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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第三章 盗賊領主はハンコウする編 「やれやれだぜ(きりっ)と調子に乗るヤツ程、内心で空気読んでる。」


 「おかえり♪陛下との謁見はどうだった?」



 ―――魔王の元からダロスの管理する次元空間へと戻って来た俺に、嬉々とした声が向けられる。



 「ダロスさん、あんたは陛下の事情を全部知っているんだよね……あの姿も。」



 『あの姿』、陛下の言葉から恐らくは……。


 言い淀んだ物言いに対し、通路で待っていたダロスは微笑みを変える事なく困った様に人差し指で右頬を掻くと、淡々とした口調で告げた。



 「見たんだね……そう、じゃあやっぱりキミで間違いないんだ。あれはね、今は別次元に隔離されている。」



 「………。」



 俺の沈黙に小さく嬌声を洩らして、ダロスは一言『戻ろう』とだけ呟き、踵を返して歩き始める。


 その華奢な背中に視線を向け、追従しつつ俺はあの威容を今一度思い出していた。


 深淵の底から天を衝く絶唱……映像としてかなり緩和していたが、それでも心を灼かれる様な絶望感に苛まれた。

 別次元、別次元か、もしあれが地上に解き放たれたなら、『彼』の声を聴いただけで全生物が死に絶えるかもしれない。


 ……だが、引っ掛かる。


 ダロスの『キミで間違いないんだ』という言葉と、何よりあの声を以前何処かで聴いた気がしてならなかったんだ。


 去り際、腕組みで見送る陛下の表情を思い返す。


 アーガマ関連で感じた印象とその根幹は似ている気がする……端的に言えばゲームの進行を望む友達みたいな距離感?いや、それは未だ部外者意識でこの世界を斜めから視ている所為だろう。


 まだガキみたいに事実から無意識下でも目を逸らそうとしている、自分には荷が重いって甘さだ。


 予感がする……この世界、神と悪魔を巡る戦いが顕在化したなら俺は……とんでもない絶望に直面するんだと。



 「………。」



 暫く足下を見ていたからだろう、ダロスの執務室に着いたのに気が付かなかった。

 意識を切り替えよう、取り敢えずは目先の問題に取り組む、ナボルの住民には悪いが先ずはこの地方からグールを駆逐する様に動いた方が現実だろう。


 俺は勇者でもヒーローでもねぇんだから。




 ――扉が押し開かれダロスに次いで応接室へ入ると、ロジャーを始め仲間全員が神妙な面持ちでソファーに座っていた。


 が俺の姿を認め、ロジャーが立ち上がって深く頭を垂れる。



 「モンテ様ご無事ですか?」



 うん、一瞬だったが俺にキレ散らかしてた表情を見せない様に頭を下げたな?ダロスに対して相当腹に据えかねてたのか、だが俺の不利になる状況にしないよう配慮してくれているのはロジャーらしい。


 他の面々からはそんなロジャーの所作に苦笑している様子が見て取れる。



 「スゲー体験だったな、魔王本人との謁見なんざなかなか出来るもんじゃねぇだろ!?」



 「そりゃそうだべ、魔物でも滅多にお目に掛かれねぇよう。」



 おっ?ミシェルたんとイチがフォローするなんて、待ってる時間が余程辛かったんか?



