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暗黒事務所を打ち破れ! 1

時系列的には1話の前です。

挿絵(By みてみん)

前回までのあらすじ


異界の知識によって大規模製糸場経営を行い、衣料品の安価大量生産で暴利を得ていた転生者、ダスティシルクと戦闘した転生キラー。

ダスティシルクの「薬品の性能を自由に増減させる」チートスキルにより満身創痍にまで追い詰められるもなんとか殺害に成功する。、


「ハ……。情報? いいぜ、教えてやる……俺に資金とコネをくれたのは、ルチアーノという男だ。奴は俺なんかより強い転生者を3人も従えている。その末端の俺に楯突いたお前がどうなるか……地獄で楽しみに待ってるぜ……。」


ダスティシルクの死に際の言葉を脳に刻み、転生キラーは夜のドラコ市へと消えた。




転生キラー 「暗黒事務所を打ち破れ」


深夜。レグヌム国、ドラコ市。

眠らない街と呼ばれる世界有数のこのドラコ市に人が絶えることはない。


「ヘイヘイヘイ! そこのお前! 随分ぼろぼろ、ジャン?」

「俺たち優しいからよ、グフ、有り金だしなよな、エエ?」

スキンヘッド男と2メートルのモヒカン男が血まみれの通行人を脅していた。

「……。」

通行人は追い剥ぎを無視して歩く。

「ア? なに、行っちゃうわけ? 行けると思うワケ?」

「イテマウゾ!」


スキンヘッドが男の肩を掴んだ。


「ヒッ」

振り返った男の顔に、スキンヘッドは本能的な恐れを感じた。

「……。」

闇! 言葉を発さずとも、その瞳を見るだけで十分だった。


格が違う!

「す、スミマセンデシタ!」

「あ、おいちょっと待てョ! どうした!?」

追い剥ぎは逃げ去った。


チンピラが逃げ去るのを見て、転生キラーは自省した。

力や恐怖で人間を威圧するのならば、邪悪な転生者と同じことだ。

しかし戦闘による疲弊と負傷が、短絡的な方法を選んでしまったのだ。


まずは回復を行う必要がある。

転生者の肉体は常人より優れているが、満身創痍で食事も睡眠も取らずいれば死ぬ。


転生キラーは隠れ家へと進んでいった。

しかしその背に一匹の虫が付着していた……。



ドラコ街のとある大通り。ルチアーノの事務所は堂々と居を構えている。

「はいよ、成功した。これで位置と音は傍受できる。」

この場に似つかわしくない、少女が言った。

「ふむ。どうやらそのようだな。」


黒いスーツの男、ルチアーノはテーブルに置かれた黒い板を見て言った。

板には格子状の光が浮き出ており、そこに移動する光の点が現れている。

「これであのダスティシルクを殺した男の場所がわかる。あとは万全を期して消すまでだ。」


「お言葉ですが。」

ルチアーノの傍らに立つ男が言った。

「製糸場の状況や、先程の屑とのやり取りを聞くに、奴は十分死にかけているはずです。能力は不明ですが、むしろ今のうちに殺しておくべきでは?」

「お前が行くか?」

「もちろん。」

「ならば許可する。」


「ありがとうございます。……このアーセナルにおまかせを。」



ドラコ市中心部、出稼ぎ労働者や旅人が利用する短期契約の集合住宅。転生キラーの隠れ家。

その建物を外から見渡す男……アーセナルだ。


奴の居場所を示す点に動きは無い。相変わらず無言で盗聴の意味が無いが、おそらく睡眠しているはず……。


アーセナルは魔術師レインの黒板を確認した。


「よし……行くか。」


アーセナルは集合住宅の壁をやすやすとよじ登り、転生キラーの部屋の窓に到達した。


「武器召喚、魔砲。」

アーセナルの手に無から大砲のような武器が現れた!

武器やアイテムを亜空間にストックし自在に引き出せるチートスキル、魔法の道具箱《ディメンションストレージ》だ!


