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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第四章 王都騒乱編  「残酷な真実との邂逅。」 中編 其一


 回想………モルダーの店にて。




 「俺にも分けてもらうよ……それと相談なんだがーー」



 「………。」 「………。」



 「修道院ホームでガキ共の面倒を見たりとか出来ないかな?」



 俺の提案……というか、思いつきとも言えない馬鹿な言葉にシスターだけでなくモルダーまでもが呆れからか深い溜め息をつく。


 まぁ、シスターの立場からすれば、それが出来るなら最初からしているだろうしな。


 だが問題があるなら俺にも事情の教えて欲しい所ではある、だからこそ敢えて聞いたってのもあった。


 シスターはそこら辺の思惑を察してくれ、俺が補足するまでも無く話を繋いでくる。



 「何だかモンテ様にあたしらの台所事情を聴かせるのは忍びないねぇ……。」



 「金の問題なのか?」



 「最も大きな要因では在る、エレメンツ教会は人々にとって、救いの仲介役なのさ……その前提としてあたしらは見返りを求めちゃいけない、あくまで奉仕活動、つまり非営利団体、組織じゃないと務まらない。

 もし対価を得たなら、それは愚連隊やギャングなんかと変わらないからね。

 だから個人の資産を持たないし、修道院ホームには上から年間施設運用費が支払われるだけだよ。」



 「なら奉仕活動の一環として教会のお偉方に別予算として請求とか………」



 「出来ない……そもそも今のガルマ派にそこまでの求心力や発言権が無いのさ。

 昨日も話したが派閥を取り纏める大司教の不在に加えて勇者すら居ないんだ、お察しだろう?」



 「耳が痛くなるな、安易に盗賊を選んだのが悔やまれるよ。」



 言外に謝意を含めた俺の言葉に対し、シスターは鼻を鳴らしてみせる。


 まるで「心にも無い事を言うな」と窘める様な返しに、少し凹みかけたわ……しかし。



 「勘違いしないでおくれ。」



 「………?」



 「確かに少なからず、勇者ってシンボルに期待は抱いていたさ……そりゃウチの人間全員ね。

 けどその期待をあんたが一身に背負う事ぁ無い、んなもんは見返りを求めるのと変わらないじゃないか。

 あんたはあんたの歩幅で走りな。」



 「……それって結局の所、期待されてんのか呆れられてのか、どっちだよ。」



 「両方併せて面白いって事かね一応。」



 面白い……か、「一応」の強調が半端無いが、それでも見限られている訳じゃねーらしい。



 「そうかよ……で、因みに聞くけど必要な資金はどれ位なんだ?」



 「ストリートチルドレンの数が現状約120ってトコかね、そこから算出した場合……施設の改装と修繕、長期的な生活用品や食料の調達に関わる商店のコネ、本腰を入れて教育を考えるなら基本的な読み書き算術を教える教員に掛かる費用、金金コネコネコネ金……資金繰りにいとまがないねぇ。

 初年度費用はざっと金貨150枚、2年目以降は安くあげたとして110枚が限度って所か。」



 「年間費用でそこまで掛かるのか……けどいやに具体的な数字だな、それもガキ共の人数まで把握してるのかよシスター。」



 「引き取れってのはつまり、孤児院の事だろ。

 それについて、あたしも考えなかった訳じゃないのさ……だがね問題はもうひとつあるのさ。」



 「……あん?」



 「あの子たちがあたしら大人を信用してくれるかだよ。」



 「…………。」 「…………。」



 それは……そうか、だがあいつらの窮状には帰れる家庭ホームが絶対に必要な筈なんだ。


 でも環境を充てがうだけじゃ意味がねぇ、信じて選んでもらわなきゃな。


 資金面、俺の手持ちを全ズッパしても三年が限度だな……なら他、他の地方にでも孤児院は無いだろうか?いや、国がクソな人狩りを表だって認めちまっている以上は、んな福祉事業なんざハナから期待しようがない。


 エレメンツ教会……救いの仲介屋ね……実情はギルドとズブズブなのは俺の目から見ても明らかだし、表立った慈善活動なんざ何ひとつしてないっぽい。


 まぁこれは村八分にされてるガルマ派が貧民街で活動しているからの話かもしれないな、相手が貴族か貧乏人かの違いだ。


 あ、いや……待てよ、相手の違いか……なぁティン、ちょっと相談なんだがーー



 『ーーー。』



 ◇



ティンとのやり取りを終え、俺は改めて二人を見やる。



 「ガチで孤児院をやるならガキ共が巣立つ迄は運営しねぇと意味がねぇ……なぁシスター、修道院改装と諸々の準備なんかでガキ共を全員引き取れるまでにどれ位の時間が掛かる?」