 「……。」



 一息吐いてソファに座るとタイミングを見計らっていたのか、ゲテゲテが脇から現れ冷めきったティーカップを下げて新しいお茶に替えてくれた。


 誰もが話を切り出す機を窺い、一時の沈黙が流れたが……居た堪れなくなったのか、多少強引にミシェルが堰を切る。



 「ンでよ〜魔王とは何話したんだ?……あとお前の素性な、異世界の人間って件、いい加減に話せ。」



 「何だよ覚えてたのか、まぁ魔王陛下とは……ナ・イ・ショの話♪だから言えないお。」



 「おいテメェ!?ふざけーー」



 「待てよ……異世界人ってのは事実だ、俺はこの世界の人間じゃない。」



 「………。」



 「言っておくが壮大な貰い事故みたいなもんだから俺にも経緯は判らんし、詳細も話せないぞ。(まぁ嘘ではないだろ……)」



 それはもう堂々と言い切ってやった、そんな俺に対しミシェルたんは気圧されたのか、おずおずと次の言葉を接ぐ。



 「テメェは……よ、それで良いのか?その、帰りてぇとは思わねぇのか……自分の世界に。」



 「全然!お前らとツルんでんのが楽し過ぎて忘れてたわ。」




 馬鹿みたいな宣言だと自分ても思う……楽しい事ばかりじゃねぇし、ゲームみてぇに都合も良くねぇ。


 ……だが紛れもねぇ本心だよミシェルたん。



 俺の顔をまじまじと見つめ、何とも言えない表情を浮かべているミシェルとその様子を邪悪な微笑みで見ているロジャー&イチタロウ、シュールな絵面である。



 『…………。』



 も、勿論ティンさんに感謝してるし楽しいからね?



 『何も言っておりませんが?……ですが私もマスターの言葉を肯定します。』




 「……ンじゃあよ、もうここ(魔王城)に用はねぇよな。次はどうすんだ?ナボルの直接な手掛かりもねぇし、予定通りアームベルンに帰るのか?」



 「次か……ギャンビット号との合流は明日だし、例の魔獣に関しちゃ俺達には直接関係あるワケでもない、確かに魔族領でやる事は現状無いな。」



 言葉と共にチラリとダロスを見やるが表情がまったく読めない。



 「ふむ、こちらとしても魔獣関連で協力を仰ぐつもりは無い。だが鳳禅殿に関しては違うな……さっきから空気と化してるそこの三人には協力してやってくれないか?」



 空気……お通夜みたいな面してる華火、水蓮、赤詠か正直面倒だ。


 二人は吝かじゃないが未だ華火に関しては気にくわない、初対面の印象最悪だからな。


 しかし、だが断る……的な雰囲気でも無い、それなりにお茶を濁した言い方だったがダロスが何らかの強行手段を持っていないとも限らん。



 「……やいテメェ。」



 「………!?」



 「ま〜ただんまりを決め込むのか?一体どうしてぇんだテメェはよ。」



 苛立ち全開で吐き捨てると華火は肩を震わせて俯き、脇を固める赤詠&水蓮が色めきだってソファーから身を乗り出す。



 「モンテ殿その様なーー」



 「黙れッ!!」



 「ーー!?」



 一喝したその瞬間、二人の鬼は牙を軋ませ腰が浮いた状態で押し黙る。



 「お前ら三人の中で、そいつが主従関係の頭だってのはバレバレなんだよ!」



 「………。」



 「言っておくがそいつが俺に取った嘗めた態度、言葉を忘れちゃいねぇぞ?そんなバツの悪いとはいえ、お願いする立場の相手に、従者が対応するってどういう了見だ。……それともこの世界じゃ主君が何もしないのが美徳なん?」



 不快感丸出しだが正論だろう、当事者が頭も下げず、ふんぞり返って……はいないが、目の前で無視かまして「協力してね。」は都合が良過ぎる。


 逆に俺がふんぞり返って鼻息荒くドヤっていると、ミシェルたんが『お前、鬼女に当たりteeeeな……。』等と小さく呟いてたが、ここは敢えて無視してやったゼ。



 「わ、私は……」



 「………。」



 「出来る事ならもう一度、あの日何があったのか……父が本当に『敵前逃亡』したのか確かめたい。」



 「んで、仮にホントにお前らを見捨てて逃げてたならどうすんだ?」



 「小僧ッ!!これ以上の姫への侮辱は許さんぞ!!」



 そう俺に対し息巻き、赤詠が腰に佩いた刀の柄に右手を添えた刹那……その上から更に手を乗せて制する華火。


 居住まいを正す様に起ち上がった彼女の顔は何とも居た堪れない感情を滲ませていたが、やがて深々と頭を下げる。



 「そうだとしても……私の父上だもの……助けて、助けてあげたい。」



 助ける……か、それは鬼として死なせてやるという事なのか?


