「へえ、他にはどんな活用法があるの?」


「そうだな……あとは物体から水を抽出したりだな。」


「……具体的には?」


「荒野などで水が確保出来ない時には大型動物の痕跡を探して……その排ーー」


「分かった!それ以上は言わないで!!」


「………。」


そうこうしている内に、料理番が夕食の仕度を始めようとしている……若干苦笑いでバララを一瞥していた。

幸い水には困らない、手頃な雪を大鍋に詰めて、それを窯へ掛ければ煮沸も出来、生活用水として利用可能だろう。


そう同様の事を考えた刹那、シオリは別の問題に直面してしまう。


「バララ……まさかとは思うが五日間も……その……入浴出来ないのか?」


「風呂か……そうだな、その日数は間違いだ、帰りを含めたなら二週間は入れんぞ。」


二週間……絶望的な現実にシオリは眼を剥き、呆然とするしか出来ず、うっすらと涙さえ浮かべる始末である。


その余りの狼狽ぶりにバララも流石に気が咎めたのか、深く溜め息をつくと頭を掻きーー


「……冗談だ、救済措置を考えてある。」


「ホントに……?」


まだ半信半疑なのか未だ放心状態のまま、掠れた声で懇願する様に呟く……。


……バララが目配せすると、ガイドの一人がニヤリと笑いながら、厳重にハーネスで固定された荷物の一部を解き、『それ』を取り出した。


「……これは。」


……円筒状の竹節の様な金属体、またもや既視感を覚えてしまうが、そんな事は彼女にとってはどうでもよかった。


風呂に入れる……その安堵感は如何程であったのか、シオリはいつの間にか胸の前で両手を組んでそれを拝み、一筋の涙を流している。


「尊い……。」


「尊い?……まぁ、余り勧められないがな、天候が良い時しか沸かせんぞ。」


そう言いつつ、内心で用意した甲斐はあったとバララは胸を撫で下ろす。

そもそも雪山登山で風呂など贅沢の極みだろう。

犬艝での運搬にとっては余計な重量である、それでも登山隊を編成する際にバララが簡易的な浴槽を何とか用意出来ないかと名だたる案内人達へ打診していたのだ。


因みに、浴槽となったものは元々、この世界でも棲息している鯨やセイウチから採れる油分を溜めておくものである。


ともかく、乙女の死活問題は解決した……そうこうしている内に鼻腔をくすぐる美味そうな香りが漂い始めた。


雪山(正確には登ってもいないのだが)で迎える初めての夕食である、シオリは窯の側に敷かれた毛皮に座ると天を仰ぐ。


……いつの間にか夜の帳が降りていたのか、満天の星空が広がっていた。


「んだ、ここいらからでも星は綺麗だが、もっと標高の高いトコから観たら絶景だべ。」


そう呟きながら出来たスープをよそい、シオリへ手渡す。


身体を温めつつ、体温が下がりにくくするために数種の香辛料と芋、野菜を入れ、塩漬けしてあった羊肉を煮込んだだけのスープであったが、空腹も手伝ってシオリはお代わりまでしていた。


「単純な料理だが美味いな、羊のクセを逆手にとって深いコクを生み出している……米が欲しい。」


「……米?」


「いや、何でもない。」


その後、星空の下でシオリは案内人(ガイド)達が弦楽器で奏でるこの地方のお伽話を楽しみながら……初日の夜は更けていった。




つづく

次回はちょっと長めに書きたいので、更新が遅くなると思います。


数少ない読者の皆様にはどうか!見捨てずに待って頂けたら、幸いであります!!


また少しでも楽しんでくれたなら、嬉しいなぁ。

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