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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第二章 領主編 『迷宮からの脱出。』前編

久し振りの更新です、宜しくお願いします。

「………。」


旧街道から森へ突入し、ひた走るロジャーとマイケル……その表情からは窺い知れぬが彼等は今、一抹の不安と焦りを圧し殺している。


あれから10分にも満たない時が経過した。

……空気の淀みを肌で感じた直後、ロジャーが視ている前で、忠誠を捧げた主人と仲間達が一瞬で『闇』に呑まれ、消えてからの10分である。


情況が不鮮明である以上、この時間経過が致命的な事態を引き起こしている可能性があるのだ……焦りは判断を鈍らせると理解している、だが理解しつつも頭の片隅でそれは湧き上がってしまう。


どう行動を起こすべきか?


モンテ消失から間もなくそう思考を巡らせ始めた直後にマイケルが戻って来た。

彼もまた異変を察知したのだろう。

手短にモンテ達が消えた出来事を伝え、事態の考察を行う……。


「モンテ様は生きておられる、それを大前提で行動するぞ。」


生存の可能性……ロジャーが視たという瞬間にモンテ達が絶命している事の方が可能性は高いだろう。

そう思いつつも、マイケルは鬼気迫るロジャーの相貌に閉口せざるを得なかった……のだが、閉じようとする自身の口を抉じ開ける様に、溜め息を吐き捨てて友を見据えた。


「妄信は事態を悪化させるだけだ、その前提とやらは破綻している。」


「……マイケルッ!?」


「最悪も視野に捉えろと言っている!……その上で信じて動けロジャー。」


「……。」


普段、気障な言動ばかりが目立つマイケルに似合わぬ、静かで真剣な眼差しに一瞬の駿巡で平静を取り戻し、頷いてみせるロジャー……。


「分かった、すまない少し混乱していた。」


「良いさ、俺もモンテ様やみんなの生存を信じている、キャスやマコ……それにイチも付いてる、だからこそ状況の目が変わる前に打開するんだ。」


その言葉に眼を伏せた後、髪を撫でつけて再び顔を上げたロジャーの表情はマイケルの知るそれに戻っていた。


そして10分という時を彼等は走り続ける。


結論としてモンテ達を呑み込んだ『闇』は次元魔法の一種ではないだろうか、という仮定に至る。

十二宮・暁での修行で得た魔法体系の知識が早速役に立った……それと直前にモンテがキャサリンへしていた説明も大きな意味を持つだろう。

実はロジャーもティンを介して説明を聴いていたのだ。


それを足掛かりとして考えるなら、森全体が何らかの結界に覆われている事はもう疑い様もない。

だが自分達が森へ突入した際、何の抵抗もなく入れた事が思考の隅で引っ掛かる。


「来るものを拒まず捕らえる類いの結界じゃねーの?」


「では何故、森の外に居たモンテ様達が連れ去られたのだ?」


「ひとつ考えられるのはキャスが試していたのは精霊魔法の交渉方法だったんだろ?……つまり、結界に魔法で干渉したって事じゃないのか。」


「干渉する者も囚えるカウンタートラップを内包した結界……確かにそう考えたなら、離れた場所に居た私達が取り残された事も府に落ちるな。」


ならばもう一度、同じ状況を作り出せば少なくとも合流は果たせるだろう。

だがここで最悪に近い状況が露呈してしまう、そう、二人には魔法が使えなかったのだ……。

知識や対応策を持つが行使は出来ない。


「今は唯一の手掛かりを手繰り寄せるしかあるまいよ。」


「唯一か……森に漂う淀み、いや、濃いな、これはもう瘴気と言うべきか。」


走り続けながら肌の感覚を研ぎ澄まし、二人は瘴気の流れを探り始める。

瘴気の根本に手掛かりがある……あまつさえ、其所にモンテ達が居るかもしれないと考えたロジャーであったが、何かが足りない、自分達は思い違いをしているのではないか?先程から感じている引っ掛かりがまだ解消されていない事に気付く。