 あのマッコイを圧倒したという黒鬼相手に、ましてや真実なんざ確かめ様が無いが……。




 ーー実の所、この時の俺の心境はほぼ協力を断る方向で固まっていた。


 何故かって?華火の表情を更に歪め、愉悦に浸ろう……というのは建前で、変わり果てた父親の姿に目の前のコイツが耐えられないんじゃないかと、勝手に思っていたんだ。


 しかし、しかしだ!!俺が口を開こうとした瞬間にそれは目に入ってきた。



 「………。」



 俺達の様子を窺いながら、何故だが落ち着かないロジャーの表情……珍しい、何だ!?何をそんなに動揺している!?


 完璧な所作、作法に定評が有る筈のロジャーさん、ほんの僅かな差異だったが、どうしても気になった。


 そして気付いてしまう、いや思い出した、事ここに至る迄……それこそ俺が最初に意識を取り戻した瞬間から、もう一人、居るべき者が居ないのだ!?



 「………。」



 俺は敢えて考えるフリをして、華火達に背中を向ける……と、華火が『お願いします、どうか連れて行って下さい!!』なんて懸命な声音で叫ぶのが聴こえた。



 【ロジャー……ガーチャは……お前の恩人は何処に行った?】



 ーー念話を開き、ロジャーにのみ思考加速五倍でリンクさせる。



 【そ、それは……モンテ様、申し訳在りません。】



 猛烈に嫌な予感がする……俺は悩むフリを織り交ぜつつ、ちらりとダロスへ視線を送る……と、可愛らしい真っピンク色の髪の美少女がオッドアイの瞳を撓ませて、ニチャアと笑いかけてきやがった。


 ロジャー曰く、俺が目覚める少し前にガーチャは完全に心を壊し、発狂したらしい。


 そこでダロスが相談を持ち掛けてきたのだという。


 ここはダロスの工房でもあり、ラボでもあると……条件を呑めば治療を受けさせてやると迫ったのだとか。


 『余りにタイミングが良過ぎる』、当然の事ながらそう抗議したロジャー以下面々に対しダロスはさも当たり前の様に、『転移の負荷に耐え切れないのは判っていたが、教えてやる義務も無い。』なんて宣った。


 が同時に、心を一度完全に壊した方が低いリスクで治療出来るとも言ったそうだ。


 ダロスの説明によれば、精神とは膨大な数且つ精密に組まれた歯車と例えられるらしく……幾つかの仕組みが壊れようと独立独歩で各々がその役目を果たそうと働き続け、却って深刻な度合いで摩耗してしまい取り返しが利かないという。


 そして肝心要の条件とはふたつあり、全員がこの状況を俺に黙っている事が一点。


 もう一点がロジャーに対し、ダロスの望むタイミングで俺へ『反対意見』を述べるというものであった。



 【申し訳在りません……ですが、ですが私には……】



 【なる程ね、ダロスはハナっから華火達三人へ協力させる為に謀ってたのか……因みにだけど、この事は華火達も承知してるの?】



 【いえ、箝口令は告げられてましたが、私への条件は聴いていない筈です。】



 ……ティンさんやーー



 『鬼人族三人の鼓動、脈拍、呼吸から動揺は見られません。ロジャーの意見は正しいと思われます。』



 食い気味の解説ありがとさん……つまりはアレだ、俺がこのタイミングで気付く事も折り込み済みで、尚且つ俺が土壇場で天の邪鬼な逆張りをすると踏んで仕掛けたのか。


 完全に裏目ったわ、目覚める前の俺とティンの表層意識でのやり取りも監視の目が外れた一因だろう。



 『…………。』



 まぁ……仕方ねぇわな、こりゃあよ。



 次の瞬間、俺は意を決して振り返り、華火を睨みつけ……いや、見据える。



 「………?」



 「良いだろう……お前の覚悟、聞かせてもらったゼ(きりっ)」



 ふぅ……やれやれだぜ、オイ。





 つづく

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