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G・G SKILLで異世界奇譚!  作者: 下心のカボチャ
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第三章 盗賊領主はハンコウする編 幕間 「初対面でイキり倒した者同士による聴取」


 「ダナンが……そうか、惜しいの。」



 グールの消失後、直ぐに駆けつけたナーサは事の顛末を聞くと静かに天を仰いだという。


 もっと今回の救援作戦に慎重であるべきだった…‥今更後悔するなど烏滸がましいと理解しつつ、やはり何処かで若い世代の死に対しナーサなりに自責の念を抱かずにはいられなかったのだろう。


 傍らではキャサリンが重傷を負ったマイケルの応急処置を行っていたが、その余りの重傷度に眉根をひそめ、喋れないマイケルを一方的に叱責しているようだ。


 そんな二人を他所にナーサはバツの悪そうな表情を浮かべているマッコイへ少々過剰気味とも言える咳払いを向ける。



 「……で、何故ヌシがここにおる?聞けば此奴マイケルの怪我も半分はヌシがやったようじゃが?」


 正座で背中を丸めているマッコイにナーサがそう問うと、処置の手を止め、便乗する様にキャサリンも捲し立てる。


 しどろもどろになりながらも、マッコイは自分には殆ど記憶が無く、気づいたら目の前でキャサリンがダナンに襲われていたのだという。



 「ただ『行かなきゃ』っていう強い焦燥感は憶えてるんだけど……。」



「ふむ、もうひとつ……そもそもヌシはグールと化した訳ではないのか?」



 疑問と共に、ちらりとキャサリンへ視線を送るナーサ。



 「真っ先に確認したけど転化はしてないわ、相変わらず治療を継続しなきゃならないだろうけど。……まぁ、それについては多分だけど、夜が明けるまで半グール化状態みたいなものだし他のグールから見たら眼中になかったんじゃないかしら。」



 「不幸中の幸いかね、グールの団体に混ざってここ(峡谷)まで来た『経緯』が肝心なんじゃがな。何せよ、フェデルで一悶着あったのは確実じゃて、早く帰った方がええ。」



 『フェデル』……ため息混じりにナーサが放ったたその一言に、マッコイがぴくりと顔を引き攣らせる。



 「思い出したわ……夜、あの人が私の拘束具を外しに来たのよ。」



 ◆


 ◇



 「ーーなる程の、✕✕✕がヌシの拘束を解いた……つまり混乱を呼ぼうとしたと言う訳か。確かに腑に落ちんわな。」



 「………。」



 「何を考えておる?キャサリン。」



 「今のフェデルにマコを連れ帰るのは危険だと思う。」



 淡々と、だが重みの在るキャサリンの声音に対し、相槌にも取れる呻きを洩らすナーサ。



 「どのみちダナンの死をジョー殿には告げんとな、しかしそれとは別に敵についても一度、情報を突き合せて整理する必要もある。」



 「みんな結構な重傷を負ってるし、リーダーと合流出来れば一番だけど……とりあえず?シオリさんに相談してみましょうか。」



 ……そう妥協点を提示し、見回すと皆一様に納得したのか押し黙っている。


 様々な事があり過ぎた、ふとキャサリンの脳裏にコルカド領でスキルを通じ、垣間見た化け物のビジョンが過る。



 (絶対に峡谷へ来ると思ったんだけど……?……私、何でそう思ったのかしら。)



