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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第三章 盗賊領主はハンコウする編 「私の銃爪は軽い……は周知の事実」

 ーーー正午過ぎ



 小型艇が低空で旋回しながら牧草を薙ぐその中心へと俺達は降り立つ。


 避難民受け入れの為の仮設住宅を建てる予定の土地……つまり、フェデルに戻ってきたのだ。


 メンバーは俺以下、シオリさん、ロジャー、赤詠の四人である。


 コルカド救援に行ってた仲間は参加させてない、みんな重傷だしな。



 衣服を強風でバタつかせ、上昇してゆくドラゴンフライヤーの船底を見送ってから改めてサルマン邸を見やる。


 結構な広さの丘陵に数十程のテントが設営してあった……今後の避難民増加を見越して早急に資材を手配しなけりゃならなかったから、取り敢えずの急場しのぎでシオリさんから軍事教練用の野営設備を借り受けていたのを思い出す。


 まぁ詳しい取り決めはサルマンとシオリさんで話し合ったようだ。


 ……と、感慨深く視ていたら、テント群から五人、おそらく警備にあたっている団員たちが騒ぎを聴きつけ、やや緊張した面持ちで走って来る。



 「領主様、お帰りになられたのですか!?」



 「たった今ね……こっちは変わりなかったか?」



 ……ある程度の事は予想出来るが、実際に現場で事態に対処している人間から聴く必要があるだろう。



 「それが……。」



 五人全員が口籠る最中、一人が話を切り出す……それによるとマッコイの脱走を始め、町の出入り口である石橋が落とされた事により、フェデルの孤立を危惧したジョーが厳戒態勢の強化を命じたらしい。


 その厳戒態勢の裏で今、確実に別の思惑で動いている奴が居る……何故ならギャンビット号に送られてきたという電文、支援要請自体は通常送信で事足りる内容であるからだ。


 わざわざ暗号にする意味がない、つまり重要なのは『暗号化した』という部分なんだろう。



 「ああ、そういやお前らの中に『アルソーブ』って名前の人居る?」



 フレンドリーな俺の質問に、互いに顔を見合わせ首を傾げる団員たち。



 「聞かない名前ですな……こう言ってはなんですが、傭兵稼業の人間は偽名で活動している奴らが大半ですので。」



 「いや、ちょ、待てよ……俺聞いた事あるわ、それってもしかしてアブさんの事じゃね?」



 「……アブさん?」



 「最初に領主様がやって来た時にサロンで呑んでるアブさんに絡んだじゃないですか、『アンタがここのボスか?』って。」



 ……あの時のおっさんか、あれからそんなに時間も経ってないのに随分懐かしいな、オイ。



 「アブさんなら団長と一緒に城に詰めてると思いますよ。」



 「……モンテ殿。」



 「ん?……ああ、ありがとう助かった、もう持ち場に戻ってくれて構わないよ。」



 会話の途中、赤詠に促され団員たちに礼を言って解放する……彼らは赤詠の風貌に若干訝しんでいたようだが、直ぐにその場を離れて行った。



 「こちらを謀る素振りは見られませんな。」



 「……つまり不審な点は無いと?」



 「それはモンテ殿自身がご存知でしょう……理由は推し量れませぬが、何やら確信しておられるご様子じゃしの。」



 『確信』か……おおよそ赤詠の指摘は正しい、実はこの地に降り立った瞬間に、俺はある程度の現状を掴んでいた。


 今までの経緯を整理するが、まずマッコイの脱走を手引きした人物の意図に関してだが、これはグール毒によって破壊衝動に駆られたマッコイを放ちフェデルを混乱に陥れる目的だったと見るのが妥当だろう。


 だが、実際にはまだ意識を残していたマッコイが脱走し、被害を免れた訳だが……後に大峡谷にやって来た経緯から、多分初めからコルカド方面にマッコイを誘導するのも込みだったのではとシオリさんから指摘を受け、俺もその意見に賛同した。


 そしてそう考えたら、送られて来たコルカドへの救援要請の書簡とキャサリンが生き残りの避難民から聞いたという町を放棄した時間との差異にも奇妙な連動、繋がりを感じざるを得なくなった。


 全ては……事の発端から仕組まれていたのか?