「……止まれロジャー。」


最初に違和感を口にしたのはマイケルだった。


「………。」


立ち止まり、 言葉を掛けようとするロジャーを右手で制してマイケルは周囲を見回す。


「瘴気の濃度に違いが出ている?……ロジャー、お前さんこの10分で俺達以外の動植物を見かけたか?」


「………。」


動植物……『植物』ならば其処ら中に木々が自生している。

その言葉の意味を汲めず、僅かに眉を動かすロジャーであったが次に継がれた一言で理解する事となる。


「音がしない……葉のざわめきや鼓動、足運びに至る気配さえも、生物のあらゆる痕跡が消え失せている。」


「………。」


「なぁ、俺達は広大なこの森の『何処か』にみんなが連れ去られたと考えていたが……既にそこから思い違いをしていたんじゃないか?」


(森には居ない……捜すべき手掛かりは別だというのか。)


刹那、ロジャーの脳裏にモンテ達が連れ去れた時の光景が甦る。


「次元魔法……そうか、結界は結界でも座標指定型の封印結界か。」


「どういう事よ?」


「この世界の東方に『八卦迷宮』という咒法が在る……おそらくモンテ様達は今、この森に居られるがこの森には居られない。」


「いや、訳分からん!どういう事よ(怒)」


「八卦迷宮はその特性として、指定した範囲座標つまり結界内部へ擬似的に構築した迷宮(空間)を重ね、対象を封じる咒法だ……端的に言えば、今この森は別の異次元と積層状態にあり、みんなはその異次元の方へ連れ去られたんだろう。」


「お手上げ……って事じゃねーよな?」


ロジャーは無言のまま、無造作に鋼鋏を取り出すと周囲の木々に感覚を向ける……。


「……此所は既に私達の知る風景とは違う。」


辺りの木々は静かに佇んでいる……まるで刻が止まっているかの様に。


音もなく、沈黙だけが過ぎてゆく最中……やがてマイケルが一点を見詰め、またしても口を開く。


「あれだな……あの一本だけ僅かに瘴気を吐き出している!!」


刹那、瞬きより疾く踏み出し、宙空へ跳ぶロジャー。


身体を捻る様に回転させ、短刀より更に小振りな鋼鋏を左右から交差し、振り抜く。


次の瞬間、地響きにも似た凄まじい 怨嗟の絶叫が森林内を駆け巡った!


聴く者の精神を蝕み、死へ誘う歪な叫び声……常人ならば数秒ももたないであろうその最中で小鬼達は微動だにせず微笑んでいる。


二人の背後では斬り裂かれた樹木が白く、ひび割れて石灰化しながら大気へ融けてゆく……。


残響の余韻を無視し己がスーツの埃を払いながら、ロジャーはマイケルへ視線を向け溜め息をつく。


「来たようだな……本命が。」


一拍にも満たない間の後、示し合わせたかの様に8時の方向へ振り返ると森の奥、さらに奥深く……優れた聴力を有する二人だからこそ拾えたのであろう、乾いた音のさざ波……。


やがてそのさざ波は盛大な破砕音へと変わりながら迫り、ついに姿を現した。


「………。」


体高約3m、全長約6mにも及ぶ巨大な蜘蛛の怪物……それが木々を薙ぎ倒して二人を威嚇する様に奇声を上げる。


「これはこれは……骨が折れそうだ。」


そう呟きながら更に笑みを洩らして一歩踏み出すロジャー。

だがその時、マイケルが静かに水を差した。


「コイツの相手は俺がする……こっちは生憎とまだ得物を持ってないんでな、お前さんは片っ端から木を倒せ。」


「……。」


溜め息をつき、名残惜しそうに大蜘蛛を見上げるロジャーであったが即座に後方へ飛び退いて踵を返す。


「私の(はさみ)は枝切り用ではないぞ。」


そう呟きながら、肩越しにマイケルの背中を見据えると僅かに陽炎が立ち昇るのが見えた……。


気を付けろ……そう言いかけてから、己れの浅慮を恥じる様に笑うロジャー。


「……任せた。」


その言葉と同時に大蜘蛛が前脚を降り下ろして襲い掛かってきたがバックステップでかわすマイケル。


「ああ、任せろ。」


刹那、マイケルの背後からロジャーの気配が凄まじい速度で遠退いてゆく。


(速っ!?ちょっとは心配しろよ。)