 「あんたは話を聞いてたのかい、初年度だけで金貨150枚なんだよ、無茶が過ぎるだろ!?」



 両手を広げ、呆れた様子でまたも鼻を鳴らすシスターだったが、多分俺が真顔でいたからか直ぐに目を見開きその表情を変える……いや、正確にはモルダーもだから二人だったか。



 「正気かい……?」



 「まずは金貨200枚を任せる、方法は俺個人からの寄付って形にすればいいだろ。

 けどそこから十年続ける為にガルマ派には全面協力が必要なんだ、だから俺に『奉仕』してくれるかい?」



 「………。」



 「改装は追々で寝食だけなら部屋も余っているし三日、いや二日で用意出来るよ……それと寄付は駄目さ、上に吸い上げられる。

 あくまであんたが出資者として、あたしらが奉仕活動の名目で協力するのが望ましい。」



 「理解った、次に孤児院運営について資格や認可が必要だったりするか?」



 「そんなもんは無いよ、国に依存してないからね。

 ただ教会本部には活動概要として報告義務はある、まぁ出資者はあんたなんだ、金を出さない以上は文句を言われる筋合いも無いね。

 ……で、だ、具体的にあんたはあたしらにどんな奉仕を望んでいるんだい?」



 「先ずはある人に会わなきゃ始まらねーんだ、下手打ったら初手詰みになるが……ガルマ派のみんなにはーー」



 「………?」 「………!?」



 「ーーってトコかな。」



 「それって色々な意味で大丈夫なのか?」



 モルダーが訝しげに呟く、まぁ無理もねぇだろう……意外だが、この世界じゃまだ余り例の無いもんだからな。



 「問題は無い筈だ、ガルマ派にはあくまで場所の提供と管理、仲介を頼むだけだからな。」



 「………。」



 「……異存は無いよ、ガルマ派のみんなにはあたしが責任を以て根回しをする。

  子供たちにも出来る限り時間を割いて心を開いてもらうさ。

 ただしあんたの話に乗るには、大幅な増築が必要になる、預かった金貨200枚はほぼ使い切るが構わないかい?」



 鬼嬉としてそう語るシスターの瞳で力強い光が揺らめいている……見覚えがある、多分それは覚悟だ。



 「ああ上等だ、じゃあ早速で悪いがこれから修道院に戻って細かく詰められる所は決めておきたい。」



 「いや……ちょっと待っておくれ。」



 俺の言葉尻をやや被せる形で遮り、シスターが何やら口籠り始めた……ほんの数秒間、そんな様子だったが『日和ってんじゃねぇよ!!』って意味を込めた俺の冷やかな視線に気づいたのか、彼女はやがて意を決したように事情を話してくれた。



 「………。」



 ……俺はここで初めてティガーの葬儀、ギルドへの遺体回収依頼の事を知った。



 駄目だな……ちょっと考えりゃ当たり前だろうに、俺は葬儀の事なんざ頭に無かった。


 無自覚に見えないフリをしてたのか、それともハナっから薄情な人間だったのか判らねぇや。


 むしろその事実を知っても尚、俺自身の感情が少しも動いていない事の方がショックだった。



 「……依頼はまだこれからなのか、なら俺も同行しよう。」



 俺はこの時からクエストへの参加を決めていた……もう一度だけティガーの死と向き合い、多分、いやきっと、自分の中で着けた筈の区切りを改めて着け直したかったんだろう。



 ◇


 ◆



 現在、深夜3時過ぎ 冒険者ギルド アームベルン支部兼酒場サルーンエル・コンドル・パサー



 ……探索クエスト出発まであと約2時間。



 木製のスウィングドアを押し開けると、間接照明によって頼りなく照らされた店内は昼間とはまた違う雰囲気を醸し出していた。



 「………。」



 「来たかモンテ、取り敢えず座れよ。」



 足を踏み入れた俺以下、ロジャー、ミシェル、華火の四人をギルマスが出迎え、カウンターヘ座るように勧めてくれた。


 途中、何気なくテーブル席ヘ目をやる。



 「……何か客が少ないようだけど?」



 「ん?ああ、時間も時間だからな、今この場に居るのはお前らと一緒に探索ヘ出るメンバーだけだ。」



 「………。」



 なるほど、日の出と共に出発だってんで俺達も集合してる訳だしな……そう考えるとむしろ人数が多い気がするが。


 とか考えていたら華火が他のメンバーを睨みつけて威嚇してやがる。



 「おい華火……。」



 ミシェルたんの一言で渋々?といった様子で振り返り、ムスっとした面でカウンター席に『ドカッ!』っと腰を降ろす華火。



 「シェル姉……あいつらが気持ち悪い眼で私を視てきたんだよ。」



 「ああいう手合にいちいち反応するな、余計に喜ばせるだけだろ。」



 何か引っ掛かる物言いをしつつ、華火の隣りに座って肩をバンバン叩くミシェルたん……こいつ等何時の間に仲良くなってたんだ?