「こいつはすごいぜ……発射グワアーーーッ!?」

突如窓を破壊しから飛び込んできた転生キラーの殺人チョップ! アーセナルの腕が魔砲ごと切断された!

「馬鹿な……! 気づいていたの言うのか!」

「貴様らのくだらぬ小細工など、なんの意味もなさん!」


アーセナルは片腕を使い窓から室内に突入! 転生キラーも素早く追い再び室内に入った!

「おのれ! 武器召喚、光龍王星大剣アババーッ!!」

召喚より先にアーセナルの残っていた方の腕が切断された!


「いかな強力な武器でも使えなければただのゴミだ。」

「ぐがが……。」

両腕を失ったアーセナルは目の前の敵を睨みつけた。


視界の端に、逆さにしたコップに閉じ込められた虫が見えた。

アーセナルはあの雇われ魔術師を内心で呪った。


アーセナルはドアから脱出しようと、全力で背後に走った。

しかし一瞬で距離を詰めた転生キラーに首を捕まれ失敗した。


「逃さん。お前は殺す。」

「……お、俺はルチアーノに脅されてやったんだ!」

「知るか。情報を全て吐け。他の転生者、ルチアーノ、ハイヤーセルフ、それらに関することをすべてだ。」


「……ルチアーノはアジトはブラックワイバーン・ストリートのジーク金融会社事務所に偽装している。他の転生者は二人。膨大な魔力を持つエターナル。ナイフを刺した相手を即死させるマリシャスアサシンの二人。ルチアーノは転生者じゃないが、金で俺たちを雇っている。ハイヤーセルフとかいうのは知らん。」

「ならば用済みだ。」

転生キラーは首を折ろうとした。しかしその時。


「……!」

転生キラーはその手を止め、瞬間的にバックジャンプした!

「ヒヒヒヒ! ただじゃ死なねぇ! お前も死ね!」


虚空から大量の球体や円柱状物体が出現した!

「大爆発だ! ドッカアアアアン!」

「……ッ!」

転生キラーは窓から脱出!


しかしその刹那、転生キラーは己の判断ミスを悟った。


アーセナルの目は自暴自棄のそれではなかった。

「かかったなァ! 阿呆が! "格納"!」

アーセナルは自らの体に手を触れると、一瞬でその姿が消滅した!


自分自身を対象に魔法の道具箱《ディメンションストレージ》を発動したのだ!


転生キラーが気づかなかったのは無理もない。アーセナル自身もこの時までこの方法は想像しておらず、実際に成功する確信はなかったのだ。




数分後。転生キラーは召喚された爆弾の起爆装置は機動されていなかったことを確かめた後、部屋を出ようとした。

すでにこの隠れ家は使えまい。


しかし彼がドアを開けようとしたその時、奇妙な声が聞こえた。


『おい、アンタ! 聞こえるか!』

「……どこにいる。」

『ここだよ、ここ! コップの中!』

「なるほど。貴様が術者か。」


転生キラーは虫を殺そうとコップに近づいた。

『待て、殺さないで! 頼むから!』

「なぜだ。」

『いや、その……確かに私はあんたに発振器をつけた! でもこれが失敗したから、ルチアーノの奴に殺されそうになってんだ! そんな契約してねえ!』

「俺の知ったことではない。」


『あんた、ルチアーノの敵なんだろ! 協力するからさ、助けてくれ! 頼む!』

「協力? どのようにしてだ。」

『この声は実際には声を出してないんだ! 私は今縛り上げられてて……でも虫を通じてこうやって通信できる! ルチアーノのとこまで行くのに気づかれずにサポートできる! あの事務所、罠とかけっこうあるんだ!  それに私がこっそり術を使えば発振器の信号を実際と違う表示にできる! つまり奇襲できる! OK?』

「……。」


転生キラーはコップを開けた。なかの虫が飛び出て彼の顔の前で舞った。

『やった、恩に着るぜ!』

「俺がグリーンガーデン地区に行ったように見せかけろ。あの場所の宿屋街で傷を癒やしているように振る舞え。」

『ちょっ、待て、今か!?』

「こちらも奇襲をかける。今夜中に殺す。」

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