続け様に突攻を仕掛ける大蜘蛛を左へ避けながら、置き土産として蹴りを放つマイケル。

その瞬間、鈍い金属音が余韻を残さず鳴る……。


「やれやれ♪……堅たいじゃないか、やっぱり俺も早く専用の得物が欲しいな。」


緩やかに……淀みなく、ステップを踏み、拳を固めて構えるマイケル。

対して大蜘蛛は身体を震わせて激昂し、両の前脚を振り上げる。


生命宿らぬ偽りの森で、今まさに激闘が始まろうとしていた。




……十数分前、異空間迷宮。



周囲の石碑を見回し、俺は状況の把握を試みていた……。


駄目だ、MAPが表示されねぇ……ティンとのやり取りは出来るが索敵(センサー)関係の能力が使えない。

しかもネバーランドの起動(アクセス)が出来なくなった。


『おそらくこの異空間のせいだと思われます。』


ちくしょう、こっちのアドバンテージが完全に消えた……。


みんなも周辺を調べているが、その表情は暗いな。

仕方ねぇか……こんな体験なんざお初だろうからな、ティンの話じゃ、ここまで大掛かりな封印結界は稀有らしいしその上、行使出来る魔術士は世界でも一握りなんだそうだ。


『人類に使える魔術ではありません……これは最早、禁忌の領域へ踏み込んでいる?』


人類には使えないか……例えば、そう、リッチとかなら使えちゃうんじゃね。


まだ遭遇した事もないが度々話に聞く限り、禁忌の魔術とか簡単に出来そうじゃん。


……とか考えていたら、ダナンが駆け寄ってきた。


「こいつはかなりヤバイ、下手に動いたらはぐれちまう。」


「……だろうな。」


「お得意の手品で打開出来ませんか?」


ちょっとだけ懇願する様な眼差しを向けられてもな……。


「タネの仕込みも出来てねーっつの。」


周囲に建ち並ぶ石碑が完全な壁となって迷路を形成している、俺達が今居る場所は円形状で広く、全方位に道が続いているようだ。

見ようによってはスゴロクのスタート地点にも見えるな……。


「!?……ミシェル!!迷路に入るんじゃねーぞッ!!」


遠くでミシェルが吸い寄せられる様にふらふらと迷路へ向かっていやがる……ん?……聞こえてないのか。

そう思った瞬間、周囲に僅かだが靄?霧?が足下から漂ってきた。


「………。」


「ミシェル!!」


俺の怒号にも反応しないミシェル、これは……。


「イチ!!ミシェルを止めろ!!」


そう叫びながら走りだそうとした時、横目でダナンの顔が見えた。

無表情で歩き出している?……まさか!!


俺は渾身の平手をダナンへ叩き込み、身体を揺すって声を掛ける。


「………。」


反応がない、虚ろな眼で惚けている……駄目だ、か細い挙動で奥へ歩こうとしているのか。

ダナンを引き掴みながら振り返ると、イチタロウを引き摺ってミシェルが迷路へ入りかけていた。

慌ててマッコイとキャサリンが加勢に向かう……と、明後日の方向から馬の嘶きが聞こえた。

視線を回すと馬の姿はなく、続けて何かが割れる音が足下から聞こえてくる。


「なん……だとっ!?」


地面に無数の亀裂がはしり、中央から崩れ始めていやがる……だとッ!?


必死にダナンを引き、みんなが居る方向へ走る……が、抗う人間を連れて速く移動する事なんざ出来る訳がない。

崩壊がすぐ側まで迫る中でヒイヒイ言いながらダナンを引き摺って、あわやという、超ギリギリの所でマッコイが間に合ってくれた。


速攻で黄金のボデーブローをダナンへ突き刺し、ゲボの滝を振り撒いて気絶させると肩に担ぎ、ついでに俺を脇へ抱えて一足跳びで迷路の入口へたどり着いた……少しワキが匂ったが、命の恩人だ……黙っておこう。


先程まで居たスタート地点が今や奈落の縁に早変わりだ。

ほんの数歩、進むだけで暗闇へ墜ちてゆけるだろう。

果たしてあの下に底はあるのか?……あまり考えたくないな。


『おそらく行先は次元の間でしょう……二度と通常空間には復帰できませんよ。』


……聞きたくなかったわぁティンさん、おかげで底を覗く気力も失せたし足が震えてるよ?


『それよりも、ここから一刻も速く移動する事を勧めます。』


移動……どういう事だ?


『ワタシの観測も封じられているので、これは推測の域を出ませんが……先程まで居た地点はこの結界空間の中心区画だと思われます。』


区画……なんか嫌なワードだよ、それ……まさかとは思うけど、まさかね?


