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暗黒事務所を打ち破れ!2

挿絵(By みてみん)

ルチアーノの事務所の雑多な倉庫。魔術師レインが椅子に縛り付けられていた。

「てめーコラァ! 話が違うじゃねえかよ!」

「貴様の術が失敗したせいで私は貴重な部下を失ったのだ。その報いは受けてもらう。……もっとも、保身のために情報をもらしたアーセナルも殺すがな。」


「くっ……。待てよ、私の魔術はまだ生きてるんだぞ! 奴に虫が殺されて盗聴はできないが位置は追えてるんだ! そういう術だ……。」「だから生かしている。あの襲撃者を殺すまでは術を解除するなよ。でなければ今すぐにでも殺す。最も残酷な方法でな……。」

闇社会の支配者は冷徹に言い捨て、部屋を出ていった。

「……くそっ!」


レインは悪態をついた。

「……なんてな。」

彼女は口元を歪めた。そう、演技である!

探知機虫は死んでおらず、転生キラーについて通話が可能なままであり、位置情報のみをでたらめに偽装しているのだ。

これで転生キラーの実際は読めず、逆に転生キラーは事務所にいるレインから情報を受取ることができるのだ。


『ふぅ、ヒヤヒヤした……。だがうまくいったぜ。』

虫を通じた念話だ。


「ではその建物内部の情報を送れ。」

『ワイヤレスで地図までは送れない。直接術をかけた物がないからな。私が念話でナビするよ。』

「その状態で貴様はどう内部の情報を知り得る?」

『私にはルチアーノにも教えていない術がある。それで建物すべての間取から生命反応までわかる。ま、本当はいざという時逃げる用だったんだがな……。お前ら転生者は完全に想定外の実力だったよ。やってらんねー。』


「黙って行動を行え。」

『オーケイ、オーケイ。そう怒らないで……いくぜ、屋根裏の間者(フルオートマッピング)!』

魔術師レインの瞳に格子状の像が写る……地下室、1階、2階、3階……。緑色のワイヤーフレーム立体地図が彼女の脳内で形作られていく!

『人間が10人……3階に2つのやべえ反応……これが転生者だろうな……で、そのそばの奴がルチアーノってわけか……』

レインがぶつぶつと言葉を流す。


『だいたい完全にわかった。すごい能力だろ? ……じゃ、ミーティングといこうぜ。』

魔術師は得意げに言った。




ルチアーノ金融ビル事務所。通常のオフィスに偽装された室内には3つの人影。

「ハハハ、野郎、宿屋街なんて行ってやがる。アーセナルはそれなりにダメージを与えたようだな。」

「グリーンガーデンエリアは樹海探索する冒険者が使用することでも有名な街。明らかな戦闘で傷ついた人間が利用しても、普通の治療所よりは目立たない。理にかなっているな。」

彼らはマリシャスアサシンとエターナル。傭兵転生者だ。


「どうすんで? ボス。」

気安く話しかけるのはマリシャスアサシン。

「念を入れて通常の人間を送る。奴の仲間がここに来る可能性もあるからな。……人間でも転生者を殺せるはずだな?」

「ああ。頭砕くなり首を切るなり心臓を貫くなり、死ぬ時は死ぬ。ただし身体能力は常人の倍はある。当たらなければ意味はないぜ。」

「私の選りすぐった兵は極めて優秀だ。最新式の銃や強力な毒も持たせている。脳に一撃食らわすくらいわけない。」


「そううまく行けばいいんですがね。」

マリシャスアサシンは皮肉交じりに返す。

「それでだめならば次は君たちの出番だ。」

「そうなることを願いますよ。ボーナスが欲しいんでね。」




闇の事務所から密かに人間が出て来る。ルチアーノの私兵だ。

『おい。見つからないようにしろよ。』

事務所を影から除く人影。転生キラーだ。

『本当は転生者の1人離れされるのが理想だったが……。』

「敵の能力と戦場の地図をこちらが抑えている。悪い状況ではない。」

『はっすごい自信なこと……。そんじゃまぁ、とっとと始めるか。偽装がバレない内にな。』




数分後。転生キラーはルチアーノ達がいる部屋のドアの前に到達。息を潜め奇襲の機会をうかがっていた。

『ここまで来られたのは私のおかげな。助けてよかっただろ?罠と警報機を避けてバレずにスムーズに行ったんだからさ。』

事実、私兵や毒矢トラップなどを回避できた恩恵は大きい。転生者の戦闘ではほんのすこしのアドバンテージが生死に直結するのだ。

『この部屋だけは他の通り道は一つもない。奴の隠し財産なんかも隠してある部屋だからな。セキュリティは厳重だ。正面突破しか無い。』

「……。」


戦闘を前に極限集中状態に入った転生キラーの脳裏には、過去の光景がフラッシュバックしていた。

燃える家々。

散乱する死体。

血と焼けた肉の臭い。

子供の悲鳴。


そして全ての災禍の根源。息のある者を踏み潰し、炎に焼かれることなく歩く男。

その男に随従する亡者たち。

「アアア……」

踏み潰された死体が立ち上がり、傷が癒えてゆく。亡者の行進がまた一人増えた。


ハイヤーセルフ!!

転生キラーの全身の筋肉が膨れ上がる!瞳の奥で黒い炎が揺らぐ!

悪意を糧に増強する力!


「殺す!」

ドアを破壊し転生キラーが攻め入った!

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