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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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領主編 断章『ギャンビット号でのひととき。』


今回は本編の幕間として、短編になります。


ーーギャンビット号通路内


あれから俺達はシオリさんの招きに応じ、艦橋で情報を擦り合わせる事になったのだが……。


「君達、取り敢えず湯浴みしようか。」


まぁ、妥当な提案だろう。


なんせ洞窟組だけでなく、俺達もここ数日で風呂に入る余裕なんざ無かったからな。


例の秘薬治療で匂いがキツいのは否めないし、俺の靴下も限界だった。


幸いギャンビット号には入浴施設が完備されている、無論水資源には限りがあるようだが今回の航行に合わせて貯水槽は満タンとの事だ。


……風呂へ入る前にと用を足し終わり、トイレから出た所でミシェルと何気なく視線が合った。

場所が場所だけに自然に通り過ぎた方が無難だろう。


ちょっとした気遣いが出来る様になるとは、俺も大人になったもんだ……と内心で賢者タイムを発動してたら、いきなり後ろから頭をなぐられた。


「おい、何すんだよ?」


あくまで冷静に……今は乙女と名の付きそうなものの一切と事を構えたくない。


「殴りたくなった……。」


それは余りに理不尽じゃね?ミシェルさんよぉ。

と思いつつ、頭に出来たコブを擦る俺へ吐き捨てる様な溜め息を洩らして、彼女は艦橋へと歩いて行った……のだが、途中で歩みを止めて振り返る。


「お前さ……あの時、あの女と婆さんの戦いに何で口を挟めたんだ?」


「……言ってる意味が分かんねぇよ。」


「誰も立ち入れなかった……踏み込めば二人の気分ひとつの間違いで殺されちまう様な場で、声を絞り出すのさえ難しい状況だった。」


「さぁな……多分、馬鹿で無神経だからじゃね?」


その瞬間、おどけてそう軽口を紡いだ俺へミシェルは酷く悼ましいものを視る様な表情を垣間見せ、顔を伏せた。


(違う……誰よりもあの重圧に晒され、抗っていたのはお前だろ。)


「………?」


「時折あんたが私や、ダナンに向ける表情……あれ、嫉妬だったんだろ。」


痛い……不意を突く余りにも痛い指摘だった。


「そうだな、多分否定は出来ねぇや……。」


「だから許せないのか。」


「お前らを恨んじゃいねーよ。」


「違うよ。」


淡々とした会話の流れで、ミシェルは短く、結びの文言を俺へと差し出した……いや、核心を突くと捉えた方が正しいか。


「許せないのはあんた自身だろ……だから自分の命だけは軽視出来ちまう。」


停滞する沈黙……。


「お前に何が分かんだよ……とは言わねえが、俺が可哀想な人間にでも見えたのか?」


淡々と……ってのは嘘だ、俺は明らかに装っている。

言葉に熱が乗らない様に、悟られないように……そんな俺の揺れをミシェルは見透かしていたんだろう。


「自尊心を守るためだけに自分を削るのは、もうよしなよ。」


「自尊心ね……自尊心か……やっぱ『お前ら』はそう言うよな。」


「謝らないよ、それと勝手に私を他所と括るな、少なくとも私達は一蓮托生なんだ。」


真っ直ぐ、何とも言えないはにかみを向けられて、俺は文字通り押し黙るしかなかった。

そんな俺へミシェルは口パクで『バーカ。』と宣い、今度こそ艦橋へと消えて行った。


バツが悪い……スッキリしない言葉を投げつけやがって……だが、それは俺の頭の片隅へ噛み付き離れようとしない。



俺は気を取り直せ……てはいないが、ミシェルの言葉を引き摺りながらも大浴場へと向かう事にした。


さて、以前にも語ったが、ギャンビット号はドックからメイン通路を経由し、艦橋(ブリッジ)へと続く3Fを中心とした五層の構成になっている。

まぁ、5Fは甲板なので事質的には四層なんだろうが。

前回お邪魔した下層は主に機関士や整備士達の生活圏で4Fはゲストルームや娯楽施設であるバーやちょっとしたカジノなんかがあるらしい、大浴場もこのフロアだ。


ついでに言えば3Fは操舵士や砲撃手、副長の私室が在ったりする、キャプテンであるシオリさんの汚部屋はブリッジの奥だ……。


梯子を上り、通路を暫く進むと……ちょっと呆気に取られてしまった、うん、確かに大浴場ではあるが……何で暖簾?しかも御丁寧に漢字で男女と書かれ、入口が分かれてやがる。

あのお姉様ったら、異世界に日本文化をブッ込むのに躊躇いがないな。


……内装は更に凝ってやがる、もう銭湯そのものじゃねーか。

おまけに番頭席に座ってんのコンビニで会ったレジの婆さんだった。


「おや、また会ったねボーヤ。」


とか言いつつ、更衣室を覗くのは止めてほしいのだが?