 『偽装された救援要請』


 『マッコイを利用した混乱と誘導』


 『大平原に展開されたグールの大軍と新型』


 『キャサリンが感知した魔獣?婆ちゃんたちが撃破したソニア、そして大峡谷で遭遇した存在』


 最後にもうひとつ、これは関連が不明だが、消えた二人の子供と現在ギャンビット号で隔離され眠っている、未知の生物?に寄生された子供……。


 殲滅したコルカドをエサにフェデルの戦力を分断し、叩こうとしたのか……しかも厄介な戦力である婆ちゃんたちを狙い打ちにしていた可能性すらある。



 ……まぁ、そう考えたら石橋が落とされたのはかなりのGJだった訳だ。



 さて、話は戻るが、俺がフェデルに着いた直後……ティンさんに頼み最大範囲で生体反応を観測してもらっていた。


 これには住民や団員、加えてアドからの避難民を含めた全員の安否だけでなく、グールやアンデッドの反応を確かめる為もある。


 何よりマッコイの枷を解き、今回の一連の事件を主導した人物の動向を探る必要があった。



 『報告……ステータス測定完了しました。』



 刹那、脳内に膨大な文字と数字の羅列が奔流が如く流れ込み、そして並び替わる。


 正しいデータへと姿を換えたそれを思考内で読みつつ……状況把握を更に高め、整理してゆく。



 【シオリさん、出たよ……内容を共有する。】



 【……理解した、こちらでも対応するから君はーー】



 現実時間にして数秒にも満たないやり取りを経て、やがて俺達は意気揚々と古城へ歩を進め始める。




 「覚えがある嫌な臭い……モンテ殿、どうやら招かざる者が紛れておりますな。」



 古城の正門、人の高さを越える石垣の前で足を止め、赤詠は鼻をヒクつかせ顔の皺をより中心へ寄せて冷たく呟く。



 「全然臭いしないけど、◯◯◯◯◯◯◯◯だ……俺は今回が初めてだが、爺さんは判るのかい?」



 「厄介な敵じゃよ、儂も本来の姿を見た事は無い……無いが奴の痕跡は幾度か目にした。」



 赤詠の後ろに居たロジャーも無言で眉を顰めている、それほどの敵なのか。



 「吐かせなきゃならん事が在る、絶対に取り押さえるぞ。ロジャーと赤詠は奴の退路を潰す役を頼む。」



 その言葉に二人は俺へ向かい静かに頷き返した……。



 俺はニヤリと笑いながら改めて振り返って正門をくぐり抜け、古城の大扉に両手を添えて押し込む。


 低く重い軋みが鳴り響き、開かれてゆく鉄扉……。



 ーー1番最初に目が向く大階段、2階通路に備え付けられた嵌殺し窓より陽光を取り込んで、幾つかの斜光が見覚えのあるホールを照らしていたが……それでも何処か昏く。


 俺達が踏み入った瞬間、こちらを注視する複数の視線で殺伐とした空気を感じる、が、しかし。



 「モンテの旦那、戻ってきてくれたか……。」



 その場に居た者達……鎧姿の十人、その内のひとりが俺に気付き、歩み寄って肩を叩いてきた、ジョーだ。



 「ただいま、何とか戻って来れたよ。」



 挨拶もそこそこな言葉を聞くや否や、ジョーは俺の背後に居るシオリさんへ眼を向けると、続けてひとりのおっさんを肩越しに一瞥し、頷く。



 「トラビス殿も来たって事は俺っちが送った暗号を読んでくれたンだね……そんでコルカドに向かった小隊は?」



 「すまん……ダナンは……。」



 「そうか……見込みのある奴だっただけに残念だ。」



 淡々とした声音を紡ぎ、幾許かの余韻の後、ジョーは目を伏せて頭を僅かに下げる……何気ない仕草だが、それが彼ら傭兵なりの『祈り』だったんだろう。


 気付けばその場に居合わせた全員がジョーに続いていた。





 「ーー昨晩、こっちでもかなりのトラブルがあってね……旦那には謝らなきゃならねぇ。」