 その一連の流れを見守り、ギルマスはカウンターの天板の一部を上げて中ヘ入ると俺の前までやって来る。



 「すまなかった、あんたには今回のクエストで色々と手を煩わせちまったな。」



 「最後の信用回復の機会と言われちゃあな……だがウチの看板娘ふたりがお前さんにそりゃもうカンカンにブチ切れててな、正直そっちを宥める方が骨が折れたよ。」



 「……重ねてすまなかった。」



 ギルマスは俺の謝罪を苦笑混じりで受けていたが、やがて真剣に居住まいを正し、今度はギルマスの方から改めて頭を下げてくれた。



 「こちらこそ悪かった……言い訳じゃないがウエストバークの一件、上から圧力が掛かったの含め、俺達も不本意だってのだけは理解ってほしい。」



 「ああ理解している、元々信用云々なんざクエストに俺達を捩じ込む為の方便だ。

 だからこれ以上、この話はしないつもりだ……それにまだギルマスには個人的に頼りたい事があるしな。」



 「頼りたい事だと?」



 ……一呼吸置き、ギルマスの顔を見据えながら言葉を紡ぐ。



 「……サラ・ストームの居所とか、な♪」



 刹那、微かにギルマスの眼が色めき立ったのを俺は見逃さなかった。



 「何故それを俺に訊く?ウォルターナ ギルドにでも照会すれば良いだろ。」



 「……本来ならあり得ないんだっけ?でも、今のあんたの動揺を見るに思い当たるフシはあるのかな……ギルマス。」



 「カマを掛けても無駄だぞ。」



 「じゃあ何で最初の一言が『何故それを俺に訊く?』なんだよ……端的に『他のギルマスに訊け』とか、それこそ『知らない』で突っぱねてもいいだろ。」



 「お前、何時もそうやって些細な文言で人の揚げ足を取っているのか?相当良い性格だな。」



 そうギルマスが溢した瞬間、ミシェルたんと華火の顔が明らかに引き攣った気がした……俺には全く身に覚えが無いんだけどね♪



 「じゃあさ、世間話程度の雑談でも良いからあんたの見解を聞かせてくれよ、何なら『後で』詳細な事を教えてくれても良いし……ね♪」



 ギロリと俺を睨み、ギルマスはややぶっきらぼうに黄色の果実酒が入ったグラスを置く。



 「あの女に関わる事はそのほんの些細なものであっても大問題、いや大災害に発展する可能性が在るんだよ……安易に手を出すべきじゃない。」



 「実に興味深いね。」



 「遊びじゃないんだ!……そもそも碧渦(の勇者)ってのは表向きはギルドに属しちゃいるが、名前以外の情報全てが秘匿、統制されている。

 いいか?全てだ、俺達ギルマスでも規制が入る程にな。」



 「シオリさんは顔見知りっぽいカンジだったけどな。

 確か勇者の義務を免除されてて一度もクエストに出てないんだっけか?まぁ『後々』聞くよ♪」



 「しつこいぞ!?……ったく、こっちはまだ頭痛の種が残っているのに、とんでもないネタをカマしやがって。」



 おっ、早々に話を切り上げにきやがったな……というか気になるワードが出てきた。



 「……頭痛の種?それって今回のクエストに絡む事なのか?」



 「ああ……その事で実はこっちもお前らに頼みがあったんだよ。」



 「あん?」



 ギルマスはそう告げ、カウンターに程近いテーブル席ヘと目配せすると……ひとりの少年?が立ち上がり、こちらへと歩み寄って来る。



 「おい、グレンの奴はどうした?」



 「それが……お通しの炒り豆が当たったとかで、トイレに籠もってます。」



 妙におどおどした少年の言葉に、ギルマスは溜め息を吐いて頭を掻いていたが、直ぐに気を取り直したのか俺ヘ視線を向けた。



 「紹介しよう、こいつはカルツ・ポビッド、まだ駆け出しの魔術師ソーサラーだ……あと先に言っておくが『駆け出し』なのはお前も一緒だからなモンテ。」



 ……いや、まだ何も揚げ足取ってねーし、まぁこの場に居るってだけで大体察しはつくけど。



 「……宜しく、ポビッドさん。」



 「あっ……か、カルツで結構ですよ。」



 何気なく差し出した俺の手をカルツ君は両手で握り、上下に揺らす……挙動が何か小動物みたいな奴だな。



 「それでカルツ君もクエストに参加するの?」



 「そのつもりなんだが、こいつと組んでいたパーティが土壇場でバックレちまってなーー」



 ……話を聞くと、どうやら今回のクエストは四人組フォーマンセルの4チーム計16名で出発する予定だったらしいのだが、カルツが所属していたパーティの他3名が申請時間ギリギリでキャセルをしたらしい。