『いえ、マスターが今考えた通りだと思われます……それと、唯一使える物質鑑定で先の靄を調べました。』


靄?……嫌なワードpart2だな、だがこれは何となく予想がつく。

多分、吸い込んだ者を操る効能とかあるんだろう、ミシェルやダナンみたいに。

まぁ、そうなると何で俺やゴブリン達が正気でいられるのか?という疑問があるが、元々ゴブリン達は人間よりも毒物の耐性に優れているし、俺は以前カルパティーン洞窟でシオリさんのファミリアであるセバスチャンから解毒の拡張スキルを付与されたからな、既に抗体が造られてるのかもな♪


『いえ、事態は最初から楽観視出来る域ではありません……。』


………。


「みんな聞けッ!今すぐ移動するぞ、それとミシェルも気絶させて担げ!絶対に靄に触れさせるな!!」


俺の激にあっけらかんと振り返るマッコイ、その肩には既にミシェルも担がれていた……。


「ちょっとボス?もうやってるわよ、まーた惚けていたの?」


「話は走りながらする。」


焦っては駄目だ、だが迅速に動かなければならない……俺達はともかく、固まって迷路内部を走り始めた。



……ティンから聞いた靄の正体、初期症状は俺の考えた通りだった。

だがその末期は……吸い込んだ者をグールへと変貌させる特性を持っていやがった。

鑑定結果では二人が変貌を遂げるまで約20分、そうなったらもう助けられない。

更に靄を肌から吸収するだけで、その時間は短縮されてしまう。

しかし、もう助けられない……と言った通り、光明がない訳でもなかった。


その毒?ウィルス?はこの迷宮結界内でしか存在出来ない事が鑑定で判っている。

つまり、あと20分で迷宮を突破して通常空間へ脱出出来れば二人は助かるのである。


そしてもうひとつ、ティンの推測……おそらくこの迷宮は崩壊を始めている。

最初の地点が迷宮の中心で、それを囲む様に迷宮は構築されているのだろう。

幾つかの区画に分かれ、時限式で内側から崩れ落ちてゆく……二重で時間制限が課せられているのだ。


「うへぇ、ヤベェでねぇかそれ!!」


俺の横を走りながら、イチタロウが青ざめた顔でげんなりしている……匙を投げたいのは俺の方だよ。

だが今回は無理を通してでもやり抜かなければ全滅だ。


『マスター、あまりお勧めしたくありませんが、最悪の状況を想定してひとつ提案があります。』


………。


『………。』


分かったその提案を実行してくれティン。


『yes my Master.』


そんなやり取りをしていると不意に前を走るキャサリンが足を止める。


「ちっ……行き止まりか、さっきの岐路まで戻るぞ。」


「ちょっと待つだ。」


そう言いキャサリンへ目配せして距離を取るイチタロウ……意図を汲んだのか、キャサリンが両手を組んで構えた。


そうか……上空から迷路を俯瞰で見るつもりだな。

聳え立つ石碑は凹凸が少なく、登れそうもないがこれなら……。


次の瞬間、みんなの期待を背負い走りだすイチタロウ。


充分な助走をつけ、構えるキャサリンの両手に足を乗せて高く……高く跳んだ。


すげーなおい、10m近くは跳んでるぞ……とか思った途端、凄まじい閃光が上空で瞬く!


イチタロウが絶叫を宙に置き去りにしながら墜ちてきた。

ベチャッ!と地面に情けなく叩きつけられて、何やら焦げ臭い……。


「ううぅ……痺れただよ。」


どうやら大丈夫そうだな……とか思ったら、音もなく近付いてきたキャサリンがイチタロウへ渾身の拳をブチ込みやがった。


「靴脱げや……手ェ汚れただろ!?」


そこぉ!?そこにツッコムのキャサリンさん!?

左頬を押さえ、呆然とガタガタ震えているイチタロウちゃん……うん、怖いのは分かるよ、けど空気読もうね。


「上空に電撃とかのトラップが在るのか、イチ、何か見えたか?」


「い、一瞬だけここの外縁が見えただ……。」


イチタロウの話ではやはりこの迷宮は幾つかの区画に色分けされているらしかった。

それと通路が動いているのも見えたらしい。

岐路まで戻りながら、情報を整理し、打開策を考え続ける……が、あまり芳しくない。


最初の地点が崩壊したのはこの迷宮へ転移して約7分強って所か、少なくともあと3分以内に次の区画へ辿り着かなければならない。

加えてミシェル達のタイムリミットが15分……タイトなスケジュールだなオイ!!