 暫しの沈黙の後、意を決してジョーが切り出す。



 「見回りの人間から聞いたよ、マッコイの事……それで、だ……何でみんなここで雁首揃えてんの?」



 俺がそう聞くと、一瞬にして場が凍り明らかに団員たちの表情が曇った。



 「それは……まぁ、尋問だな。一応、この八人はマッコイさんが居なくなった時に所在が不明瞭だった人間だ。」



 「ふーん、じゃあもうひとつ聞くけど、今現在、この城に居るのはここに居る全員だけか?」



 「……ああ、今は在る事情で人払いをしてある。」



 「その事情、当てようか。」



 「!?……旦那、こいつは遊びじゃーー」



 「サルマンが居なくなったんだろう?」



 ジョーの言葉を遮り、放った『サルマン』の名にジョーだけでなく、周囲も微かな反応を見せる。


 さて、少し揺さぶるか……。



 「件のマッコイなら、今はギャンビット号で保護されてるよ。ンで本人から確認が取れた。」



 「……まさか。」



 「そのまさかだ……マッコイの拘束を解いたのはサルマンだよ。」



 ……場は至って静かだが、一瞬の内に動揺が十人全員へ広がるのが判った。


 視線がジョーに注がれている最中、彼は鎮痛な面持ちで俺を見返す。



 「……信じたくなかったが、やはりそうなのか?」



 「だとしたら、その……サルマンさんが改竄や破壊工作してたんだよな?じゃあ俺達への疑いも晴れたんじゃないか。」



 ひとりの団員のその言葉を皮切りに、各々の主張……とまではいかないが、意見が散発的に述べられてゆく。


 どれも懐疑的ですっきりとしない、まるで『疑念が晴れない』と言った表情でおよそ騒動の終息という方向の内容だ。


 皆がサルマンの旧友だったジョーに気を遣っていたんだろう……だがその時、アブソーブが待ったを掛けた。



 「どうやって逃げたンさ?今この町は孤立してんだよ。」



 何気なく緩みかけた緊張が、不穏さを増して引き絞られた気がする……。



 「それにジョー、あんたも薄々気付いてるんじゃないのか?」



 「……何が言いたいんだ。」



 「昨晩の騒動の時さ、1度サルマンが降りてきたじゃん?でも直ぐに戻っていったよね。」



 「………。」



 「その行動自体は大した事じゃないさ……けど俺っちもあんた程じゃないが、サルマンとは古い付き合いなんよ。今考えると可怪しいんだよね、あれだけ『事なかれ主義の昼行灯』を装いながら、誰よりもこの町の人間を気遣ってたおっさんが町の危機に、自分の手で何もせずに引き篭もるの?あの人が?違うんじゃね?」



 ジョーに同意を求める内容としてはサルマンの行動に不審な点は見受けられないと……俺は思ったんだが、アブソーブは躊躇い無く気持ち良い程に言い切っていた。


 いや、それよりもサルマンを疑っている方向性が事情をある程度把握した俺達に寄っている、意外と侮れないおっさんだ。



 「えーと、アブソーブさん?」



 「悪いね領主様、続けるよ……でだ、ジョーには悪いが、こっちも色々と手掛かりが欲しくてさ、実は同時進行で幾つか仕掛けたんだワ。電文をわざと暗号にして送ったのもそのひとつな訳。」



 「ん?暗号……暗号で得られる手掛かりって何だい?」



 俺の問に、燻し銀の厳ついツラのおっさんはニッコリと微笑んで、一息入れてから言葉を紡ぐ。



 「サルマンが姿を消す、消さないの有無だよ♪」



 「………どゆことッ(繋がんねーワ)!?」



 「いや、さっきサルマンを疑った動機さ、まぁほぼ言い掛かりに等しいよね。本音言やぁ、今回の騒動の起点がコルカドから始まってると気付いて……いやさ、仮定したら、先ず本命は立場的に逆算してサルマンなのよ。」