 何それ?完全な嫌がらせじゃねーか。



 「でだ、モンテが一番現場に詳しいだろ?必然的にお前のチームが中心になって捜索し、他のチームは周囲の哨戒ヘ回ってもらう訳だが……グール相手の危険な仕事やまだ、連携が乱れるのをイヤがっちまって、みんなカルツの編入を断る始末なんだよ。」



 「ふ~ん……まさかとは思うが、一番危険な俺のチームに入れてくれって話じゃあねーよな?」



 「……ああ無理を承知で頼んでいる、どうか頼む。」



 このおっさん……ホント、何を考えてやがんだ?



 「………。」



 説明を受けている間、カルツは恥ずかしそうに下を向いてもじもじしていた……。



 「それで、もう一人居るって言ってなかった?確かグレンとか呼んでたかな。

 そいつも同じ理由でソロなのか?」



 「いやぁ~……その事なんだがーー」



 気まずそうにギルマスが口籠った、まさにその時だった。



 俺達の背中越し、テーブル席の方からガラスの破砕音が甲高く鳴り響く。



 「気に食わねぇ!!」



 回転椅子スツールに座ったまま振り向くと、ひとりの男が怒号を上げてこちらを睨んでやがる。


 ガタイだけじゃなく、面も厳ついその男はこれまた無骨なデザインの全身鎧フルプレートアーマーに身を包み、腰の左右に片手斧を携帯している……ベテランの雰囲気ってヤツだろうか。


 尚もがなり立て、絡むのに飽き足らず、事もあろうか俺に詰め寄って来やがった。



 「領主だかなんだが知らねぇがよ!!ペーペーの冒険者が従者を引き連れやがって、しかもその内『一匹』はゴブリンじゃねぇかッ!?

 ふざけんなよテメェッ!!!」



 「おい、そこまでにしとけよ……。」



 「あんたこそ黙ってろギルマス!不甲斐ないあんたの代わりに俺達が言ってやってるんだろうがッ!!」



 なるほどな、敵モンスターを神聖なギルドに連れ込むなって事か……ギルマスったら苦虫を噛み潰した様な面で舌打ちしたよ。



 「………。」



 カルツ君は完全に怯えているし、ロジャー、ミシェル、華火の三人に至っては静かにブチ切れてやがる……直ぐに鎮火しねぇと死人が出るな。


 そんな俺の心配も知らず、男は座ったままの俺を見下ろして薄ら笑いを浮かべている。


 一触即発……多分、俺が一言でも発した瞬間、問答無用で殴り飛ばすつもりなんだろうよ。


 ならお望み通り、再起不能リタイアしない程度で黙らせてやる。



 男以上に口角を引き上げ、俺は勝手にそれをケンカの合図として動こうとした……だが俺の害意みたいなものが明確に男の顔面を定めた、まさにその刹那だった。


 結果から先に言うと、俺は見事に殺る気を削がれ固まってしまっていた。



 「なぁ~にぃ〜ベテランが新人イビリしてんのさ♪」



 「あ、あんたは……。」



 俺に因縁をつけて来たゴリマッチョに……別のゴリマッチョがバックハグでみ、耳を甘噛みしてやがる!?


 意識を戦闘レベルで向けていた俺が、気配すら気付かない!?いやそれ以上にそいつの行動、顔に覚えがあった。


 そしてそれは向こうも同様だったらしい……。



 パッシィィィン!パッシィィィン!ヒ、ヒヒヒィィィーーーン!!



 ……まさかこの好感度BGMは。



 背中を駆け上がる悪寒に身震いも出来ずに固まる俺……そんな様子を耳を執拗に舐り(ねぶ)回しながらも捕食者の眼差しで見据えているゴリマッチョ!?



 「あれぇ……こんな所に居たのね♪アタシの王子様♪」



 更に増大する悪寒、俺が動けないでいるとギルマスが怪訝そうなツラで口を開く。



 「助かったよ……モンテ、こいつがさっき言ってたグレンだ……って何だよ、お前ら顔見知りなのか?」




 つづく

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