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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第三章 盗賊領主はハンコウする編 「何時か聴いた音色」後編



 「真意か……。」



 静かに白煙をくゆらせ、その行方を目で追いながら魔王のぶチーは俺の言葉を反芻するかの様に呟く。



 「俺達は悪魔の使徒を殲滅し、勝利した……だがそれは連綿と続く神々の代理戦争において切り取られたものの一部に過ぎん。」



 「数百年単位で繰り返される……か。」



 「数えるのも馬鹿らしい殺戮だ。敵も味方もな、だからこそ全てが終わった後に俺の精神は耐え切れなかった……そんな俺に友が、元の世界へ戻る様に勧めたのは当然だったろう。」



 (……当初は帰還するつもりだったのか?)



 「だがよ、その選択肢を受け入れる訳にはいかなかった。俺も当事者としてこの世界の行く末と過去を確かめなきゃならん。だから不死に近い種族に再転生したのさ。」



 「正直そこまで拘る理由が解らない……んですが?」



 解らない、素直に吐露した俺の本音に対し、陛下は目を細めて微笑む。



 「それは君の手がまだそこまで汚れていないからだろうな。俺達の前も、その前も、更に遡ってエレメント教や現在の国家群が存在していなかった頃から続き、そして俺達以降も繰り返される……くだらん代理戦争に巻き込まれ、事情も知らずに死んで逝く人々の数を想像出来るかい?」



 くだらないーー、穏やかな表情とは裏腹にその瞳は微かに揺れていた。


 指摘されれば確かに終わりが無い様に思えるが、いや、なら悪魔側の事情ではどうなのか?


 そんな俺の思考を読んでいたのだろう、先回りする様にのぶチーが返答を切り出す。


 ……過去に勇者が駆逐された事例が二度有ると。


 結果、多くの国家と生命が失われた……だが陛下曰く地上から一掃されたか?と問われれば疑問符が付く規模であったらしい。



 「まぁ、どっちも最終的にどうしたいのか意味不ですけど……。」



 「うむ、ならもうひとつ、勇者を通じてこの世界に起きる技術革新、今代の銃器や飛行艇、魔術体系と科学技術の複合を君はどう見る?」



 ちょっと腑に落ちないワードの問いだ……余りに詳細が過ぎませんか陛下?


 先程ダロスは魔王の千里眼によって魔族領の観測を行っていたと言い、同時に人間領の話にも探りを入れていたが?



 「待って下さい陛下……何故そこまでの事情を?ダロスさんの話では人間領の事は知らん筈では?」



 「ダロスの言葉を鵜呑みにしたのか?可愛いな♪……ヤツが俺の能力を含め、ありのままを話す訳がないだろ。」



 「………。」



 「そうあから様に閉口するな、千里眼の性能以外はだいたい合っていたぞ。それに能力も限度があるしな、情報収集の手段なぞいくらでも有ろうよ。今こうして君に会っているのもその一環だ。」



 限度……ね、まぁ、あのダロスが虚実を混ぜて保険としているのは理解出来るし、手間を掛けて情報を集める辺り真実なのかもしれない。


 ダロスに関してはもっと注意深く、それこそティンさんに観測してもらうべきだったわ。



 『視ておりましたが?勿論ウソだと判っていましたよ。』



 なるほど……何時もの聞かれなかったから、テヘッ♪ってやつか。



 『…………。』



 「すいません……話を戻しますが陛下の質問、その意図が判りかねます、魔術や科学という件なんざ丸っきり知らないですし……。」



 トボけたつもり等無い、俺は本当に陛下の問い掛けに対して戸惑っていた。


 勇者を通じて持ち込まれた技術の革新?確かにギャンビット号の動力やフォルムは俺からしたらファンタジーだし拳銃も馴染みがない、魔術に至ってはそれこそファンタジーだろうよ……いや、違うな、多分それら単体を指しての問い掛けじゃないのか?



 「すまん、突拍子もない話だったな。少し角度を変えるか……ではモンテ君、国の中で最も技術が使用され発展する界隈はドコだと思う?」



 ……いや、だからまだ突拍子もねぇってばよ。



 「うーん、それは技術の分野じゃなくて『場』という事ですよね。……なら生活?文化的な暮らしってヤツの中じゃないですか。」



 「君の答えは『大衆』か、不正解だな。」



 「………?」



 「確かに国民の暮らしに転用される技術は多岐に及ぶが、それらは最終的な受け皿に過ぎないんだよ。」



 「……いや、先ず良い暮らしが一番でしょう?」



 「そいつは目先の視点だ、そもそも質問の意図を履き違えている……いいかい?答えは例外なく『軍部』と『宗教』だ。」



 「………。」



 軍部と宗教……ざっくり言えばそのふたつは武力と思想の違いがあれど、切っても切れぬ密接な関係にあり、手段として行き着く先は戦争であると魔王のぶチーは述べた。


 そして技術の最先端とは両者の場で更新され、政治を経て何世代かの型落ちが大衆の生活に反映される……らしい。


 懇切丁寧に一例を交えて小一時間も説明してくれた、なんならちょっと嬉しそうに語ってた。


 だがやっと、ここで俺は先程の陛下の質問の意図を理解出来た……と思っていた最中もーー



 「異世界の技術をさぁ、余りに短期間で兵器や魔術に落とし込んだから、一般生活に反映されないのは納得する。けどな……物作りってもんは最初に生み出した物を土台にして改良、発展していくもんだろ?チャリも作れねぇ現地民に飛空艇の図面見せて理解出来るの?拳銃にしたってムズいよ♪銃身が暴発しない強度を保ちつつ、人が取り回し可能な重さに収めないと反動もスゲーし、何より弾丸と口径を寸分違わず合わせた空洞とか溝をどうやって鉄から削んだい?火縄銃でも脅威の技術力だろうにリボルバーなんてミラクルだと思うなぁーー!!あとetc etcーー」



 「あ、あの陛下……何か、喋り方に威厳が無い……ですよ?」



 俺がそう話に割り込んだ瞬間、魔王陛下は我に返ったのか、若干しどろもどろになりつつ咳払いを挟んで間を置く……この人(魔族)、実は饒舌に語るタイプ?