「ちょっとボス!?」


聞き慣れたマッコイの叫びにまたも足を止める俺達……。


見るとさっき通った筈の岐路が姿を変えていた。

最初に通った時は二又だったのに、今は四又だとッ!しかも入口から通ってきた道が既に崩壊して無くなっている……除々に崩れていくのかよ!?


「右端から二番目……隣の道へ行くだよ。」


「ちょっとイチ!当てずっぽうは止めてくんない?」


今回ばかりはマッコイの言う通りだな、ちょっとイチタロウへの信頼度が下がるわ、萎えるわぁ~。


「いや、さっき上空から視た時、次の区画への道を覚えただ……速く行くだよ、多分また道が塞がるべ。」


ま、マジですかイチタロウさん……信じますぜ!?信頼度下がるとか思ったけど、信じていいんですね!?


「無条件で信じていいわリーダー……冴えてる時のイチはね。」


……イチタロウが言った通り、俺達が通路へ入った途端に石碑が目まぐるしく移動し、岐路が塞がれた……危うく詰む所だったわ。


「次の区画まではオラが先導する、みんなついてけろ。」


イチタロウさ~ん!!天才かお前ぇ!!


そこからのイチタロウの快進撃は凄まじいの一言だった。


「待った……ここの地形は覚えたものと違うだ。」


イチタロウの指示の下、暫く待機すると石碑が移動し、新たなルートが現れる。

普通に迷路へ挑んでいたら、その時点で詰んでいたんだろうな……少なくとも、すぐ後ろで崩壊が迫る状況の中、冷静に立ち止まる事等不可能だったろう。


「そこの曲がり角を行けば、次の区画が見える筈だ。」


その指示通り、突き当たりを曲がった先は赤色で『三又』の岐路になっていた……。


「イチタロウ先生?」


「ここもおかしいだ……最初は直通だった筈、場所的には真ん中だども……。」


「真ん中が正しいなら行くしかないだろう。」


時間がない、崩壊は俺達の背中を既に捉えているのだ。


だが俺の言葉に反して、イチタロウは唇を噛んで微動だにしない……そんな姿を見据え、キャサリンとマッコイも呆れつつ、動こうとしなかった。


「いいわ、ここまで来たらアンタの直感と心中するわイチタロウ……。」


その言葉におどけて追従するマッコイ……。


「そうだな、すまん迷わせちまった……俺もお前に命を預けるわ。」


……全員、三又の通路の前で立ち尽くしこれを睨みつける……睨み続ける。


後ほんの30秒でここは崩壊に呑まれるだろう……そうでなくともじりじりと足場が崩れてゆく。

崩壊が1mにも充たない所まで迫ってきた……あと20秒を切ったぞ。


「……。」


長い様で短い、心を責め立てる10秒がまた過ぎる。

残り……そう思った瞬間、僅かな音を聞き取りイチタロウが叫ぶ!!


「通路が動くだ!!みんな飛び込め!!」


イチタロウが走り出した刹那、確かに石碑が動き出していた。

三又の通路が直通へと姿を変えたのと俺達が突入したのはほぼ同時だった。

直後、横の石碑から夥しい鉄棘が現れ、通路の三分の一程狭める形で動いた……が直ぐに止まり、元の石碑へと戻る。


「まさか、あのまま突っ込んでいたらこれが襲ってきていたのか?」


初見殺しのトラップかよ……あっぶねぇ、時間制限内一杯で間に合った。


転がりこんだおかげで地べたにkissしちまったぜ。

一息つく間もなく立ち上がると前方でイチタロウ達の背中が見えた……。


次の瞬間、イチタロウとキャサリンが身構える?


「ちょっとボス!?……ここからは敵まで出るみたいよ。」


クスッと笑い、ミシェルとダナンを担ぎ直すマッコイ……三人の所へ進みでると、通路を塞ぐ様に異形の魔物達がこちらを威嚇していやがった。

一難去ってまた一難かよ……。


「みんなアンデットにされてる……多分この迷宮に呑まれた森の魔物達の成れの果てね。」


「オラ達が前衛をやる、道案内はもう出来ねぇから進路は任せただよ。」


残り時間はあと12分を切っていた……。



後編へつづく

エエ~後半へ続きます、また見捨てずに読んでくれたら嬉しいです。

宜しくお願いしますだ。

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