 「………。」



 「コルカド、フェデル間のやり取り、何か悪戯を出来る立場の人間ってジョーもそうだけど数人位な訳さ。んでだ、それぞれに仕掛けた……だけどサルマンの場合、疑った手前、やっぱ古いダチなのね。どうしても普段のアイツと昨日の行動との乖離が無視出来なくて、仮定ついでに『心変わり』じゃなくて『成りすまし』で考えてみたんよ。」



 「……‥つまり?」



 「前提としてフェデルは孤立してて、尚且つマッコイさんの部屋を訪れた犯人は騒動直後に逃げられないと悟ったのか、部屋の鍵をわざわざ戻す神経質さを見せてる。だから暗号の指示でギャンビット号にコルカドへ向かってもらった場合、住人がひとりでも救助出来れば何らかの証拠が露見するかもしれないプレッシャーを与えられると思った訳。……神経質なヤツ程、自分の優位性を保ちたがるからね、逆にサルマンのブランド(姿)を捨てる事で裏切り者が不可解なりに逃走したと偽装出来るかもしれない。」



 つまり、『コルカドの救援』『それを暗号化した』という事実をわざと疑惑のサルマンに洩れる状況にしたって所か……。



 「正直、仕掛けの中で一番荒唐無稽で可能性の低いものが唯一当たるとは思ってなかったよ。」



 (なるほど、それでサルマンが消えた……一番当たって欲しくもなかったんだろうな。)



 ロジック的に考えてフェデルからは出られない、多分隠れる可能性も監視などで潰し、ジョーの為にサルマンの疑いを晴らしたかったのだろう。



 「待て、さっきから何を言っている?『成りすまし』?証拠も無しに状況だけで疑うのは全く理解出来ないぞアブさん!?」



 「確かに間違ってるかもな……けど例え推論だろうと『状況証拠』も次点の確証だ、瀬戸際に居るかもしれない俺達にとっちゃ縋るべき藁、根拠なんだよ。」



 おいおい、狂った主張すんなこの人。



 そんな印象を思い、二人を静観するつもりでいたんだが……次の瞬間、事態が急に動いた。



 「まぁ次点云々は冗談なんだけどね……それよか確度の高い言質は取れたし、今までのは長ったらしい説明だよ。」



 「………?」



 言質?……アブソーブの言葉に俺を含めほぼ全員が目が点になる最中、シオリさんだけが薄く笑う。


 しかも何時の間にかひとりの団員の背後に立ち、そして……差し足る抵抗もなく、後頭部に銃を押し付けた。



 「な、何を……。」



 「動かない方が良いぞ、私の銃爪は軽い。」



 昏い笑みを称え、『待ってました!!』と言わんばかりに銃口をゴリゴリ押し付けると……シオリさんは若干戸惑っているアブソーブに話の続きを促す。


 まぁ、俺も多少焦れてはいたけどさ……そんな空気に対し、改めて咳払いしてからアブソーブはその団員に向き直る。



 「お前さっき確かに『改竄』って言ったよな……それは何を指して言ったんだ?」



 「えっ?……あ?……言ってないですよ、それにサルマンさんが全てやったんですよね?今まで散々アブさんがそう言ってたじゃないですか!」



 「いや確かに聴いたさ……まぁサルマンがやったってのは俺っちが言ったよ。けど……あくまでマッコイさんの枷を外したとだけだ。」



 「………。」



 「それ以外の事は具体的に話していない、知ってるヤツは当事者くらいだろ……お前さん、一体何を指して『改竄』と宣ったんだい?」



 そう問い詰めた瞬間、今まで焦りの表情を貼り付けていた団員の顔から、不自然な程に感情が消え失せた。



 「安心しろ、弾丸はゴムだ死なん……身の潔白を証明する為にも受けてみると良い。ただしキシリア印の『聖水』入りだ、化け物、特にシェイプシフターには致死の毒だがな。」



 次の瞬間、銃爪の微かな音色に釣られ、その団員は奇声を叫んで、人間ではおよそ不可能な跳躍でシャンデリアへ飛び移っていた。



 「……ギギ。」



 「馬脚を露わしたか……回りくどいな、やっと問答無用で駆逐出来る。」



 ……おいおい、お姉様ったら、殺したら意味ねーだろ、これからが厄介なんよ。




 つづく

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