 けど陛下の指摘はおそらく正しいだろう、以前シオリさんに自身の武器である神威について訪ねた事があった。


 その時に彼女はキシリア派の兵器開発局だか機関に『要望』を出したと言っていた……あのガサツなお姉様の性格上、現代科学すら上回る銃器の製作に必要な数多の技術や環境の段階から主導するとは思えない。


 またただの思いつきを盛り込める程の開発力があったのかは陛下の態度から見ても疑わしい、あとは転生時に冗談っぽく言われた特典、神級武器の実物をデッドコピーしたというケースだが前述した理由から不可能だろう。


 この瞬間、ふと在る疑問を陛下ㇸぶつけたくなった。



 「以前の勇者達で拳銃……もっとシンプルな銃火器でも使用していたヤツは居ませんか?」



 「過去にも同じ様な考えの者が出てきた筈だと?流石に目聡いな、勿論答えを知っているよーー」



 「………?」



 「ーーだが教えられない。」



 教えられない?唐突に告げられた言葉で俺と陛下の間に不穏な緊張が走る……敵意は無い様だが冗談とも思えない、真剣な眼差しを向けられた。



 「それはどういうーー」



 「やっと核心だよモンテ……そしてここまでが俺に出来る譲歩、問答だ。」



 そう言い放ち、煙管を咥えて穏やかに目を閉じたほんの刹那、陛下の身体にノイズが走りその像が歪んだ様に視えた。



 (一体どうゆう事なんだ!?)



 『目の前に居る魔王のぶチーは本体ではないのでしょう。』



 意味が判らない、だが魔王は何も言わず、再び瞼を開け、ただ俺を見据えるのみだ……。



 やっと……つまりは核心ってのは陛下が俺に伝えたい本題で、今までのはその為の遠回しの問答だった?そして譲歩という言葉。


 朧げに浮かぶ仮説の片鱗、証明の仕様が無いが、この考えが正しいのか?



 「……陛下なら、今俺が追っているグールの元凶の正体と居場所やナボルの住民がどうなっているのか知っているのでは?」



 この空間に来てから何度目かの、しかし重苦しい沈黙が暫し訪れた。



 「………。」



 そして返って来た言葉はやはりと言おうか、予想通りのものだった。



 「……教えられない。」



 『知らない』では無く……『教えられない』、つまりは真相を把握しているが教えられないと云う解釈にも取れる、では何故か?



 「ありがとうございます陛下……その言葉がここに来て一番の収穫でした。」



 陛下から視線を外し、吸い殻を携帯灰皿に押し込んでズボンのポケットへ仕舞う。


 そんな俺に対し、陛下の方より鈴の音に似た微かな笑い声が洩れ、立ち上がる気配がする。



 「……少し庭に出ないか。」



 涼やかな横顔で俺の脇を通り抜け、踏み石へ降りるとそのまま素足で玉砂利の中へ進む陛下。


 言われるまま俺も続いて降りると正対する様に陛下が振り返る……。


 刹那、陛下の瞳を介して俺の脳裏にビジョンが流れ込んできた!?


 一瞬、いや長時間見せられた様な錯覚にも囚われる……『それ』は途方もない深淵の闇の底で幾重もの鎖に繋がれながらも躍動し、思わず慄かずにはいられない巨大過ぎる咆哮を上げている。



 (……この声、何処かで……ティン、今俺が視たヴィジョンを記録出来るか!?)



 『ヴィジョン?何の事でしょうか、マスターの視界に特段の変化は見られませんが……。』



 気付いていない?……違う!?俺の脳か精神に直で送られてきたんなら、ティンの観測に引っ掛からない訳がない、寧ろ掻い潜って送られたと考えた方が自然だ。


 俺は今、眼前で佇む魔王が恐ろしい……けどその人柄を垣間見た事で恐怖を抑え込もうとしている。

 そんな俺の様子に、のぶチーは寂しそうに微笑み掛けてから、言葉を紡ぐ。



 「悍ましい姿だろう……すまない、驚かせるつもりではなかった。」



 「………。」



 「俺はね、モンテ君……物知り顔で、たった一人の『友』の気持ちすら汲んでやれなかった道化なんだよ。」



 「どうして貴方は……いや、それよりもその友達はもしかして貴方同様にこの世界に残られたのですか?」



 「ああ、再転生をしてな、何の種族かは多分、今君の考えている通りで合っている。」



 リッチか……やっと繋がった、そして今までの陛下の遠回しな言動の数々、その答えにも確信が持てた。


 陛下も俺達同様、神々から何らかの検閲規制を掛けられているんだろう。


 しかも俺達の比でない縛り、この世界に残る以上、そのまま解放しねぇって所か……。


 そこで先程の質問だ、陛下が教えられないという事は神の検閲が加えられているという事と同義だ。


 つまり現状で俺を取り巻くトラブルに神にとって都合の悪いもんが含まれているというワケだろうな。


 終わりの見えない神と悪魔の壮大なお遊戯会の渦中で陛下は俺に何を望んでいる?判らないがいずれ解き明かさないとならない時が必ず来る……気がした。




 つづく

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