 刹那、キャサリンの中で言い知れない違和感が蠢き涌き上がる。


 微かで直ぐに消え入りそうな手掛かり、だが無視してはならない、そんな気がした。



 「……アジトに戻りましょう、マイケルを背負ってちょうだいマコ。」



 「ああ、あの御仁の所か。」



 何処か急く様に立ち上がり、歩きだすキャサリンの背中を見やる三人……同様に疑問符を浮かべたが、彼女が親指の爪を噛む姿を目にし、直ぐにその焦りを汲み取った。


 こうして足早にアジトへと戻る事にした四人であったが終始、先頭を行くキャサリンは沈黙を守っていたという。



 やがてアジトへと続く一本道に入った瞬間、キャサリンが走り出した。



 「………。」



 「……ビッケ。」



 そこには無惨な肉塊と化したダナンの愛馬が横たわっていた……。


 何故?戦いに出る前、確かにビッケはアジト内に係留してあった。

 やりきれない思いを振り払う様にビッケであったモノから視線を外し、ぽっかりと口を開けている洞穴を見据える四人。


 マドロックは何処か……そう思いつつ、誰もその言葉を口にしない。


 上空を流れる風鳴りが遠のく、遠のいてゆく錯覚に陥る……急速に膨らむ不安感。



 「ワシが見てこよう。」



 立ち竦むキャサリンの肩を掴み、前に出るナーサ……しかし当のキャサリンは唇を噛み締めながらも静かに首を横に振っていた。



 ◇


 ◆



 ーー三時間後、ギャンビット号 艦橋




 「……今回の一件、無茶が過ぎましたね。」



 シュミレーション デスクを挟み、神妙な面持ちで対面しているシオリとナーサ。



 「申し開きはせんよ。」



 「こちらとしても責任云々の追求はしませんが……言葉が端的過ぎると思いません?」



 「………。」



 沈黙、二人の間に流れる不穏な空気……思わずシオリの背後に立つバララの右頬が僅かに引き攣る。



 「キャプテン……。」



 「分かっている。」



 バララの一言に含まれた苦言というニュアンスを解し、重苦しい空気を払う様に深く息を吐くと、シオリは改めて言葉を切り出す。



 「あなた一人を責める気はなかった……申し訳ない、気を取り直してくれないだろうか。」



 「すまん、こちらこそ責を問われるのは当然じゃよ、それにシオリ殿が来てくれなんだらワシらは途方に暮れる所じゃった。皆に代わって感謝しますぞ。」



 そう述べるとナーサは礼を尽くす様に深々と頭を下げ、その完璧な所作に寧ろシオリの方が慌てたという。



 「それで……だ、医療班からは四人とも大事ないと報告を受けている。ただ、顎部の骨折で喋れないマイケルを始め、昏睡状態に陥ったキャサリンや殆ど事情を知らないマッコイなど、現状で聴取可能なのは婆殿だけでしてね。」



 「情報の摺り合わせは必要じゃな、モンテ殿が居れば念話で事足りるが……。」



 (やはり、そこまでの繋がりを築いてたかモンテ君……少々危険が過ぎるな。)



 僅かに目を伏せ、机上で手を組む仕草を取るシオリ……その一連の動作を無表情で見やるナーサ。


 どちらからも話を切り出さず、またもや沈黙が長引きそうな雰囲気になった所でバララの咳払いが場を引き締める。



 「所で、ワシらを迎えに来たという事はフェデルに立ち寄られたのか?」



 「いや、立ち寄ってはない……君たちの状況はフェデルからの通信で知ったが。」



 「………。」



 シオリの説明によれば、もしもの場合を考えフェデルに通信装置を設置していたらしく、昨晩未明に『アルソーブ』と名乗る人物から定期連絡を装った暗号電文が送られてきたという。



 「ーーウチの通信士でも最初は気付かなかったんだが、購買のオバちゃんが解読してくれてね。」



 「購買のオバちゃん?」



 「ん?ま、まぁそこはどうでもいいが……ともかく、君たちへの救援を最優先に動くよう記されていた。」



 「そのような真偽の定まらぬ情報を鵜呑みにするかね、他にも信じるに足る要素が無ければ話にならんだろう。」



 「仰る通り、詳しくは言えないがアルソーブなる人物の『対人関係の機微』というヤツらしい……察してくれ。」



 「?……購買のオバちゃん『との』?」



 「知らんよ……こちらとしてもフェデルか救援かの順番が入れ代わっただけで然程の問題もなかったからな。」



 「了解した、本題から逸脱してしもうたが、話を戻そうかの。」



 ナーサの冷淡な返しに対し同調する様に頷いてみせた後、シオリはバララに促し、一枚の書類を受け取った。



 「まず洞窟内から回収した男女の遺体だが調査の結果、身体から体液と内蔵がほぼ抜かれていた……。」



 「そうか……女の名は知らんがコルカドの人間らしい、男はマドロック……戦闘中じゃったがワシも一度会っておる。」



 「では意識不明で見つかった子供については?」



 その瞬間、ほんの僅かにナーサの表情が歪み、目を伏せる……やがて少しの間を置いてから、戸惑いがちに口を開いた。



 「正直判らん、だが洞窟内の惨状を視て錯乱したキャサリンの言葉によれば、どうやら子供は元々三人居たようじゃ。」



 「三人……?」



 「………。」



 「なるほどな……言い辛いが保護した少年には現在冷凍処置を施し、厳重に隔離している。おそらく二度と目を覚ます事はない。」



 「なっ、冷凍!?年端も行かぬ子に何故そんな仕打ちが出来る!!!」



 「……少年の体内に未知の生物の寄生が認められたんだよ。」



 「未知の、寄生……じゃと?」



 「記録に無い、動植物や魔物、アンデットなのかも判別不能な寄生種らしい……現状で判ったのは宿主を半ば仮死状態にし、自身も生命活動を停止させている、言わば休眠しているという事だけだ。」



 「心して答えろ……二度と目覚めないと言ったのは何故じゃ。」



 淡々とした声音とは裏腹にナーサの瞳は明らかな怒気を孕み、シオリを射殺さんとばかりに睨みつけている。

 暫しの沈黙の後……ナーサの問いの意味を『この後の少年の処遇』とシオリは解釈し口を開く。



 「愚問だな、この艦艇ふねの設備では限度がある。本国(ドミニオン共和国)の研究機関に引き渡した方が理に適っているだろ?」



 シオリのその判断は未知の脅威に対する最善策であるのは事実であろう、だがナーサにとっては体の良い厄介払いにしか聞こえないのも、また事実であった。



 「道理云々を宣うは余裕の在る者の戯れ言か……正しいの、仮定とはいえマドロック達の死に消えた子らが関わっている可能性がある以上、ワシらは何も言えん。」



 言葉を呑むが納得はしない……そうナーサの言い回しを理解し、意外ではあったものの内心でシオリは胸を撫で下ろす。


 少なくとも、幼い子供を実験サンプルとして人身御供に出すという事実に、目を瞑ると言質をとれたのだ。


 そしてそれはシオリのゴブリン達への配慮ケアの裏返しであるとも言えた。



 「それで、残る懸念事項はフェデルで今何が起きているかだが……。」




 「その事じゃが、シオリ殿の耳に入れておきたい話が有る。」




 つづく


 コルカド編エピローグでした、次回からは主人公視点に戻りまする。

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