熱視線を無視し、脱ぎ始めると磨りガラスに人影が見えた……どうやら先に何人かゴブリンが入っているようだ。


一歩踏み入ると、やはり富士山の壁画が目に飛び込んできた、しかもゴブリン(野郎共)が大はしゃぎで、あらゆるマナー違反をやらかしてやがる。


「………。」


一緒になって騒いでいたマイケルを睨みつけ、俺は溜め息をつきつつタライに座って蛇口を捻った……ってか左手一本じゃ洗い辛いわ。


ーー形容し難い声を洩らしながら、湯船へと身体を沈めてゆく、この瞬間の気持ちよさ……随分と久し振りな気がするわ。


しかし……自尊心を守るためだけに自分を削るか。


確かに才能に恵まれたヤツは今でも少なからず妬ましいと思う。

逆に俺は常に格上の天才スプリンターと戦ってきた、それはもう過去の話だが、基本的な考え方は変えられない。


競技会の直前にステーキを食っても10秒台を叩く猛者に対し、俺はトレーニングは無論、食事にまで細心の注意を払い、精神(メンタル)すら練り上げて最善を尽くしてきた。

トラックの上で相手のミスを誘い、引き出せて初めて勝率は0から変動するんだ。


競技と殺し合いの差異はあるが……俺より格上の敵に対し、心身を削って戦うのは当然だろう。


それは果たして自分の命を軽視している事になるのか?


湯に浸かり、のぼせるまで考えてみたが結局答えは出なかった。


「……最悪だ。」


更衣室の一段高い畳に寝かされ、脇ではゴブリン達が初めて視るコーヒー牛乳に一喜一憂している……。

マイケルが得意気に何か説明していたが、正直イラついた。


流石に野郎共が全裸で更衣室から出ようとしたのには引いたわ、まぁ、元々裸みたいな格好には違いなかったのだが、風呂上がりに不衛生な布を纏わなくてもいいわな。


そう戸惑っている所へロジャーがやってきた……。


「お前も風呂か?」


「いえ、私は既に一番風呂を頂きました……それよりもこれをお持ちしました。」


ロジャーが差し出したのは綺麗に畳まれた衣服の小山だった……って一番かよ!?早ッ!?


こうなると見越していたのか、どうやらまたナボルから布地を調達してきたらしい。

誰よりも早く入浴を済ませ、新たに人数分の衣服を縫製したのか、うん、お前本当に入浴する時間あったのか?


とまぁ、そんなやり取りがありつつ、それから約一時間後……俺達はお姉様が待つブリッジへ改めて集合した。

代表者は俺、ロジャー、キャサリン、婆ちゃん、あとはミシェルとダナン君だ。


マッコイ達には他のゴブリンに付いてもらっている。


「以前に来た時より片付いてるね。」


「ああ、君達が来るからと急いでクルーに片付けさせたんだよ。」


「言葉にトゲがあるぞバララ。」


お姉様の鋭い視線も意に返さず、俺達へ背中を向けたまま舵を握り続けているバララさん……相変わらず、癖の読めない所作だ。


「ナボルでのやり取りはブリッジでも観測していた。」


「………?」


「モンテ……お前の漢気は見せてもらった。」


success!! success!!


その瞬間、振り返りながらゴーグルを外し、熱い眼差しで俺へ親指を立てて見せるバララさん……思わず俺もとびっきりの笑顔で応えていた。


BooBoo♪ BooBoo♪


ハイハイ分かってますよ、すんませんね、途端に脇から負の効果音が大音量で流れてきやがった。

多分、お姉様かキャサリン辺りのものだろう。


「キャプテン、当艦は予定通りに超高空へ到達、これより滞空配備へ移行します。」


「………?」


「ご苦労、引き続き警戒を怠るな……聞いての通りだ、ここならば落ち着いて話し合えるだろモンテ君。」


「なるほど、配慮に感謝するよ、それじゃ始めるとするか。」


こうして浄火の勇者との話し合いが静かに幕を開けた訳だが、後にこの邂逅が俺と仲間達にとって重要な意味を持つなど、この時は知るよしもなかった……。



つづく

ええー、どうでしたか?


短いし、物語が進んでないじゃん……というご指摘はごもっともであります。


今回のお話は本編とはあまり関係ないモンテ達のひとときを短く切り取ってみようと試みました。

ですから、少しでも笑っていただけたら幸いです。

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